パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 10 ④

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 想像していた以上の、あっさりとした返事だった。行人の沈黙を困惑と取ったのか、取り繕うように四谷はこう続けてみせた。

「まぁ、俺にとって会長が遠い人だからっていうこともあると思うんだけど、ちょっと怖いんだよね、会長は。もちろん、優しい人だっていうのはわかるけど」
「うん」
「でも、高藤を怖いと思ったことは一度もないよ」
「……うん」
「完璧超人なんかじゃないって、俺だって知ってる。――だからさ、榛名。話、ちゃんと聞いてあげてよ。高藤が授業さぼるなんて、やっぱりよっぽどなんだよ。俺には話せなくても、榛名にだったら、きっと話してくれるから」

 うん、と三度足元を見つめたまま頷く。胸にあるのは、試すようなことを聞いてしまった罪悪感だった。

「なんでもできるかもしれないけど、なんでもひとりでさせないであげてよ」

 行人の罪悪感を知ってか知らずか、四谷はさらりと言い切った。

「そういうのって、なんか、かわいそうじゃん」




 ――かわいそう、か。

 四谷と別れて寮の部屋に戻ってからも、その台詞が妙に頭に残っていた。同室者が帰ってきていたような形跡もない。
 溜息を吐いて窓辺に寄ったところで、行人は「あ」と小さな声をもらした。遠目に見えた人影が、成瀬だと気づいたからだ。今から下に降りれば、玄関を出たあたりで出迎えることができるかもしれない。

「……最近、喋ってないし」

 言い訳のようにひとりごちて、寮室を飛び出す。あるいは、この部屋で高藤とふたりになる前に違う誰かと話したかったのかもしれない。
 寮の階段を駆け下りて、玄関を開ける。ちょうど石段を上っていたところだった成瀬が、行人の勢いに驚いた顔をしてから、ふっとほほえんだ。

「どこか行くの?」
「え……っと」

 変わらない優しい調子に、肩から力が抜けたと同時に、なんだかものすごく恥ずかしくなってしまった。
 なにをこんなに急いでやってきてしまったのだろう。おまけに、よくよく考えれば、四谷のことを相談なんてできるはずもないのだ。
 だって、それをすれば、四谷の気持ちを勝手に話すことになってしまう。

「あの、……その」
「皓太、生徒会室には来てなかったよ」
「え」
「あ、違った? すごい勢いだったから、皓太探してるのかと思って」
「いや、そういうわけではなかったんですけど、……生徒会、行ってなかったんですか? あいつ」
「うん。さぼりってわけじゃないけど。いや、まぁ、さぼりか。でも、たぶん主導したの向原だし」
「向原先輩?」

 本格的に話の流れがわからなくなってきて、行人は繰り返した。

「あの、なんで……」
「なんでかまでは知らないけど。俺が直接見たわけじゃないから。でも、茅野が言ってたから、ふたりでいたことは事実なんだと思うよ。それが、どうかした?」
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