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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 8 ④
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夏期休暇に入る前、この学園の空気は少しぴりついているように行人には思えていた。
茅野は必要以上に心配しなくていいと言っていたし、そう思いたい気持ちはやまやまだったけれど、休暇中、どこかでずっと気にかかってしまっていた。だから――。
「……成瀬さん、いつもどおりって感じだったから、ほっとしてたんだけどな」
四谷と別れ、寮室の扉を閉めたところで、思わずひとりごちる。当然のことながら基本が多忙の同室者は帰ってきておらず、部屋には行人しかいない。溜息を呑み込んで部屋の明かりをつける。
ひとつ気になることができると、ぐるぐると考えてしまうのは、悪癖なのだろう。うんざりとしつつ、机に鞄を置いて、鍵付きの引き出しにそっと行人は指を這わせた。
実際のところは、どうなのかは知らない。以前よりも圧倒的に喋る機会が減ったからだ。けれど、新学期が始まってからの、この一ヶ月。少ないながらも行人の目には、成瀬も、茅野も、向原も、篠原も、三年生たちはみないつもどおりに見えていた。
これも休暇に入る前に茅野が言っていたとおりで、最近は水城の話を周辺で聞くこともなくなっていたし、高藤はやたらと生徒会に入り浸っているようで忙しそうにはしていたけれど、選挙前の時期であるからしかたないと思っていた。
「本当、あいつ、そういうこと言わないよな」
無論、高藤のことである。それだけ自分が頼りにならないということなのだろうとわかっていても、腹は立つ。
先輩である成瀬や茅野であれば、誤魔化されたとしてもしかたないと思うし、事情があるのだろうと慮ることもできる。だが、しかし。なぜそこの枠組みに、同じ年のおまえまでさらりとあたりまえの顔で入ろうとするのか、ということだ。
――立候補の受付期間ももう終わるし、来週には選挙の活動期間が始まるのにな。
それが終わって、十月末の立会演説会を経て投票結果が出れば、生徒会は新体制に変わる。誰を生徒会役員に登用するかも、新会長が決めることになる。そこまで考えたところで、行人はひとつの可能性に気がついた。あの、高藤の、「できれば生徒会なんてものに関わらないほうがいいと思うんだけど」と言わんばかりだった微妙な顔。
……もしかして、成瀬さんが誘ってくれてる今の期間逃したら、俺がするしたい以前に、生徒会に参加なんてできなくなるんじゃ。
高藤や四谷にどう言われようとも、自分が場違いであることは自分が一番わかっているのだ。でも。扉が開いた音で、行人ははっと顔を上げた。
「……おかえり」
茅野は必要以上に心配しなくていいと言っていたし、そう思いたい気持ちはやまやまだったけれど、休暇中、どこかでずっと気にかかってしまっていた。だから――。
「……成瀬さん、いつもどおりって感じだったから、ほっとしてたんだけどな」
四谷と別れ、寮室の扉を閉めたところで、思わずひとりごちる。当然のことながら基本が多忙の同室者は帰ってきておらず、部屋には行人しかいない。溜息を呑み込んで部屋の明かりをつける。
ひとつ気になることができると、ぐるぐると考えてしまうのは、悪癖なのだろう。うんざりとしつつ、机に鞄を置いて、鍵付きの引き出しにそっと行人は指を這わせた。
実際のところは、どうなのかは知らない。以前よりも圧倒的に喋る機会が減ったからだ。けれど、新学期が始まってからの、この一ヶ月。少ないながらも行人の目には、成瀬も、茅野も、向原も、篠原も、三年生たちはみないつもどおりに見えていた。
これも休暇に入る前に茅野が言っていたとおりで、最近は水城の話を周辺で聞くこともなくなっていたし、高藤はやたらと生徒会に入り浸っているようで忙しそうにはしていたけれど、選挙前の時期であるからしかたないと思っていた。
「本当、あいつ、そういうこと言わないよな」
無論、高藤のことである。それだけ自分が頼りにならないということなのだろうとわかっていても、腹は立つ。
先輩である成瀬や茅野であれば、誤魔化されたとしてもしかたないと思うし、事情があるのだろうと慮ることもできる。だが、しかし。なぜそこの枠組みに、同じ年のおまえまでさらりとあたりまえの顔で入ろうとするのか、ということだ。
――立候補の受付期間ももう終わるし、来週には選挙の活動期間が始まるのにな。
それが終わって、十月末の立会演説会を経て投票結果が出れば、生徒会は新体制に変わる。誰を生徒会役員に登用するかも、新会長が決めることになる。そこまで考えたところで、行人はひとつの可能性に気がついた。あの、高藤の、「できれば生徒会なんてものに関わらないほうがいいと思うんだけど」と言わんばかりだった微妙な顔。
……もしかして、成瀬さんが誘ってくれてる今の期間逃したら、俺がするしたい以前に、生徒会に参加なんてできなくなるんじゃ。
高藤や四谷にどう言われようとも、自分が場違いであることは自分が一番わかっているのだ。でも。扉が開いた音で、行人ははっと顔を上げた。
「……おかえり」
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