19 / 20
19、再びの教会
しおりを挟む
「姉さん、こっち」
以前も訪れた教会の裏口には一台の馬車が止まっていて、学園帰りの碧くんがベティを連れて待っていた。絶対に自分も付き添うと言って譲らなかったのだ。
「碧くん本当に来たの、ベティまで巻き込んで……弟がごめんね」
「構いませんわ。私もシズクのスキルが気になりますから」
にっこり笑顔で出迎えてくれる義妹が今日も可愛い。
「神父にはもう声をかけてるから」
早く早くと先導する弟に肩をすくめる。碧くんたちについていた護衛はそのまま馬車に残るようだ。
「……妹のことは愛称で呼んでいるのか」
「えっ」
弟たちの後に続いて入り口へ向かう途中、眉間に皺を寄せた殿下からぽつりと不服そうな声が落ちた。お互いにしか聞こえないほどのもの。気のせいでなければ、なぜだと視線で問われている。
「いや、だってさすがに殿下を愛称では呼べませんよ。弟はともかく異性の私ではいらぬ誤解を生みます」
小声で返すには高い位置にある青年の顔に合わせて若干背伸びをしなければならなかった。
身長いくつあるんだろう。弟よりも頭一つ分高いなら百八十くらいかな。この世界の人は性別問わず全体的に大柄だ。おかげで、間に挟まれると囚われた宇宙人になってしまう。ちなみに私は元の世界では平均ど真ん中だった。
私の返事に考えるように視線を動かしたあと、殿下の体がこちらへ傾いた。低い音が耳のごく近くで響く。
「では身内のみでいる時は構わないな」
みっ耳元で喋るんじゃない!
あまりの暴挙に気が動転して、構いますと言いそびれた。
◇
「こちらに手を翳してください」
簡素な薄暗い小部屋で、司祭という立場のおじいさんから指示された通り石板に手を翳すが、うんともスンとも言わない。
最初に司祭様の持つ判定のスキルで見てもらったが、分からないと言われてこの方法になった。だというのにこの結果。
勇者の姉はまじもんの凡人だった。想像通りとはいえ、物悲しいものがある。
ほらねと弟に言おうとして気付く。判定が無反応って、スキルがないということ? それって就職できる?
途端に違う種類の情けなさが襲う。弟の脛かじりが現実になってしまうのか。
「これは……」
見守っていた司祭様が難しい顔で呟いた。碧くんなんて今にも石板を壊しそうな形相で睨みつけている。
ええ、そこまでやばい結果……?
「お待たせしました」
重たい空気の中入ってきたのは、さっきこの部屋まで案内してくれた、眼鏡姿の神父様だった。手には見知った魔道具を携えている。
「シズク様はこのランプの魔道具を使用されたことは?」
「あります」
そう尋ねた神父様が煌々と光る魔道具から石を取り外すと、部屋が元の薄暗さに戻った。動力を失ったランプが消えるのは当然だ。
掌にすっぽり収まる水晶のような形をした石は、火を使わずに安全に使用できるランプ型魔道具の原動力であり、安価で長持ちだと庶民にも人気のアイテムだ。
大抵の魔道具は専用の器具と原動力の魔石で動いている。乾電池のようなものだ。
「こちらの魔石をお持ちください」
差し出された石を言われるがまま掌に乗せること十数秒。返すよう手振りで促されて返却する。自らの手に戻ったそれを神父様が慎重に観察している。
「減っていますね……」
もう一度、今度は握らされる。なかなかOKが出ない。たっぷり数分経った頃にやっとお許しが出た。
「貸してください」
体温が移り温まった魔石を手渡す。神父様はまた一通り確認した後、さっきの魔道具にそれを戻した。ランプはつかなかった。
「その魔石は確かか?」
「先日発注しておろしたばかりのものです。私がスキルで確認もしました。不良の可能性は限りなく低いでしょう」
これまでずっと黙っていた殿下が確認した内容に、弟が深いため息をついた。
「アレッサーノ司祭は先程、姉さんのスキル判定が行えないと言ってましたね」
「ええ。このようなことは例になく、力及ばず申し訳ない」
聞いている私の方が申し訳なくなっている。「当たってほしくなかったけど」と、弟の意識がこちらへ向いてビクリとしてしまった。
「姉さんのスキルは魔法の無力化、無効化に関する可能性が高い」
無力化?
