剣の世界のβテスター~異世界に転生し、力をつけて気ままに生きる~

島津穂高

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第10話 氾濫

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「では父上、母上、アル、行ってきます。」



「行ってきますね。」



「ああ。行ってらっしゃい。」



「気をつけるのよ~」



「頑張ってきてください!」



夏休みが終わり、兄様達が騎士学校の寮に帰った。



その日の深夜



「ん…?何かあったのか…?」



自室で眠っていたが、周囲が騒がしくなったので目を覚ました。

リビングへ降りる途中、完全武装した父上と会った。



「父上、何かあったんですか?」



「魔の森で魔物が氾濫した。アルフレッドは眠っていなさい。」



「…はい。お気をつけて。」



氾濫とは、魔物の大量発生のことをいう。

時には大量発生した魔物の中に王が生まれ、その王が統率を取って侵略してくることがある。



魔物の王はステータスが高く、過去最高のLvは102である。

父上ほどの強者でも、討伐で命を落とした前例がいくつもある。



「どうか王は生まれないでくれ…!!」



その後眠気が来るまで窓からこっそり様子を見ていると、庭に松明を持った騎士団が集合した。



「…結構大規模だな。61人か…」



一人一人に“鑑定“を行使してみた。

騎士団の平均Lvは70くらいで、世間的に見てもかなりの精鋭部隊だ。



以前読んだ本によると、魔の森は推奨Lv.60の高レベル地帯に分類される場所である。

氾濫しているときは安く見積もって推奨Lv+10なので、Lv.70で対処できるかどうか…



数十分後



騎士団が屋敷を出て、魔の森の中へ入っていった。

そして、それと同時に獣の咆哮があちこちから響いてきた。



「…っ!?!?魔の森ってここまでやばいところなのか…?」



魔の森から屋敷までは約2kmほど離れている。

それにも関わらず咆哮が聞こえるということは、巨大な魔物がいるということだろうか…



「父上達は大丈夫なのか…?」



心配で気持ちが落ち着かない。

これは母上も同じだろう。



「…母上と合流するか。」



母上はメイド達と共に、帰ってきた時の準備をしていた。

怪我人用の回復薬や身体を拭く用の布、第2波が来た時に備える装備など様々である。



「母上…!!手伝わせてください!!」



「アルは寝ていなさい。」



普段は優しくておっとりしているが、今は厳しい目つきで叱られた。



「俺にも出来ることがあります!!何もせずには居られません…!!」



「…分かったわ。アルは倉庫から装備を取ってきてちょうだい。」



「はい…!!」



作業中、魔物の断末魔のような声が次々響いてきた。

その度に父上が心配になり、気が気ではなかった。



1時間後



時間の流れが遅く感じた。

体感では6時間くらい経った気がする。



その1時間後



作業が終わり、母上と俺はリビングで父上の帰りを待った。

今では魔物の断末魔が聞こえなくなっていた。



魔物を殲滅したのか…それとも父上達が全滅したのか…

前者であって欲しい…



それから待つこと数十分



屋敷の門の外から甲冑が擦れることが聞こえてきた。



「っ…!!帰ってきた…!!」



門まで迎えに行こうとした俺を母上は止めた。



「待ちなさい!」



「どうして…?」



「門の近くに魔物が隠れていたらどうするの?アルを庇って犠牲になるかもしれないのよ…」



「そう…ですね。」



「アルは自室に戻っていなさい。あとは私とメイド達でやるわ。」



「はい…」



屋敷から出ないので、どこか危機感が欠落していた。

心は大人だというのに、情けない限りだ。



それから徐々に甲冑が擦れる音と話し声が近づいてきて、庭で収まった。

俺は自室の窓から様子を窺った。



「…っ!!」



甲冑は血だらけで真っ赤になっており、中には鉄製にも関わらず魔物の爪痕と思しき傷が残っているものもあった。



それだけではない。

出発時には61人いた騎士団が、47人に減っていた。

父上や師匠は軽症で済んでいるが、中には手や足がなくなっている者もいた。



母上達が重傷者から順番に回復薬をかけて回っている。

国から供給された高ランク回復薬によって、欠損した四肢も生えてきた。



「よかった…」



全員の回復が終わるとすぐに、魔の森へ戻っていった。

おそらく戦闘中にはぐれた仲間の探索だろう。



数時間後



再び騎士団が庭に戻ってきた。

9人と合流できたようで、56人になっていた。



…そして、探索が打ち切りとなった。

残りの5人は死んだものとして扱うそうだ。



皆が暗い表情を浮かべているなか、朝日が登ってきた。

騎士団は朝日を浴びながら魔の森に使って追悼した。



「この世界では…命の価値が低いんだな…」



俺が異世界にいるということを、改めて認識した。

家を出た後冒険者として生き抜くためにも、もっと力をつけなければ…
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