53 / 484
第一部
パーフェクト・ワールド・ハルⅨ ⑤
しおりを挟む
「そうだな。たぶん、そうなんだと思う。だから、もし皓太のそれが俺と同じ方向性のものなら、何も心配しなくていいんだ、本当に」
「祥くんが、なんとでもしてみせるって?」
口を突いて出たのは、どこか刺々しいものだった。けれど、成瀬は変わらなかった。
「俺がいる間くらいは、そう出来ればいいとは思ってるよ」
あいつは、なんだかんだと言って理想論者だから。そう言った茅野の声が不意に脳裏に過った。そして、そのとき、知っていると思った自分の声も。
うん、と頷くこと以外、出来なかった。
祈りに似ている、と思った。篠原や茅野が言うそれが、現状を打破して見せろという発破だとすれば、成瀬のそれはどこか宙に浮いている。叶うわけがないじゃないかと切り捨ててしまえば簡単なのに、彼がそれを腕のなかで叶えてしまう。
あぁ、だから、ここは、この人の国で、この人が王なのか。
大丈夫だよ、と続いた声が無性に優しく響いて、今ここで、今日が終われば良いのにと詮無いことを思った。
そうすれば、何も変わらない「ここ」が残る。これからも続いていく。けれど、結果が出れば、現状が続くであれ、きっと何かは変わってしまう。
いつまでも王は絶対無敵ではない。それは歴史が証明していて、その予兆は、今、この国に満ちている。
そこまで考えて、ひとつ腑に落ちた。
俺が一番怖かったのは、もしかしたら、これだったのかもしれない。学園が変わろうとしていることも、異分子の出現も、そのどれもが、嫌な感じを増幅させるものではあったけれど、けれど、それだけなら良いとさえ思っていた。
自分が変わらないなら。榛名が変わらないなら。茅野が、荻原が、向原が、成瀬が変わらないなら。今まで通りで在れるなら。
けれど、そうでなくなってしまう。その未来と予兆が直結しているから、たまらなかったのだと思い知った。こんな、際になって、やっと。
なぜか不意に、まっすぐに自分を見つめていた榛名の瞳を思い出した。
――言葉にするのなら、簡単だ。ただ、したくないだけで。
あのとき、確かに胸に過ったのは執着心のような独占欲だった。
同室者だから? 自分が今まで庇ってきてやったつもりでいるから? そのお株を取られたようで寂しい? 悔しい?
理路整然と説明しようと思えば出来るかもしれないけれど、認めたくはなかった。
――あぁ、でも、そうだな。
ふ、と思った。それとは少しまた話が違うけれど、でも。
あいつは、泣くだろうなと思った。もし、この学園が変わったら。この人が絶対の王でなくなったら。
「祥くんが、なんとでもしてみせるって?」
口を突いて出たのは、どこか刺々しいものだった。けれど、成瀬は変わらなかった。
「俺がいる間くらいは、そう出来ればいいとは思ってるよ」
あいつは、なんだかんだと言って理想論者だから。そう言った茅野の声が不意に脳裏に過った。そして、そのとき、知っていると思った自分の声も。
うん、と頷くこと以外、出来なかった。
祈りに似ている、と思った。篠原や茅野が言うそれが、現状を打破して見せろという発破だとすれば、成瀬のそれはどこか宙に浮いている。叶うわけがないじゃないかと切り捨ててしまえば簡単なのに、彼がそれを腕のなかで叶えてしまう。
あぁ、だから、ここは、この人の国で、この人が王なのか。
大丈夫だよ、と続いた声が無性に優しく響いて、今ここで、今日が終われば良いのにと詮無いことを思った。
そうすれば、何も変わらない「ここ」が残る。これからも続いていく。けれど、結果が出れば、現状が続くであれ、きっと何かは変わってしまう。
いつまでも王は絶対無敵ではない。それは歴史が証明していて、その予兆は、今、この国に満ちている。
そこまで考えて、ひとつ腑に落ちた。
俺が一番怖かったのは、もしかしたら、これだったのかもしれない。学園が変わろうとしていることも、異分子の出現も、そのどれもが、嫌な感じを増幅させるものではあったけれど、けれど、それだけなら良いとさえ思っていた。
自分が変わらないなら。榛名が変わらないなら。茅野が、荻原が、向原が、成瀬が変わらないなら。今まで通りで在れるなら。
けれど、そうでなくなってしまう。その未来と予兆が直結しているから、たまらなかったのだと思い知った。こんな、際になって、やっと。
なぜか不意に、まっすぐに自分を見つめていた榛名の瞳を思い出した。
――言葉にするのなら、簡単だ。ただ、したくないだけで。
あのとき、確かに胸に過ったのは執着心のような独占欲だった。
同室者だから? 自分が今まで庇ってきてやったつもりでいるから? そのお株を取られたようで寂しい? 悔しい?
理路整然と説明しようと思えば出来るかもしれないけれど、認めたくはなかった。
――あぁ、でも、そうだな。
ふ、と思った。それとは少しまた話が違うけれど、でも。
あいつは、泣くだろうなと思った。もし、この学園が変わったら。この人が絶対の王でなくなったら。
12
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
【完結】初恋のアルファには番がいた—番までの距離—
水樹りと
BL
蛍は三度、運命を感じたことがある。
幼い日、高校、そして大学。
高校で再会した初恋の人は匂いのないアルファ――そのとき彼に番がいると知る。
運命に選ばれなかったオメガの俺は、それでも“自分で選ぶ恋”を始める。
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~
なりた
BL
悪女リリア・エルレルトには秘密がある。
一つは男であること。
そして、ある一定の未来を知っていること。
エルレルト家の人形として生きてきたアルバートは義妹リリアの策略によって火炙りの刑に処された。
意識を失い目を開けると自称魔女(男)に膝枕されていて…?
魔女はアルバートに『時間を戻す』提案をし、彼はそれを受け入れるが…。
なんと目覚めたのは断罪される2か月前!?
引くに引けない時期に戻されたことを嘆くも、あの忌まわしきイベントを回避するために奔走する。
でも回避した先は変態おじ伯爵と婚姻⁉
まぁどうせ出ていくからいっか!
北方の堅物伯爵×行動力の塊系主人公(途中まで女性)
【短編】初対面の推しになぜか好意を向けられています
大河
BL
夜間学校に通いながらコンビニバイトをしている黒澤悠人には、楽しみにしていることがある。それは、たまにバイト先のコンビニに買い物に来る人気アイドル俳優・天野玲央を密かに眺めることだった。
冴えない夜間学生と人気アイドル俳優。住む世界の違う二人の恋愛模様を描いた全8話の短編小説です。箸休めにどうぞ。
※「BLove」さんの第1回BLove小説・漫画コンテストに応募中の作品です
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる