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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 4 ④
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「簡単な話だろ。それができないなら、今すぐ手ぇ引け。俺がぜんぶ潰してやる」
妙に気にしたふうに篠原が、「あいつは、なにをいまさら焦っているのか」と口にしていたが、理由なんてひとつに決まっていた。
再び流れた沈黙に、向原は奥の生徒会室に視線を向ける。これ以上ここでやり合って、無用な世話を焼かれるのは避けたかった。
成瀬もそう思っているのだろうが、こちらも目立つところで揉めるつもりはないのだ。
「どうなんだよ」
「手は引かない。このあいだ言ったとおりで、もう決めてる」
――あの、折れるわけにはいかないってやつか。
それは、いかにも「らしい」理由だった。くだらないとも思ったけれど。言わなかったのは、くだらないと感じる部分も含めて認めたからではない。なにを言っても聞かないとわかっていたからだ。それに――。
「おまえが気にしてた本尾な。俺がこういう性格でよかったな、って言ってたけど?」
あのあとの、夜の話だ。成瀬がどう思っているのかは知らないが、覚えた苛立ちも腹立ちも、なにも消化できてはいない。
協力してやるとは言ったが、それだけだ。それだけで、なにも変わっていない。
「どういう意味かも、そうでなかったらどうなってたのかも、おまえならわかるよな」
簡単な話だろ、と向原は繰り返した。簡単な話のはずで、何度も思い知っているはずのことだった。
もし思い知ることもできていないというのなら、本当にどうかしているし、思い上がっているにもほどがある。
「安心しろよ。俺はおまえと違って、約束は守る。それも、知ってるだろ?」
だから、こうなっている。そのことも、よくわかっているはずだ。
「そうだよな」
ふっと苦笑まじりの顔で成瀬が頷いた。
「うん、おまえはそうだ」
「……」
「なに?」
なにもねぇよ、と言い捨てて、そのまま背を向ける。さすがにもう話はないだろうと思ったし、なにより見ていたくなかったのだ。
引き留める声は、もうかからなかった。
本当に、なんでこういうときにばかり、傷ついたような、諦めたような表情を見せるのか。演技だというのなら、それはそれでいいのに、そうではないとわかってしまう。
昔から、そうだった。ふとしたときに、本人も自覚していない甘えを、こうしてのぞかせることがある。望んでいたことも、たしかにあった。けれど、今となっては億劫だった。
そうでなければ、成瀬の言うとおり、もっと早くに見限ることもできたかもしれないのに。
そういうところが、本当に嫌だ。
おまえが見てないところで手ぇ出しても、おもしろくもなんともねぇだろ。
そう笑った、あの男の声が耳に残っていた。
妙に気にしたふうに篠原が、「あいつは、なにをいまさら焦っているのか」と口にしていたが、理由なんてひとつに決まっていた。
再び流れた沈黙に、向原は奥の生徒会室に視線を向ける。これ以上ここでやり合って、無用な世話を焼かれるのは避けたかった。
成瀬もそう思っているのだろうが、こちらも目立つところで揉めるつもりはないのだ。
「どうなんだよ」
「手は引かない。このあいだ言ったとおりで、もう決めてる」
――あの、折れるわけにはいかないってやつか。
それは、いかにも「らしい」理由だった。くだらないとも思ったけれど。言わなかったのは、くだらないと感じる部分も含めて認めたからではない。なにを言っても聞かないとわかっていたからだ。それに――。
「おまえが気にしてた本尾な。俺がこういう性格でよかったな、って言ってたけど?」
あのあとの、夜の話だ。成瀬がどう思っているのかは知らないが、覚えた苛立ちも腹立ちも、なにも消化できてはいない。
協力してやるとは言ったが、それだけだ。それだけで、なにも変わっていない。
「どういう意味かも、そうでなかったらどうなってたのかも、おまえならわかるよな」
簡単な話だろ、と向原は繰り返した。簡単な話のはずで、何度も思い知っているはずのことだった。
もし思い知ることもできていないというのなら、本当にどうかしているし、思い上がっているにもほどがある。
「安心しろよ。俺はおまえと違って、約束は守る。それも、知ってるだろ?」
だから、こうなっている。そのことも、よくわかっているはずだ。
「そうだよな」
ふっと苦笑まじりの顔で成瀬が頷いた。
「うん、おまえはそうだ」
「……」
「なに?」
なにもねぇよ、と言い捨てて、そのまま背を向ける。さすがにもう話はないだろうと思ったし、なにより見ていたくなかったのだ。
引き留める声は、もうかからなかった。
本当に、なんでこういうときにばかり、傷ついたような、諦めたような表情を見せるのか。演技だというのなら、それはそれでいいのに、そうではないとわかってしまう。
昔から、そうだった。ふとしたときに、本人も自覚していない甘えを、こうしてのぞかせることがある。望んでいたことも、たしかにあった。けれど、今となっては億劫だった。
そうでなければ、成瀬の言うとおり、もっと早くに見限ることもできたかもしれないのに。
そういうところが、本当に嫌だ。
おまえが見てないところで手ぇ出しても、おもしろくもなんともねぇだろ。
そう笑った、あの男の声が耳に残っていた。
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