パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 9 ①

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[9]


 大嫌いだ、と。ずっとそう思おうとしていた。自分にはないものすべてを持っている男だったから。


「じゃあ、榛名連れてくけど、よかったんだよな? 皓太は――、あぁ、はい、行かないのな、了解」

 微妙な顔で首を横に振った皓太に苦笑を返した篠原が、「じゃあ行くか」と緊張気味の様子の行人に声をかけている。書類の分類されている箱の前で、篠原の説明を聞く行人の横顔は真剣で、それがどうにもほほえましい。
 いつもの自席からそっと様子を窺っていると、篠原が振り返った。

「委員会回り行ってくるわ。榛名の顔見せがてらだから、ちょっと時間かかると思うけど」
「急がなくていいよ。皓太はこっちに残ってくれるらしいから」

 神妙に書類を抱えている行人に笑みを向けると、ほっとしたようにその表情がゆるむ。肩に力が入り過ぎている気もするけれど、はじめての挑戦だと思えば、そんなものなのかもしれない。
 ぺこりと頭を下げた行人が篠原について出て行くのを見送って、生徒会室に残ったもうひとりに水を向ける。

「よかったのか? 着いて行かなくて」
「なんで決裁返しに行くだけの篠原さんに、ふたりも着いて行かないといけないの」

 おかしいでしょ、と、いかにも不本意そうに言うので、着いて行かないで心配するより、実際を見たほうが安心すると思って、と返せば、いっそう不本意な顔をされてしまった。
 これは確実に、行人の頼みを断らなかったことを根に持っている。

「行人、たしかに俺のとこに来たときは、半分勢いって感じだったけど、ちゃんと考えて決めたと思うぞ?」
「……それも、まぁ、そうなんだけど」
「ん?」
「あの、このあいだ、呉宮先輩来てたでしょ」
「あぁ、皓太が気にするようなことはなにも言ってなかったよ。あの子自身が決めたことである以上、結果がどうなろうと、それは受け入れるべきことだと思うし」
「いや、それも、まぁ、本当にそうだとは思うんだけど」

 歯切れの悪い調子で繰り返した皓太が、そのあとさ、と窺うように言う。

「向原さん来なかった? 俺、ちょっと、余計なこと言った気がして、気になってたんだけど……」
「あぁ」

 そんなことかとばかりに、成瀬は笑って首を振った。

「気にしなくていいよ、大丈夫」
「でも」
「むしろ、余計なこと気にかけさせてごめんな。こっちは問題ないから、行人のこと気にかけてやって。張り切ってくれるのはうれしいけど、あんまり飛ばしすぎると途中でしんどくなるかもしれないし」

 まぁ、篠原なら大丈夫だと思うけど、と言い添えて、もう一度ほほえむ。
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