パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 7 ⑤

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「いえ、それは。点呼もたいした手間じゃないですし、むしろ、すみません。俺たちで収められなくて」
「それも気にしなくていい。俺も言っておきたかったから、ちょうどよかったんだ。正直少し目に余っていたしな」

 生徒会を軽んじて、ハルちゃんに肩入れするあの同級生たちの態度が、ということなのだろう。たしかに、茅野はらしくないほど厳しかった。
 間違っていたとは、思わないけれど。それはあくまでも皓太が生徒会側の人間だからだ。

「目に余るで言えば、成瀬もなんだがな。本当にあいつはなにを考えているんだか」

 苦笑いというていを取ってはいるが、思うところが言葉の節々からにじんでいた。
 立ち聞きしていた身としては、まぁ、気の毒だったな、という感想しかないので、「ですね」と相槌を打つことしかできない。

「聞いていたなら、おまえもわかるだろう。いっそ感心したぞ、俺は。よくもまぁ、あの大事な契約を悪徳訪問業者みたいなやり方で押し売りするものだと。一生の契約じゃないのか。それをなんだ。使って飽きたら返品オーケーみたいな軽いノリは」
「いや、でも、安心しました。その、……なんというか、茅野さんがまともな感覚で」

 捲くし立てる調子に、相当溜まっていたんだろうなぁ、と慮りながらも、皓太はそう取り成した。
 関係ないはずなのに、代わりに謝りたいような心境でもある。

「あたりまえだ。だが、まぁ、……なんだ。その俺を選ぶあたり、最低限まともだったんだろう」

 そう思うしかないというようにひとつ溜息を吐いた茅野が、「それで?」と水を向けてきた。

「おまえの立ち聞きを俺に告白したのは、そのあとの『話し合い』の結果を知りたかったからか?」
「まぁ、……はい」

 そうです、と頷く。さすがにあれ以上立ち聞きはできなかったから、自分の部屋に戻ったけれど、気がかりのひとつだったのだ。
 向原が生徒会に戻ったという事実だけを見れば、関係が改善したということなのだろうけれど、あのふたりを間近で見ていると、素直に喜ぶことができなかった。

「その、向原さんが生徒会に戻ったんだから、それが答えなのかもしれないですけど。なんか、あのふたり見てると、元に戻ったっていうふうには見えなくて。それで、ちょっと」

 気になっていたのだと告げると、茅野がわずかに困ったように眉を下げた。その表情で、自分の気がかりが正解だったのだと嫌でもわかる。

「本当に、おまえは、かわいそうなくらい周りが見えてるな」
「ということは、そうなんですよね。やっぱり」

 話し合いってなんだったんだ、いったい、という気分で、皓太は苦笑をこぼした。本当に、なんというか。

「俺が言うことじゃないと思いますけど、本当に、成瀬さん頑固なんですよ。自分がこうだと決めたことは、絶対に譲らない」
「俺もあいつが頑固だという点には同意するが。頑固なのは、向原もだぞ。でも、まぁ、……その頑固なやつらが、表面上だけであれ休戦協定を結んだことは事実なんだ」
「……」
「そういう意味では、必要以上におまえが気にすることはないと思うが」
「でも」
「ふたりとも頑固だからな。だからこそ、最低限の和解もなしには、表面上の仲直りもない」

 そういうことだ、と安心させるように茅野は請け負った。

「それ以上の部分については、周りが口を出してどうのこうのとなるものでもない。見守るしかないだろう。時間が解決するものもあるかもしれないしな」
 茅野の言うとおりなのかもしれない。諦め半分で、「そうですね」と皓太は認めた。
 そうなると、自分にできることは、「なにも知らない顔のまま、変わらずそばにいること」だけなのだと思う。

「俺も、あんまり気にしないようにします。成瀬さん、そういうの、すごく敏感に気がつくから」
「そうしてやれ」

 大変だなというふうに苦笑した茅野が、ふと思いついたように言い足した。

「だが、まぁ、頑固だとは言ったが、多少変わったところもあるにはあるぞ」
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