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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅡ ⑤
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「いちいち比べるようなもんじゃねぇだろ、小学生でもあるまいし。そっちはそっちで勝手に仲良くやってればいいだろうが」
そりゃ榛名にはないだろうよ、と思いながら、そう吐き捨てる。あいつには第二の性を武器にしようなんて考えは、微塵もなかったはずだ。
「ちょ、ちょっと、高藤?」
水を打ったようになった教室に緊張が走る。自分がこんな態度に出るとは思ってもいなかったのだろう。
自分の役割を終わったと傍観を決め込んでいた荻原に慌てて袖を引かれたが、態度を変える気はなかった。
つがいになったことが伝わればいいだけで、なにも喧嘩をする必要はないと、そう言われているのはわかっていたけれど。
「黙るくらいなら最初から言わなきゃいいのに。まぁ、でも、一線を越えない限りは、俺もなにかする気はないよ」
だから安心したらいいというふうに、もう一度ほほえむ。
目立つアルファのくせに、平和主義で学内の派閥や噂に無関心。なにを言われても、感情的になることはめったにない。だから少しくらい口が過ぎても、問題はない。
自分が同級生たちにそう評されていることを、皓太は知っている。べつにそれで構わないと思っていた。
――本当に、あの人と同じ道を行くつもりなんて、なかったのにな。
そのはずだったのに、なんだかまるで、篠原や茅野が思い描いたとおりに動いてしまっているみたいだ。
「俺がなにを一番大事に考えてるのか、わかっただろ? そこに手を出さないなら、なにもしない。今までどおり」
自分に集まる視線を十分に理解したまま、「面倒だろ」と軽く肩をすくめる。そんな面倒なことは、本当にしたくはなかったのだけれど。
「でも、なにかあったら、今までのスタンスを、俺も変えないといけないかもしれない」
「おまえが?」
「そう、俺が」
窺うような問いかけに、皓太はゆっくりと頷いてみせた。成瀬会長と同じ平和主義者、という仮面を取り払って。
榛名は、成瀬のことを「いい人」だと盲目的に信じ続けているが、そんなことはない。成瀬が、この学園で平和主義者という顔を大々的にしていたのは、あの人が望む状態が維持されていたからだ。
その証拠に、篠原はよく成瀬のことを冗談半分で「暴君」だと称していた。それが事実なのだと皓太は思う。
自分の気に入っている人間を守るためだけにつくられた楽園。かくいう自分も、その恩恵の中で安穏とさせてもらっていた。利己主義者だとは言ったけれど、非難するつもりはひとつもない。榛名も、同じだったからだ。
榛名が今までどうにか無事に過ごせてこれたのは、楽園の檻の内側にいたからなのだ。
だから、皓太はやはり成瀬に感謝しているのだ。
「しかたないよ」
言葉に詰まったアルファに代わって、水城が口を開いた。柔らかな声が、しんと静まった教室に響く。
「大事なものは、人それぞれだもの」
それを守るためならば、なにをしてもしかたがないとでもいうように。まっすぐに皓太を見つめたまま、水城はにこりとほほえんだ。
そりゃ榛名にはないだろうよ、と思いながら、そう吐き捨てる。あいつには第二の性を武器にしようなんて考えは、微塵もなかったはずだ。
「ちょ、ちょっと、高藤?」
水を打ったようになった教室に緊張が走る。自分がこんな態度に出るとは思ってもいなかったのだろう。
自分の役割を終わったと傍観を決め込んでいた荻原に慌てて袖を引かれたが、態度を変える気はなかった。
つがいになったことが伝わればいいだけで、なにも喧嘩をする必要はないと、そう言われているのはわかっていたけれど。
「黙るくらいなら最初から言わなきゃいいのに。まぁ、でも、一線を越えない限りは、俺もなにかする気はないよ」
だから安心したらいいというふうに、もう一度ほほえむ。
目立つアルファのくせに、平和主義で学内の派閥や噂に無関心。なにを言われても、感情的になることはめったにない。だから少しくらい口が過ぎても、問題はない。
自分が同級生たちにそう評されていることを、皓太は知っている。べつにそれで構わないと思っていた。
――本当に、あの人と同じ道を行くつもりなんて、なかったのにな。
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「俺がなにを一番大事に考えてるのか、わかっただろ? そこに手を出さないなら、なにもしない。今までどおり」
自分に集まる視線を十分に理解したまま、「面倒だろ」と軽く肩をすくめる。そんな面倒なことは、本当にしたくはなかったのだけれど。
「でも、なにかあったら、今までのスタンスを、俺も変えないといけないかもしれない」
「おまえが?」
「そう、俺が」
窺うような問いかけに、皓太はゆっくりと頷いてみせた。成瀬会長と同じ平和主義者、という仮面を取り払って。
榛名は、成瀬のことを「いい人」だと盲目的に信じ続けているが、そんなことはない。成瀬が、この学園で平和主義者という顔を大々的にしていたのは、あの人が望む状態が維持されていたからだ。
その証拠に、篠原はよく成瀬のことを冗談半分で「暴君」だと称していた。それが事実なのだと皓太は思う。
自分の気に入っている人間を守るためだけにつくられた楽園。かくいう自分も、その恩恵の中で安穏とさせてもらっていた。利己主義者だとは言ったけれど、非難するつもりはひとつもない。榛名も、同じだったからだ。
榛名が今までどうにか無事に過ごせてこれたのは、楽園の檻の内側にいたからなのだ。
だから、皓太はやはり成瀬に感謝しているのだ。
「しかたないよ」
言葉に詰まったアルファに代わって、水城が口を開いた。柔らかな声が、しんと静まった教室に響く。
「大事なものは、人それぞれだもの」
それを守るためならば、なにをしてもしかたがないとでもいうように。まっすぐに皓太を見つめたまま、水城はにこりとほほえんだ。
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