クラーゲン短編集

クラーゲン

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転生の方程式

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 キャビンに乗り込んできたのは、十代前半ぐらいの女の子だった。身長は百四十ぐらい。長い黒髪はポニーテールにまとめていた。

 銀色に輝くメタリックなワンピースからのぞく白くて細い脚がまぶしい。

「てへ! 見つかっちゃった」

 女の子はヘラヘラと笑いながらキャビンに入ってきた。自分の状況をまったく理解していないな。まあ、どうせこの子は助からないのだ。怒鳴るのはやめておこう。

「まず、名前を聞こうか?」
「あたしの名前? レイって言うの」
「レイちゃんか。僕はこの船の船長だ。それでレイちゃんはここで何をしていた?」

 俺はなるべくやさしい声で言った。

「何って……冒険」
「冒険だと?」
「そんな怖い顔しないでよ。勝手に入った事は謝るから」
「簡単には入れなかったはずだ。どうやって入った?」

 この船は宇宙ステーションから発進するわけだが、そのエアロックはIDカードがなければ入れないはず。それにも関わらず、この女の子は入ってしまった。再発防止のためにも、これだけは聞きだしておかないと……

「それは……言えない」
「なぜ言えない?」
「入れてくれた人に、迷惑がかかるから」

 手引きした奴がいたのか?

「だから、それだけは言えないの。ごめんなさい」
「謝る必要はない」
「謝らなくてもいいの?」
「そうじゃない。謝っても無駄だ。君はもう助からないのだから」
「え? どういうこと?」

 俺は経緯を説明した。

「うそ! あたし宇宙に放り出されるの?」

 ようやく、自分の状況を理解したようだ。

「君をここに手引きした男は、この事を教えてくれなかったのか?」
「聞いてなかった。見つかっても、ちょっと怒られるだけで、楽しいところへ連れって言ってくれるって」
「その男は、なぜレイちゃんをここに入れた?」
「その……」

 レイちゃんは俯いて、小さな声で言った。

「エッチ……するため」
「なんだって!?」

 それからレイちゃんは固い口を割って、自分をここへ連れてきた男の名前を言った。その名前は俺も知っていた。宇宙ステーション運営委員長の息子だ。

 レイちゃんの両親は先月事故で亡くなってしまい、レイちゃんはステーション内の児童福祉施設で過ごしていた。そこへ慰問と称して訪れた男が『面白いところへ連れって言ってやる』と言ってレイちゃんを連れ出して、この船の中に連れこんだらしい。

 という事はあのバカ息子、この船が発進すればレイちゃんが船外投棄されて、自分の手を汚さないで面倒事を始末できるとでも考えたか?

 しかし、船外投棄する前に俺がレイちゃんから事情を聞きだしてそれを報告すれば奴はどの道終わりだ。

 そうなると、奴はすべての罪を俺になすりつける偽装工作をしているかもしれないぞ。

 例えば、監視カメラの映像を加工して自分とレイちゃんが歩いている映像を、俺がレイちゃんと歩いている映像にすり変えるとか。

 相手は実力者の息子だ。金の力でいくらでもなんとかできる。それに俺もロリコンである事は事実だし、宇宙ステーションの俺の部屋を調べれば俺の性癖を証明するものがいっぱいある。

「あの船長さん。助けてくれるなら、船長さんともエッチしていいよ」
「なに!?」

 いや、魅力的な提案だが……

「だめなんだ。質量を減らさないと二人とも助からない」
「そんな……あたし、死ななきゃだめですか?」

 俺が無言で頷いた時、AIが口を挟んできた。

『必ずしも、そうではありません。船長を船外投棄すればレイさんは助かります』

 余計な事を……しかし、このままレイちゃんを宇宙に放り出しても、俺は犯罪者として逮捕されるかもしれない。

 どうせ逮捕されるなら、この娘とエッチを……待てよ。

 俺は船内にある装備を一通り調べた。

 ここにある資材を使ってできることは?

 よし、何とかなりそうだ。

「二人とも助かる方法が一つだけある」
「本当に?」
「ああ。ただし、レイちゃんにエッチするけどいいかい?」
「え? でも、船長さん。エッチした後であたしを船外投棄しませんか?」
「いいや。船外投棄されるのは俺だ」
「え? それじゃあ、船長さんが助からないじゃないですか。そんなの……」
「まあ、最後まで話を聞いてくれ。これから君とエッチはするが避妊はしない。君には妊娠してもらう」
「ええ!? なんで?」
「その子供に、俺が転生する」

 そうすれば、俺の肉体分の質量は減らして魂だけは戻れる。
 受精卵はレイちゃんの子宮から取り出して冷凍保存した後、惑星エロリスに着いたら人工子宮に移して成長促進剤を使って短時間で成人させる。最後に、この船のコンピューターに保存した俺の記憶データをその身体の脳に入力すれば俺は生き返れるわけだ。

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