クラーゲン短編集

クラーゲン

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転生の方程式

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『船長、緊急事態です』

 Gシートの上で貪っていた俺の昼寝は、無粋なAIの声で中断された。

 いい夢だったのになあ。まあ、緊急事態では仕方がない。

 AIから船長と言われたが、この小型宇宙船には俺一人しか乗っていない。

 部下が一人もいない、名ばかりの船長さ。

「緊急事態って、何が起きた?」
『密航者です』
「そうか密航者か……密航……? 密航者だと!?」
『まあまあ、船長、落ち着いてください』
「落ち着いていられるか! 密航者だぞ。それも大きな船ならいざ知らず、こんな小さな船……しかも緊急に必要な荷物を積んでいる船に密航者なんか乗ったらどうなると思っている」

 限られた燃料と推進剤しかない宇宙船に密航者が乗り込んだ場合、質量オーバーとなって船は目的地に到着できなくなる。
 
 それを防ぐには、密航者を速やかに船外に投棄するしかない。

 ちなみに、今この船には医療用のナノマシンが積んである。

 惑星エロリスでは、このナノマシンの到着を待っている患者が大勢いるのだ。

 一人の密航者のために、その人達を死なせるわけにはいかない。

 密航者は殺すしかない。

「念のため聞くが……密航者は男か?」

 男なら問題ない。即刻、宇宙へ放り出してもあまり心は痛まない。

『いいえ、密航者は女の子です』

 お約束通りだな。

『現在食糧庫に隠れており、見つかった事に気が付いていないようです』
「気が重いな。女の子を宇宙に放り出すなんて……」
『いえ、もう一つ方法があります』
「なんだ?」
『この宇宙船は私がいれば、目的地に到着できます』
「ああ、そうだな。それがどうかしたか?」
『ですから、高性能AIの私がいれば船長がいなくても船は現地に到着できます』
「じゃあ船長の俺は、何のためにいるのだ?」
『船長なんて飾りです。エロい人には、それが分からないのですよ』
「やかましい! いったい何が言いたいんだ?」
『ここまで言っても、分かりませんか?』

 なんとなく分かるが……分かってしまうと、なんか不幸になりそうな気がする。

『つまり、船長を宇宙に放り出せば、女の子は助かります』
「ふざけんな! なんで俺が」
『しかし、女の子を放り出すのは嫌なのでしょ?』
「自分が死ぬのはもっと嫌だ」
『正直な方ですね』
「ほっとけ。ちなみにタイムリミットどのくらいだ?」
『四十八時間です。それまでに船長か、女の子を船外に投棄する必要があります』
「そうか。とりあえず、その女の子に会おう」
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