319 / 484
第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 1 ③
しおりを挟む
「俺が頼りないから、なんでしょうけど。でも、俺も一緒にするって言ったのに、なんか結局頼ってもらえてないみたいで、それがちょっと腹が立つっていうか……って、すみません。愚痴ばっかり」
「愚痴くらい、ぜんぜん聞くけど」
むしろちょうどよかったと思ってもいるけれど。生徒会室を一瞥してから、そういえば、と成瀬は切り出した。さも今思いついた、という調子で。
「中等部のころは、行人もよく来てたよね、生徒会」
「あ、いや……、その、あのころは本当に遠慮がなかったというか。今思うと邪魔してたなって。すみません」
「いや、それもぜんぜんいいんだけど。また遊びに来てくれてもいいのになって思っただけ」
「え?」
丸くなった瞳に向かって、駄目押しのように成瀬はほほえんだ。
「行人も、生徒会手伝ってみる?」
**
「成瀬、おまえな」
寮五階の談話室に入ってきた茅野は、あからさまに機嫌の悪そうな顔をしていた。まぁ、そういう顔をされるだろうなぁ、と思っていたので、苦笑を浮かべて、本から顔を上げる。
「なに?」
「高藤だけじゃ飽き足らず榛名まで引き抜くとは、寮生委員会になにか恨みでもあるのか、おまえは」
「ない、ない。どっちかっていうと感謝してる」
目の前の席を引いた茅野に向かって、そう首を振る。むしろ、文句くらいは聞いてやらないとと思っていたから、こうして待っていたのだ。
「ただ、皓太があいかわらず行人になにも相談したりしてないみたいだったから」
「だったから?」
「いっそのこと、行人が同じ側に来てもいいのかなと思って」
「よくそこまで自分のことを棚上げにした発言ができるな、おまえは」
呆れきった調子で言われてしまって、だって、と言い募る。棚上げした云々について否定する気はないが、それはそれだ。
「言っただろ、選挙通してやりたいって。そのあとの基盤もちゃんと整えておいてやらないと」
「選挙を通してやりたいという話は聞いたし、俺にできる範囲で協力するとも言ったが」
それにしても、と続いた茅野の声は、やはり完全に呆れきっていた。
「お膳立てしすぎだ。そこまでしてやらなくても、高藤なら問題なくできるだろう」
「でも」
「あのなぁ、成瀬」
心底嫌そうに、茅野が言う。こんなことを俺も言いたくはないんだが、と嫌な前置きをして、一言。
「おまえ、過保護な兄貴を通り越して、過干渉な母親みたいになってるぞ」
「……」
「煙たがられないうちに改めたほうが、おまえのためだと思うが」
「そこまでのつもりはなかったんだけど」
そこまで言われると、さすがに居たたまれないものがある。言い訳がましくなっても、茅野の追い打ちは容赦がなかった。
「そうか? 新学期に入ってから、以前にも増して、高藤、高藤な気がしていたが」
「選挙もあるし、一年早く出るんだから、その分、教えたいこともあるし」
本当だ。できることは、なんでもしてやりたいと思っている。そのくらいしてやっても問題はないだろう、とも。
――というか、そのくらいしかないしな、もう。
「まぁ、そういうことにしてもいいが」
じっとこちらを見つめていた茅野が、諦めたように溜息を吐く。
「せいぜい嫌がられないように気をつけろ。おまえだって嫌だろう。自分の進む道筋をすべて提示されるのは」
「まぁ、……」
それはそうかもしれない。気をつけると呟くと、その不承不承さにか、茅野が小さく笑った。
ほかにも寮生はいるはずなのに、学期が変わっても、夜になるとここは静かなままだ。それで良いと思っているのかどうか、自分のことなのに、なぜかよくわからないでいる。
「一年早くと言えば」
「ん?」
「あいつは、なにも言ってこないのか? 二年の呉宮。中等部のときは、おまえと高藤のあいだで会長をやっていただろう」
「この状況だと、あの子は出てきたがらないと思うけどな」
希望的な観測、というよりは、事実として、成瀬はそう答えた。
三年前、自分が彼を後任に押したことを、必要以上に幼馴染みはマイナスに捉えていたようだったが、それなりにはかわいがっていたつもりだし、可もなく不可もなくやってくれると期待していたつもりだ。
とは言え、夏季休暇前に言われたことを否定するつもりもないのだが。
「愚痴くらい、ぜんぜん聞くけど」
むしろちょうどよかったと思ってもいるけれど。生徒会室を一瞥してから、そういえば、と成瀬は切り出した。さも今思いついた、という調子で。
「中等部のころは、行人もよく来てたよね、生徒会」
「あ、いや……、その、あのころは本当に遠慮がなかったというか。今思うと邪魔してたなって。すみません」
