パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 6 ①

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[6]


 春に、ひさしぶりに、行人と顔を合わせたとき、見た目は大人っぽくなったと感じたけれど、良くも悪くも中身はあまり変わっていないという印象を受けたことを、成瀬は覚えている。
 自分の前では無邪気な一面を見せることはある。でも、そうでないときは、いつも周囲に壁を張り巡らした緊張した目をしていたし、親しい人間をつくろうともしていなかった。
 そうすることで自分自身を守っているのだと知っていたから、つい手を出してしまうことを止められなかった。
 止めたほうがいいと何度も言われて、それでも、なかなか手を離せなかったのに、最近の行人を見ていると、もういいのかもしれないと自然と思うことができるようになった。
 ずっと気にかけていた子どもが急激に大人に向かっているという事実は、ほほえましいけれど、少し寂しい。行人だけではなく、もっと昔から知っている幼馴染みもだから、なおさらそう感じるのだろう。

 ――まぁ、でも、それ以上に安心するけどな。

 自分がいなくなっても大丈夫だというのなら、本当に。
 そんなことを勝手に考えて安心してしまうのは、はじめて会った当時の行人の印象がずっと消えずに残っていたからかもしれない。
 ちょうど三年前。自分がまだ中等部にいたころ、新入生として入ってきた行人は、今よりもずっと線が細くて、少女のようで、触れ方ひとつで壊れてしまいそうな繊細さを、不器用な仮面の下に隠し持っていた。
 それでもどうにかひとりで頑張ろうとしていた姿が健気で、だから、必要以上に手を出してしまった。そのことを後悔はしていない。
 けれど、中等部にいた最後の年。今になって考えると、あのころからいろいろなものごとが変わり始めていたのかもしれなかった。




「俺も、本当に好き好んで首突っ込みたいわけじゃないんだけど」

 生徒会室から向原が出て行った途端に、篠原は言葉どおりの面倒くさそうな顔で、そう切り出してきた。ちょうど三年ほど前。まだ中等部の三年生だったころの話だ。

「なんだよ、その前置き」

 面倒くさいと篠原が感じている原因も、尋ねられた理由もわかっていたものの、なんでもないように苦笑してみせる。
 多少の面倒はかけたかもしれないが、そこまでの迷惑をかけたつもりはなかったからだ。

「首突っ込んでもらわないといけないようなこと、してないと思うけど?」
「嘘吐け。また喧嘩しただろ。今度はなにが原因だよ」
「喧嘩?」
「だから雑な嘘吐くなって。言いたくないならそれはそれでいいけど。あまりにもあまりだから、口出してんだろうが」
「じゃあ、逆に聞くけど。なんで喧嘩したって決めつけるかな。なにも見てないだろ」

 嘘、嘘、と言われて、おざなりに言い返す。なにも見てなくても、どうせこちらに問題があると判断しているのだろうな、と思いながら。
 そうでなければ、首を突っ込んでは来ないだろう。

「それは、おまえ……」

 呆れたふうに呟いて、篠原が閉まったばかりの扉を見やる。

「いきなり『成瀬』って呼び始めたら、誰でもそう思うだろ」
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