「このランプの魔石は私が消費したの?」
「消費というか、消去かな」
「触っただけで?」
「触っただけで」
つまりそれは。
「今まで魔石を無駄遣いしちゃってた……?」
恐ろしい事実が発覚した。普段はメイドさんをつけてもらってるけど、基本的に自分のことは自分でしていた。お風呂だって魔道具を使用して準備したことは何度もある。そして水を温める魔石のお値段が優しくないことを知っている。
「心配するのそこ?」
「だって無駄な出費じゃん、お高い魔石もあるのに! 今後はもう自分で魔道具使えないの?」
弟は呆れた様子だが私は心底困ってる。貧乏性なんだから仕方ない。
「今の姉さんは無意識にスキルを使ってる状態だから、ちゃんと魔法操作を学べば魔道具も問題なく使えるよ」
「魔法の操作? 私は魔法を消すのに、無効化っていう魔法を使ってるってこと?」
「そう。司祭のスキルである判定が使えなかったのも、姉さんが無意識に魔法で打ち消したんだろうね」
無意識に迷惑をかけてたと言われ頭を抱えたい。
「ルキの枷は姉さんがしつこく触ってたから契約魔法が消えて破壊できたのか」
「確かに、わたくしもシズクに力を使った時は普段と違う抵抗を感じましたわ」
「転移で気を失ったのはスキルの影響もあるのではないか?」
「一刻も早く制御してもらいたいけど、大っぴらにできないし困りましたね……」
「ラーナに任せるのはどうだ? あいつなら簡単に倒れることはない」
「わたくしは回復のお役に立てます!」
「その際の問題は説得方法ですね」
弟と殿下に加え、これまで静観していた義妹が真剣に話し合うのは自分に関することなのに、簡単に口を挟めない空気だ。教会関係者の二人も神妙にその様子を伺っている。
ただどうしても、一つだけ確認したいことがある。最重要事項だ。
「碧くん、ちょっと聞きたいんだけど」
「何?」
「このスキルだとどんな仕事に就ける?」
一斉に驚きの視線が寄越されて慄く。唯一、落ち着いている弟から恐ろしい選択肢が挙げられた。
「スキルを使わない肉体労働から機密情報満載の軍事系までお仕事選び放題だよ姉さん」
振り幅やばすぎだし全然選び放題じゃない。中でもとびきりやばい選択肢があるという。
「たとえば、姉さんが訓練したらオレには勝てないけど負けもしない」
「勝てないけど負けない……」
浮かんだ恐ろしい可能性は殿下が言葉にしてくれた。
「方法によっては勇者を無力化できるということだ」
その日、勇者の姉のスキルは秘匿とされた。
私は凡人だが、凡庸じゃなかった。
以前も訪れた教会の裏口には一台の馬車が止まっていて、学園帰りの碧くんがベティを連れて待っていた。絶対に自分も付き添うと言って譲らなかったのだ。
「碧くん本当に来たの、ベティまで巻き込んで……弟がごめんね」
「構いませんわ。私もシズクのスキルが気になりますから」
にっこり笑顔で出迎えてくれる義妹が今日も可愛い。
「神父にはもう声をかけてるから」
早く早くと先導する弟に肩をすくめる。碧くんたちについていた護衛はそのまま馬車に残るようだ。
「……妹のことは愛称で呼んでいるのか」
「えっ」
弟たちの後に続いて入り口へ向かう途中、眉間に皺を寄せた殿下からぽつりと不服そうな声が落ちた。お互いにしか聞こえないほどのもの。気のせいでなければ、なぜだと視線で問われている。
「いや、だってさすがに殿下を愛称では呼べませんよ。弟はともかく異性の私ではいらぬ誤解を生みます」
小声で返すには高い位置にある青年の顔に合わせて若干背伸びをしなければならなかった。
身長いくつあるんだろう。弟よりも頭一つ分高いなら百八十くらいかな。この世界の人は性別問わず全体的に大柄だ。おかげで、間に挟まれると囚われた宇宙人になってしまう。ちなみに私は元の世界では平均ど真ん中だった。
私の返事に考えるように視線を動かしたあと、殿下の体がこちらへ傾いた。低い音が耳のごく近くで響く。
「では身内のみでいる時は構わないな」
みっ耳元で喋るんじゃない!
あまりの暴挙に気が動転して、構いますと言いそびれた。
◇
「こちらに手を翳してください」
簡素な薄暗い小部屋で、司祭という立場のおじいさんから指示された通り石板に手を翳すが、うんともスンとも言わない。
最初に司祭様の持つ判定のスキルで見てもらったが、分からないと言われてこの方法になった。だというのにこの結果。
勇者の姉はまじもんの凡人だった。想像通りとはいえ、物悲しいものがある。
ほらねと弟に言おうとして気付く。判定が無反応って、スキルがないということ? それって就職できる?
途端に違う種類の情けなさが襲う。弟の脛かじりが現実になってしまうのか。
「これは……」
見守っていた司祭様が難しい顔で呟いた。碧くんなんて今にも石板を壊しそうな形相で睨みつけている。
ええ、そこまでやばい結果……?