「いや、それもぜんぜんいいんだけど。また遊びに来てくれてもいいのになって思っただけ」
「え?」
丸くなった瞳に向かって、駄目押しのように成瀬はほほえんだ。
「行人も、生徒会手伝ってみる?」
**
「成瀬、おまえな」
寮五階の談話室に入ってきた茅野は、あからさまに機嫌の悪そうな顔をしていた。まぁ、そういう顔をされるだろうなぁ、と思っていたので、苦笑を浮かべて、本から顔を上げる。
「なに?」
「高藤だけじゃ飽き足らず榛名まで引き抜くとは、寮生委員会になにか恨みでもあるのか、おまえは」
「ない、ない。どっちかっていうと感謝してる」
目の前の席を引いた茅野に向かって、そう首を振る。むしろ、文句くらいは聞いてやらないとと思っていたから、こうして待っていたのだ。
「ただ、皓太があいかわらず行人になにも相談したりしてないみたいだったから」
「だったから?」
「いっそのこと、行人が同じ側に来てもいいのかなと思って」
「よくそこまで自分のことを棚上げにした発言ができるな、おまえは」
呆れきった調子で言われてしまって、だって、と言い募る。棚上げした云々について否定する気はないが、それはそれだ。
「言っただろ、選挙通してやりたいって。そのあとの基盤もちゃんと整えておいてやらないと」
「選挙を通してやりたいという話は聞いたし、俺にできる範囲で協力するとも言ったが」
それにしても、と続いた茅野の声は、やはり完全に呆れきっていた。
「お膳立てしすぎだ。そこまでしてやらなくても、高藤なら問題なくできるだろう」
「でも」
「あのなぁ、成瀬」
心底嫌そうに、茅野が言う。こんなことを俺も言いたくはないんだが、と嫌な前置きをして、一言。
「おまえ、過保護な兄貴を通り越して、過干渉な母親みたいになってるぞ」
「……」
「煙たがられないうちに改めたほうが、おまえのためだと思うが」
「そこまでのつもりはなかったんだけど」
そこまで言われると、さすがに居たたまれないものがある。言い訳がましくなっても、茅野の追い打ちは容赦がなかった。
「そうか? 新学期に入ってから、以前にも増して、高藤、高藤な気がしていたが」
「選挙もあるし、一年早く出るんだから、その分、教えたいこともあるし」
本当だ。できることは、なんでもしてやりたいと思っている。そのくらいしてやっても問題はないだろう、とも。
――というか、そのくらいしかないしな、もう。
「まぁ、そういうことにしてもいいが」
じっとこちらを見つめていた茅野が、諦めたように溜息を吐く。
「せいぜい嫌がられないように気をつけろ。おまえだって嫌だろう。自分の進む道筋をすべて提示されるのは」
「まぁ、……」
それはそうかもしれない。気をつけると呟くと、その不承不承さにか、茅野が小さく笑った。
ほかにも寮生はいるはずなのに、学期が変わっても、夜になるとここは静かなままだ。それで良いと思っているのかどうか、自分のことなのに、なぜかよくわからないでいる。
「一年早くと言えば」
「ん?」
「あいつは、なにも言ってこないのか? 二年の呉宮。中等部のときは、おまえと高藤のあいだで会長をやっていただろう」
「この状況だと、あの子は出てきたがらないと思うけどな」
希望的な観測、というよりは、事実として、成瀬はそう答えた。
三年前、自分が彼を後任に押したことを、必要以上に幼馴染みはマイナスに捉えていたようだったが、それなりにはかわいがっていたつもりだし、可もなく不可もなくやってくれると期待していたつもりだ。
とは言え、夏季休暇前に言われたことを否定するつもりもないのだが。
11
あなたにおすすめの小説
運命よりも先に、愛してしまった
AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。
しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、
2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。
その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
【完結】初恋のアルファには番がいた—番までの距離—
水樹りと
BL
蛍は三度、運命を感じたことがある。
幼い日、高校、そして大学。
高校で再会した初恋の人は匂いのないアルファ――そのとき彼に番がいると知る。
運命に選ばれなかったオメガの俺は、それでも“自分で選ぶ恋”を始める。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる