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マロンの激白

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「マーガレット!馬鹿なことは止めるんだ!」

トーマスも叫んだ。
マーガレットの顔は青ざめていて正気ではない。
何か悪いことを考えている予感がした。

「もう私は疲れてしまったの…。大好きなロイドと別れて、もう何も考えたくないの」

マーガレットは橋の手すりにつかまり、足を下そうとした。

それを見てマロンは咄嗟に叫んだ。

「やめて!僕みたいになるぞ!」

「「え?」」

マロンが男言葉を使ったのでマーガレットもトーマスも驚いた。

「そこから飛び降りてこの世からいなくなっても、マーガレット様が望むような死後の世界には行けないかも知れないんだぞ!」

「マロン、どういうことだ?」

「マロンさん…まるで死んだことがあるような言い方ですわよ?」

マーガレットとトーマスはマロンの突拍子もない話に呆気に取られている。

「信じてもらえるか分からないけど、これから話すことを聞いて!」

マーガレットはマロンの迫力に圧倒されて、こくりと頷いた。

「ありがとうございます。僕は…」

マロンは前世のことをマーガレットに話すことにした。

ーー

「 信じてもらえないかもしれないけど、僕は前世の記憶があるんです。

1番覚えている記憶は「花」という子のことです。

花というのは幼なじみの、明るくて人懐っこい子で学校ではずっと一緒に行動していました。

ある日花から「違うクラスの男から告白された」と相談されました。

僕は本当は花のことがずっと好きで、もちろん彼と付き合ってほしくなかったのに、恥ずかしがって花にそのことを言えなかった。

そして、花は彼の告白をOKして付き合うようになりました。

僕はそんな2人を見るのが辛くて、花を避けるようになりました。

そんな、花との仲がギクシャクしているなか、僕は事故で死んだのです。

「もうこんな辛い思いを抱えなくてすむ…」と思いながら…

だけど、思い出してしまったんです。

この世界は花に貸してもらった小説の中だということを。

とはいえ登場人物が一緒なだけで、だいぶ内容は違うけど…。

僕はこの世界で恋をする人を見るたびに花を思い出して、なぜあんな態度を取ってしまったのか…と後悔の念に駆られます。

だからマーガレット様がここから飛び降りて今世を終わらせてほしくないのです。

だってこんなに頑張ってきたマーガレット様がよく分からない世界に転生してしまうかもしれないし、性別が変わってしまうかもしれない…。

何より…絶望感で満たされて錯乱している中、物語を強制終了して後悔してほしくないのです! 」

ーー

マロンがマーガレットを止めようと無我夢中で叫び終わるころマーガレットは橋から降りてマロンのもとに近づいた。

「マロンさん、ありがとう…」

マーガレットはマロンを抱きしめた。

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