「お待たせしました」
重たい空気の中入ってきたのは、さっきこの部屋まで案内してくれた、眼鏡姿の神父様だった。手には見知った魔道具を携えている。
「シズク様はこのランプの魔道具を使用されたことは?」
「あります」
そう尋ねた神父様が煌々と光る魔道具から石を取り外すと、部屋が元の薄暗さに戻った。動力を失ったランプが消えるのは当然だ。
掌にすっぽり収まる水晶のような形をした石は、火を使わずに安全に使用できるランプ型魔道具の原動力であり、安価で長持ちだと庶民にも人気のアイテムだ。
大抵の魔道具は専用の器具と原動力の魔石で動いている。乾電池のようなものだ。
「こちらの魔石をお持ちください」
差し出された石を言われるがまま掌に乗せること十数秒。返すよう手振りで促されて返却する。自らの手に戻ったそれを神父様が慎重に観察している。
「減っていますね……」
もう一度、今度は握らされる。なかなかOKが出ない。たっぷり数分経った頃にやっとお許しが出た。
「貸してください」
体温が移り温まった魔石を手渡す。神父様はまた一通り確認した後、さっきの魔道具にそれを戻した。ランプはつかなかった。
「その魔石は確かか?」
「先日発注しておろしたばかりのものです。私がスキルで確認もしました。不良の可能性は限りなく低いでしょう」
これまでずっと黙っていた殿下が確認した内容に、弟が深いため息をついた。
「アレッサーノ司祭は先程、姉さんのスキル判定が行えないと言ってましたね」
「ええ。このようなことは例になく、力及ばず申し訳ない」
聞いている私の方が申し訳なくなっている。「当たってほしくなかったけど」と、弟の意識がこちらへ向いてビクリとしてしまった。
「姉さんのスキルは魔法の無力化、無効化に関する可能性が高い」
無力化?
「このランプの魔石は私が消費したの?」
「消費というか、消去かな」
「触っただけで?」
「触っただけで」
つまりそれは。
「今まで魔石を無駄遣いしちゃってた……?」
恐ろしい事実が発覚した。普段はメイドさんをつけてもらってるけど、基本的に自分のことは自分でしていた。お風呂だって魔道具を使用して準備したことは何度もある。そして水を温める魔石のお値段が優しくないことを知っている。
「心配するのそこ?」
「だって無駄な出費じゃん、お高い魔石もあるのに! 今後はもう自分で魔道具使えないの?」
弟は呆れた様子だが私は心底困ってる。貧乏性なんだから仕方ない。
「今の姉さんは無意識にスキルを使ってる状態だから、ちゃんと魔法操作を学べば魔道具も問題なく使えるよ」
「魔法の操作? 私は魔法を消すのに、無効化っていう魔法を使ってるってこと?」
「そう。司祭のスキルである判定が使えなかったのも、姉さんが無意識に魔法で打ち消したんだろうね」
無意識に迷惑をかけてたと言われ頭を抱えたい。
「ルキの枷は姉さんがしつこく触ってたから契約魔法が消えて破壊できたのか」
「確かに、わたくしもシズクに力を使った時は普段と違う抵抗を感じましたわ」
「転移で気を失ったのはスキルの影響もあるのではないか?」
「一刻も早く制御してもらいたいけど、大っぴらにできないし困りましたね……」
「ラーナに任せるのはどうだ? あいつなら簡単に倒れることはない」
「わたくしは回復のお役に立てます!」
「その際の問題は説得方法ですね」
弟と殿下に加え、これまで静観していた義妹が真剣に話し合うのは自分に関することなのに、簡単に口を挟めない空気だ。教会関係者の二人も神妙にその様子を伺っている。
ただどうしても、一つだけ確認したいことがある。最重要事項だ。
「碧くん、ちょっと聞きたいんだけど」
「何?」
「このスキルだとどんな仕事に就ける?」
一斉に驚きの視線が寄越されて慄く。唯一、落ち着いている弟から恐ろしい選択肢が挙げられた。
「スキルを使わない肉体労働から機密情報満載の軍事系までお仕事選び放題だよ姉さん」
振り幅やばすぎだし全然選び放題じゃない。中でもとびきりやばい選択肢があるという。
「たとえば、姉さんが訓練したらオレには勝てないけど負けもしない」
「勝てないけど負けない……」
浮かんだ恐ろしい可能性は殿下が言葉にしてくれた。
「方法によっては勇者を無力化できるということだ」
その日、勇者の姉のスキルは秘匿とされた。
私は凡人だが、凡庸じゃなかった。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる