パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 1 ③

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「俺が頼りないから、なんでしょうけど。でも、俺も一緒にするって言ったのに、なんか結局頼ってもらえてないみたいで、それがちょっと腹が立つっていうか……って、すみません。愚痴ばっかり」
「愚痴くらい、ぜんぜん聞くけど」

 むしろちょうどよかったと思ってもいるけれど。生徒会室を一瞥してから、そういえば、と成瀬は切り出した。さも今思いついた、という調子で。

「中等部のころは、行人もよく来てたよね、生徒会」
「あ、いや……、その、あのころは本当に遠慮がなかったというか。今思うと邪魔してたなって。すみません」
「いや、それもぜんぜんいいんだけど。また遊びに来てくれてもいいのになって思っただけ」
「え?」

 丸くなった瞳に向かって、駄目押しのように成瀬はほほえんだ。

「行人も、生徒会手伝ってみる?」


**


「成瀬、おまえな」

 寮五階の談話室に入ってきた茅野は、あからさまに機嫌の悪そうな顔をしていた。まぁ、そういう顔をされるだろうなぁ、と思っていたので、苦笑を浮かべて、本から顔を上げる。

「なに?」
「高藤だけじゃ飽き足らず榛名まで引き抜くとは、寮生委員会になにか恨みでもあるのか、おまえは」
「ない、ない。どっちかっていうと感謝してる」

 目の前の席を引いた茅野に向かって、そう首を振る。むしろ、文句くらいは聞いてやらないとと思っていたから、こうして待っていたのだ。

「ただ、皓太があいかわらず行人になにも相談したりしてないみたいだったから」
「だったから?」
「いっそのこと、行人が同じ側に来てもいいのかなと思って」
「よくそこまで自分のことを棚上げにした発言ができるな、おまえは」

 呆れきった調子で言われてしまって、だって、と言い募る。棚上げした云々について否定する気はないが、それはそれだ。

「言っただろ、選挙通してやりたいって。そのあとの基盤もちゃんと整えておいてやらないと」
「選挙を通してやりたいという話は聞いたし、俺にできる範囲で協力するとも言ったが」

 それにしても、と続いた茅野の声は、やはり完全に呆れきっていた。

「お膳立てしすぎだ。そこまでしてやらなくても、高藤なら問題なくできるだろう」
「でも」
「あのなぁ、成瀬」

 心底嫌そうに、茅野が言う。こんなことを俺も言いたくはないんだが、と嫌な前置きをして、一言。

「おまえ、過保護な兄貴を通り越して、過干渉な母親みたいになってるぞ」
「……」
「煙たがられないうちに改めたほうが、おまえのためだと思うが」
「そこまでのつもりはなかったんだけど」

 そこまで言われると、さすがに居たたまれないものがある。言い訳がましくなっても、茅野の追い打ちは容赦がなかった。

「そうか? 新学期に入ってから、以前にも増して、高藤、高藤な気がしていたが」
「選挙もあるし、一年早く出るんだから、その分、教えたいこともあるし」

 本当だ。できることは、なんでもしてやりたいと思っている。そのくらいしてやっても問題はないだろう、とも。

 ――というか、そのくらいしかないしな、もう。

「まぁ、そういうことにしてもいいが」

 じっとこちらを見つめていた茅野が、諦めたように溜息を吐く。

「せいぜい嫌がられないように気をつけろ。おまえだって嫌だろう。自分の進む道筋をすべて提示されるのは」
「まぁ、……」

 それはそうかもしれない。気をつけると呟くと、その不承不承さにか、茅野が小さく笑った。
 ほかにも寮生はいるはずなのに、学期が変わっても、夜になるとここは静かなままだ。それで良いと思っているのかどうか、自分のことなのに、なぜかよくわからないでいる。

「一年早くと言えば」
「ん?」
「あいつは、なにも言ってこないのか? 二年の呉宮。中等部のときは、おまえと高藤のあいだで会長をやっていただろう」
「この状況だと、あの子は出てきたがらないと思うけどな」

 希望的な観測、というよりは、事実として、成瀬はそう答えた。
 三年前、自分が彼を後任に押したことを、必要以上に幼馴染みはマイナスに捉えていたようだったが、それなりにはかわいがっていたつもりだし、可もなく不可もなくやってくれると期待していたつもりだ。
 とは言え、夏季休暇前に言われたことを否定するつもりもないのだが。
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