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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 2 ④
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「え……っと」
「前に、あまり気にしすぎないようにしたって言ってたけど。なかなか難しいでしょ」
にこりと成瀬がほほえむ。やんわりと誘導された会話の帰着に、やっぱり、とただ思った。気恥ずかしさを越えて、どこか安堵するような心地で。
やっぱり、知ってたんだ。
自分が、逃げるように生徒会に昼休みも行っていたことも、それもなんだか気まずくて、めったと来ない場所に避難してきたことも。
以前に相談した「友達」と結局うまくやることができていないことも。
――でも、そうだよな。
自分がこの人にうまく隠し通せるわけも、同じ立場に立つことができるようになるわけもない。そうわかるから、あまり意地を長く張ることもできなかった。
「……その」
「うん」
「相手が悪いわけじゃなくて、俺の問題なんですけど」
「うん」
それで、と話を促してくれる声は、過度に自分に肩入れをする雰囲気はなく、ただフラットに柔らかい。
無意識に机の上で組んだ指先に視線を落として、行人は続けた。精いっぱいなんでもない、世間話のような調子を保とうとしたことが、最後のプライドだったのだと思う。
「あんまり気にしすぎないようにしようと思って、それが相手のためでもあるんじゃないのかなって勝手に思って、どうにかふつうにしようと思って、それで、できてるって思ったんですけど」
取り繕いたくて、はは、と小さく笑う。みっともないことは、本当に自分でもよくよくわかっていた。
「実はぜんぜんだったっていうか、俺ができてるって、うまくいってるって思ってたのは、ぜんぶ向こうが我慢して合わせてくれてたからなんだって、ようやく気づいたっていうか」
「そっか」
「そうなんです」
あっさりとした相槌に救われた気分で、また少し行人は笑った。きゅっと握った指先に力を込めて、続ける。
「それで、……よかれと思ってやったことがぜんぜん実はよくなくて、我慢させて傷つけてたんだって思ったら、なんか、なに言ったらいいのかわかんなくなっちゃって」
「うん」
そっか、と同じ相槌を繰り返してから、難しいよな、と成瀬は言った。
「こんなこと言うのもどうかと思うけど、他人の感情なんて誰にもわからないんじゃないかな。寄り添えてるって自信満々に言うやつもいるけど、あくまでもそいつの想像する寄り添いでしかないんだろうし。……まぁ、たまにはぴったりはまることもあるんだろうけどね」
「えっと……、その」
「うん」
「成瀬さんは、たとえば、高藤の考えてることとかもわからない……ですか」
あまりにもさくっと切り捨ててるようにも聞こえてしまって、思わず行人は問い返した。たぶん、この人の、一番付き合いの長いだろう相手。その名前に、一拍置いて、成瀬が笑う。
「前に、あまり気にしすぎないようにしたって言ってたけど。なかなか難しいでしょ」
にこりと成瀬がほほえむ。やんわりと誘導された会話の帰着に、やっぱり、とただ思った。気恥ずかしさを越えて、どこか安堵するような心地で。
やっぱり、知ってたんだ。
自分が、逃げるように生徒会に昼休みも行っていたことも、それもなんだか気まずくて、めったと来ない場所に避難してきたことも。
以前に相談した「友達」と結局うまくやることができていないことも。
――でも、そうだよな。
自分がこの人にうまく隠し通せるわけも、同じ立場に立つことができるようになるわけもない。そうわかるから、あまり意地を長く張ることもできなかった。
「……その」
「うん」
「相手が悪いわけじゃなくて、俺の問題なんですけど」
「うん」
それで、と話を促してくれる声は、過度に自分に肩入れをする雰囲気はなく、ただフラットに柔らかい。
無意識に机の上で組んだ指先に視線を落として、行人は続けた。精いっぱいなんでもない、世間話のような調子を保とうとしたことが、最後のプライドだったのだと思う。
「あんまり気にしすぎないようにしようと思って、それが相手のためでもあるんじゃないのかなって勝手に思って、どうにかふつうにしようと思って、それで、できてるって思ったんですけど」
取り繕いたくて、はは、と小さく笑う。みっともないことは、本当に自分でもよくよくわかっていた。
「実はぜんぜんだったっていうか、俺ができてるって、うまくいってるって思ってたのは、ぜんぶ向こうが我慢して合わせてくれてたからなんだって、ようやく気づいたっていうか」
「そっか」
「そうなんです」
あっさりとした相槌に救われた気分で、また少し行人は笑った。きゅっと握った指先に力を込めて、続ける。
「それで、……よかれと思ってやったことがぜんぜん実はよくなくて、我慢させて傷つけてたんだって思ったら、なんか、なに言ったらいいのかわかんなくなっちゃって」
「うん」
そっか、と同じ相槌を繰り返してから、難しいよな、と成瀬は言った。
「こんなこと言うのもどうかと思うけど、他人の感情なんて誰にもわからないんじゃないかな。寄り添えてるって自信満々に言うやつもいるけど、あくまでもそいつの想像する寄り添いでしかないんだろうし。……まぁ、たまにはぴったりはまることもあるんだろうけどね」
「えっと……、その」
「うん」
「成瀬さんは、たとえば、高藤の考えてることとかもわからない……ですか」
あまりにもさくっと切り捨ててるようにも聞こえてしまって、思わず行人は問い返した。たぶん、この人の、一番付き合いの長いだろう相手。その名前に、一拍置いて、成瀬が笑う。
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