パーフェクトワールド

木原あざみ

文字の大きさ
413 / 484
第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 16 ⑤

しおりを挟む
「うん。だから、……俺のせいで、参加できなくなってるんだったら悪いなって。ちょっと」

 もごもごと告白した行人を見下ろしていた荻原が、ふっとほほえんだ。

「じゃあ、行ってみようか」
「え」
「嫌がられるかもしれないけど、今だったら、まだ少しは参加できるし」
「でも……」

 それこそ、本当に嫌がられるだけではないのだろうか。尻込みをした行人に、ほら、と荻原が朝比奈のほうを見やる。

「ひなちゃんも、説得すること自体を止めはしなかったんでしょ。もちろん、教室で話してるときに、タイミング見て誘ってあげるだけでもいいと思うけどね」

 最終決定を任せられるかたちになって、行人は視線を落とした。こういうことは、本当に苦手だ。なにが正解なのかが、本当にわからない。

 ――でも、そういや、気まずくて嫌だったけど、荻原の部屋にも行ったんだっけ。

 ゴールデンウイークのころだ。その少し前に食堂で嫌な態度を取ってしまって、気まずいなぁと勝手に思って、けれど、思うだけで放置していたころのこと。
 その行人の心情を知ってか知らずか、――まぁ、きっと、知っていたのだろうけれど、成瀬に背を押してもらって、部屋に呼びに行ったのだ。
 誘っても断られるかもしれないし、と躊躇した自分に、断る断らないは相手の自由だけど、自分だけ声をかけられていなかったことをあとから知ったら寂しいんじゃないかな、と。いかにもあの人らしい優しい言葉で。

 ――そうだよな。

 うん、と自分を鼓舞するように、行人は頷いた。

「断られてもいいから、一回だけ声かけてみようかな」
「そうする?」
「あ、……でも、朝比奈にも言われたんだけど、たぶん断られると思うから」

 あまり過度な期待はしないでほしい、と匂わせた言外に、大丈夫だよ、と荻原が請け負う。

「そんなこと言ったら、俺、何回も振られてるし。それに、たぶん、変にゴリ押しさえしなかったら、断られるにしても、そっけなく振られるくらいで済むと思うよ」

 それはそれで、あまりにも期待されていないというか、断られることが大前提になりすぎているような。
 一緒に行こうか、という申し出は断って、行人はこっそりと談話室を抜け出した。
 最近は、寮の一年生の半分くらいはなんだかんだと談話室にいるし、たまに顔を出すだけの人間を含めれば、三分の二くらいは作業に参加している。
 もちろん、するしないは自由だけれど、参加していない人間は「あぁ、だろうなぁ」と納得するタイプばかりで、そういう意味で、四谷の不参加はたしかに少し目立っている。

 ――本当、いまさら言うなって話なんだろうし、朝比奈からしたら、「察しなよ」な理由なんだろうけど。

 でも、自分は、その察するべきほうの理由を、いまさらな感じがして、ちょっと腑に落ちないと思ってしまっている。
 それも、傲慢というやつなのだろうか。ここまで来て悶々と悩みながら、行人は目的のドアを叩いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

【完結】それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ずっと憧れていた蓮見馨に勢いで告白してしまう。 するとまさかのOK。夢みたいな日々が始まった……はずだった。 だけど、ある出来事をきっかけに二人の関係はあっけなく終わる。 過去を忘れるために転校した凪は、もう二度と馨と会うことはないと思っていた。 ところが、ひょんなことから再会してしまう。 しかも、久しぶりに会った馨はどこか様子が違っていた。 「今度は、もう離さないから」 「お願いだから、僕にもう近づかないで…」

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです ※Rシーンを追加した加筆修正版をムーンライトノベルズに掲載しています。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

今からレンタルアルファシステムを利用します

夜鳥すぱり
BL
大学2年の鳴水《なるみ》は、ずっと自分がオメガであることを隠して生きてきた。でも、年々つらくなる発情期にもう一人は耐えられない。恋愛対象は男性だし、男のアルファに会ってみたい。誰でも良いから、定期的に安全に話し相手をしてくれる人が欲しい。でもそんな都合のいい人いなくて、考えあぐねた結果たどり着いた、アプリ、レンタルアルファシステム。安全……だと思う、評価も星5で良いし。うん、じゃ、お問い合わせをしてみるか。なるみは、恐る恐るボタンを押すが───。 ◆完結済みです。ありがとうございました。 ◆表紙絵を花々緒さんが描いてくださりました。カッコいい雪夜君と、おどおど鳴水くんです。可愛すぎますね!

いい加減観念して結婚してください

彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話 元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。 2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。 作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。

処理中です...