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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 8 ②
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「あいつのそういうところが、本気でムカつく」
というわけで、その翌日の放課後。行人は教室でぶつぶつと四谷に愚痴を吐き出していた。
心境としては、本当になんなんだとの一言に尽きる。
あのあとも、「あ、これ以上、言ったらまずいな」と至極冷静に判断したらしい高藤は、行人にいっさい触れてこなくて、こうなってくると、その気遣いもいちいち癪に障るのだ。
「いや、まぁ、そういうやつだってわかってるけど。でも、その、なんというか」
「べつにいいけど。榛名もよくそういうこと俺の前で言うようになったよねぇ」
自販機で買ってきたジュースを飲みながら、呆れ顔で四谷が言う。
「気遣われるよりぜんぜんいいから、本当いいんだけど。榛名ってそんなに切り替え良かったかなって逆にびっくり。――ねぇ、待って。ちょっと、榛名」
「ん?」
「まさか、俺の話、高藤にして、助言貰ったからこの態度とか言わないよね?」
「え?」
予想外の疑惑に、言ってない、言ってない、と慌てて行人は首を横に振った。その程度の分別はあるつもりだ。
……いや、まぁ、誰にも言ってないとは言わない、けど。
「本当? ならいいけど。荻原とかにも言わないでよ。心配されたらそれこそムカつくから」
あまりと言えばあまりの言いように、はは、と乾いた笑いがこぼれてしまった。
この半年ほどで交流が増えた自分と違い、四谷と荻原はなんだかんだと中等部のころから仲が良いので、気安さから派生するじゃれ合いのようなものなのだろうが。
「まぁ、俺は、榛名が生徒会に入るのはいいと思うけどね。もちろん、高藤に余計な心労を与えず役に立つっていう前提での話だけど」
「……善処する」
文句を言っていたときの勢いが消えうせた返答に、からかうように四谷が目を細める。
「なんていうか、生徒会って、とんでもない人たちの集まりじゃん。ついてくだけでも大変だとは思うよ? おまけに少数精鋭って噂だし。知ってる? 入りたいっていう人はいくらでもいるけど、なかなか首を縦に振ってもらえないんだって。会長に」
「え? 成瀬さんに?」
「そう、そう。榛名の大好きな成瀬会長に。あの人もぱっと見、癖がないけど、なかなか曲者だよね。まぁ、この学園のトップを張ってる人だって思えば、そんなものなんだろうけど」
だから、とぶらぶらと足を揺らしながら、四谷が続けた。
「そんな人が、なんの考えもなしに『手伝う?』なんて言うわけないんだろうし。会長に限って、高藤に不利になることも選ばないだろうし。榛名はやれることやったらいいんじゃない?」
そんなつもりはなかったのに、慰められてしまった。うん、とぎこちなく頷く。
――でも、たしかに、あそこ、いつ行っても人少ないもんな……。
事実はどうあれ、そういう噂が出ることは、わからなくもない。ぬるくなった珈琲に口をつけて、行人はちらと四谷の表情を窺った。いつかのような追い詰められた雰囲気はない。
自分に吐き出したからと言って、ずっと抱えていた感情をきれいに整理できたわけではないだろうが、それでも少しは楽になったのなら良かったと思う。良かった、というのも、上目線なのかもしれないけれど。
そんなことをつらつらと考えていると、生徒会と言えばさ、とぽつりと四谷が口火を切った。
「同じ寮って言っても、雲の上の存在すぎて副会長と喋ったことって一度もなかったんだけどね」
俺も、ほとんど喋ったことないけど、と思いながら、うん、と行人は相槌を打った。四谷が向原先輩のことを話題にするのは意外だな、とも少し思いながら。
「このあいだ、本当に偶然だったんだけど、助けてもらったんだ」
「え?」
なんだか今日は、予想外な話ばかりが降ってくる。その感情のままに、行人は思いきり意外だという声を出した。
「助けてって、向原先輩が? というか、なんで?」
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