264 / 484
第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 7 ⑤
しおりを挟む
「いえ、それは。点呼もたいした手間じゃないですし、むしろ、すみません。俺たちで収められなくて」
「それも気にしなくていい。俺も言っておきたかったから、ちょうどよかったんだ。正直少し目に余っていたしな」
生徒会を軽んじて、ハルちゃんに肩入れするあの同級生たちの態度が、ということなのだろう。たしかに、茅野はらしくないほど厳しかった。
間違っていたとは、思わないけれど。それはあくまでも皓太が生徒会側の人間だからだ。
「目に余るで言えば、成瀬もなんだがな。本当にあいつはなにを考えているんだか」
苦笑いというていを取ってはいるが、思うところが言葉の節々からにじんでいた。
立ち聞きしていた身としては、まぁ、気の毒だったな、という感想しかないので、「ですね」と相槌を打つことしかできない。
「聞いていたなら、おまえもわかるだろう。いっそ感心したぞ、俺は。よくもまぁ、あの大事な契約を悪徳訪問業者みたいなやり方で押し売りするものだと。一生の契約じゃないのか。それをなんだ。使って飽きたら返品オーケーみたいな軽いノリは」
「いや、でも、安心しました。その、……なんというか、茅野さんがまともな感覚で」
捲くし立てる調子に、相当溜まっていたんだろうなぁ、と慮りながらも、皓太はそう取り成した。
関係ないはずなのに、代わりに謝りたいような心境でもある。
「あたりまえだ。だが、まぁ、……なんだ。その俺を選ぶあたり、最低限まともだったんだろう」
そう思うしかないというようにひとつ溜息を吐いた茅野が、「それで?」と水を向けてきた。
「おまえの立ち聞きを俺に告白したのは、そのあとの『話し合い』の結果を知りたかったからか?」
「まぁ、……はい」
そうです、と頷く。さすがにあれ以上立ち聞きはできなかったから、自分の部屋に戻ったけれど、気がかりのひとつだったのだ。
向原が生徒会に戻ったという事実だけを見れば、関係が改善したということなのだろうけれど、あのふたりを間近で見ていると、素直に喜ぶことができなかった。
「その、向原さんが生徒会に戻ったんだから、それが答えなのかもしれないですけど。なんか、あのふたり見てると、元に戻ったっていうふうには見えなくて。それで、ちょっと」
気になっていたのだと告げると、茅野がわずかに困ったように眉を下げた。その表情で、自分の気がかりが正解だったのだと嫌でもわかる。
「本当に、おまえは、かわいそうなくらい周りが見えてるな」
「ということは、そうなんですよね。やっぱり」
話し合いってなんだったんだ、いったい、という気分で、皓太は苦笑をこぼした。本当に、なんというか。
「俺が言うことじゃないと思いますけど、本当に、成瀬さん頑固なんですよ。自分がこうだと決めたことは、絶対に譲らない」
「俺もあいつが頑固だという点には同意するが。頑固なのは、向原もだぞ。でも、まぁ、……その頑固なやつらが、表面上だけであれ休戦協定を結んだことは事実なんだ」
「……」
「そういう意味では、必要以上におまえが気にすることはないと思うが」
「でも」
「ふたりとも頑固だからな。だからこそ、最低限の和解もなしには、表面上の仲直りもない」
そういうことだ、と安心させるように茅野は請け負った。
「それ以上の部分については、周りが口を出してどうのこうのとなるものでもない。見守るしかないだろう。時間が解決するものもあるかもしれないしな」
茅野の言うとおりなのかもしれない。諦め半分で、「そうですね」と皓太は認めた。
そうなると、自分にできることは、「なにも知らない顔のまま、変わらずそばにいること」だけなのだと思う。
「俺も、あんまり気にしないようにします。成瀬さん、そういうの、すごく敏感に気がつくから」
「そうしてやれ」
大変だなというふうに苦笑した茅野が、ふと思いついたように言い足した。
「だが、まぁ、頑固だとは言ったが、多少変わったところもあるにはあるぞ」
「それも気にしなくていい。俺も言っておきたかったから、ちょうどよかったんだ。正直少し目に余っていたしな」
生徒会を軽んじて、ハルちゃんに肩入れするあの同級生たちの態度が、ということなのだろう。たしかに、茅野はらしくないほど厳しかった。
間違っていたとは、思わないけれど。それはあくまでも皓太が生徒会側の人間だからだ。
「目に余るで言えば、成瀬もなんだがな。本当にあいつはなにを考えているんだか」
苦笑いというていを取ってはいるが、思うところが言葉の節々からにじんでいた。
立ち聞きしていた身としては、まぁ、気の毒だったな、という感想しかないので、「ですね」と相槌を打つことしかできない。
「聞いていたなら、おまえもわかるだろう。いっそ感心したぞ、俺は。よくもまぁ、あの大事な契約を悪徳訪問業者みたいなやり方で押し売りするものだと。一生の契約じゃないのか。それをなんだ。使って飽きたら返品オーケーみたいな軽いノリは」
「いや、でも、安心しました。その、……なんというか、茅野さんがまともな感覚で」
捲くし立てる調子に、相当溜まっていたんだろうなぁ、と慮りながらも、皓太はそう取り成した。
関係ないはずなのに、代わりに謝りたいような心境でもある。
「あたりまえだ。だが、まぁ、……なんだ。その俺を選ぶあたり、最低限まともだったんだろう」
そう思うしかないというようにひとつ溜息を吐いた茅野が、「それで?」と水を向けてきた。
「おまえの立ち聞きを俺に告白したのは、そのあとの『話し合い』の結果を知りたかったからか?」
「まぁ、……はい」
そうです、と頷く。さすがにあれ以上立ち聞きはできなかったから、自分の部屋に戻ったけれど、気がかりのひとつだったのだ。
向原が生徒会に戻ったという事実だけを見れば、関係が改善したということなのだろうけれど、あのふたりを間近で見ていると、素直に喜ぶことができなかった。
「その、向原さんが生徒会に戻ったんだから、それが答えなのかもしれないですけど。なんか、あのふたり見てると、元に戻ったっていうふうには見えなくて。それで、ちょっと」
気になっていたのだと告げると、茅野がわずかに困ったように眉を下げた。その表情で、自分の気がかりが正解だったのだと嫌でもわかる。
「本当に、おまえは、かわいそうなくらい周りが見えてるな」
「ということは、そうなんですよね。やっぱり」
話し合いってなんだったんだ、いったい、という気分で、皓太は苦笑をこぼした。本当に、なんというか。
「俺が言うことじゃないと思いますけど、本当に、成瀬さん頑固なんですよ。自分がこうだと決めたことは、絶対に譲らない」
「俺もあいつが頑固だという点には同意するが。頑固なのは、向原もだぞ。でも、まぁ、……その頑固なやつらが、表面上だけであれ休戦協定を結んだことは事実なんだ」
「……」
「そういう意味では、必要以上におまえが気にすることはないと思うが」
「でも」
「ふたりとも頑固だからな。だからこそ、最低限の和解もなしには、表面上の仲直りもない」
そういうことだ、と安心させるように茅野は請け負った。
「それ以上の部分については、周りが口を出してどうのこうのとなるものでもない。見守るしかないだろう。時間が解決するものもあるかもしれないしな」
茅野の言うとおりなのかもしれない。諦め半分で、「そうですね」と皓太は認めた。
そうなると、自分にできることは、「なにも知らない顔のまま、変わらずそばにいること」だけなのだと思う。
「俺も、あんまり気にしないようにします。成瀬さん、そういうの、すごく敏感に気がつくから」
「そうしてやれ」
大変だなというふうに苦笑した茅野が、ふと思いついたように言い足した。
「だが、まぁ、頑固だとは言ったが、多少変わったところもあるにはあるぞ」
13
あなたにおすすめの小説
運命よりも先に、愛してしまった
AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。
しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、
2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。
その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
【完結】初恋のアルファには番がいた—番までの距離—
水樹りと
BL
蛍は三度、運命を感じたことがある。
幼い日、高校、そして大学。
高校で再会した初恋の人は匂いのないアルファ――そのとき彼に番がいると知る。
運命に選ばれなかったオメガの俺は、それでも“自分で選ぶ恋”を始める。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる