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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 4 ④
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沈黙に耐え切れず、そそくさと頭を下げて歩き出そうとしたタイミングで、溜息まじりの声が落ちてきた。
「やめろ、それ」
「え?」
喋りかけられるとは思っておらず、驚きの声がもれる。ぱちくりと見上げた行人に、向原がおざなりに言い足した。いっそう嫌そうな雰囲気だったので、察しの悪さを面倒に思われたのかもしれない。
「その、わかりやすく落ち込んだ顔だよ。同情されたいのか?」
「え……っ、と、……いや」
そういうつもりではなかったんですけど、という言葉が喉の奥でつかえる。そんなつもりは本当になかったけれど、そうなのかもしれないと思わざるを得なかったからだ。
昼間に四谷に言われた内容とほとんど同じことを、よほどでなければ自分などに口を出さないだろう人に指摘されたということは、そういうことなのだろう。
――なんか、みっともないな。
どうにかしたいと思ったことも、がんばって他人に頼って打開しようと思って、でも、そのすべてが空回っていることも。そうして、「同情を引きたいような顔」をしているということも。
目指していた自分とは真逆のところに行き着いてしまっているようで、今すぐ逃げ出したいくらい恥ずかしい。じわっと目蓋の奥が熱くなりそうになるを感じ、行人は慌てて笑顔をつくった。もしかすると、これもろくにつくることはできていなかったかもしれないけれど。
「すみません。えっと、……その、苛々させて」
気分の悪いものを見せて、というほうが正しいのかもしれないが、その言葉を選ぶと卑下が過ぎてしまう気がした。
それに、この人、同情を煽ってアルファに媚びるような言動自体が嫌いそうだし。完全に、行人の私見でしかないが、中らずと雖も遠からずだと思っている。せめてという気持ちでどうにか下を向かないでいると、小さく溜息を吐かれてしまった。
「同情されたいのかって言ったんだ。違うなら、人目のあるとこでくらい、なんでもない顔しとけ」
付け込まれるだけだと続いた台詞は、嫌味でもなんでもなく――むしろ察しの悪すぎる人間に向けての忠告のようにも聞こえて、半ば無意識でこくりと頷く。
「あ、……はい」
声に出たあとに、これはこれでものすごくみっともない返事だったな、と行人は思った。慌てて、気をつけます、と頭を下げる。
完全に呆れられたのか、それ以上を言っても意味がないと匙を投げられたのか。理由は定かでなかったものの、予想外の交流はそこで途絶えた。もういっさい興味はないというふうな態度で歩き去って行った背中から視線を外し、そのまま窓のほうを見る。本当になんとなくの行為だった。窓の外にも、とくに気になるものはなにもない。遠くに見える寮を眺めたまま、ぽつりと行人は呟いた。
予想外が続いたせいか、湧きかけた涙はいつのまにかどこかに引っ込んでしまっていた。
「やめろ、それ」
「え?」
喋りかけられるとは思っておらず、驚きの声がもれる。ぱちくりと見上げた行人に、向原がおざなりに言い足した。いっそう嫌そうな雰囲気だったので、察しの悪さを面倒に思われたのかもしれない。
「その、わかりやすく落ち込んだ顔だよ。同情されたいのか?」
「え……っ、と、……いや」
そういうつもりではなかったんですけど、という言葉が喉の奥でつかえる。そんなつもりは本当になかったけれど、そうなのかもしれないと思わざるを得なかったからだ。
昼間に四谷に言われた内容とほとんど同じことを、よほどでなければ自分などに口を出さないだろう人に指摘されたということは、そういうことなのだろう。
――なんか、みっともないな。
どうにかしたいと思ったことも、がんばって他人に頼って打開しようと思って、でも、そのすべてが空回っていることも。そうして、「同情を引きたいような顔」をしているということも。
目指していた自分とは真逆のところに行き着いてしまっているようで、今すぐ逃げ出したいくらい恥ずかしい。じわっと目蓋の奥が熱くなりそうになるを感じ、行人は慌てて笑顔をつくった。もしかすると、これもろくにつくることはできていなかったかもしれないけれど。
「すみません。えっと、……その、苛々させて」
気分の悪いものを見せて、というほうが正しいのかもしれないが、その言葉を選ぶと卑下が過ぎてしまう気がした。
それに、この人、同情を煽ってアルファに媚びるような言動自体が嫌いそうだし。完全に、行人の私見でしかないが、中らずと雖も遠からずだと思っている。せめてという気持ちでどうにか下を向かないでいると、小さく溜息を吐かれてしまった。
「同情されたいのかって言ったんだ。違うなら、人目のあるとこでくらい、なんでもない顔しとけ」
付け込まれるだけだと続いた台詞は、嫌味でもなんでもなく――むしろ察しの悪すぎる人間に向けての忠告のようにも聞こえて、半ば無意識でこくりと頷く。
「あ、……はい」
声に出たあとに、これはこれでものすごくみっともない返事だったな、と行人は思った。慌てて、気をつけます、と頭を下げる。
完全に呆れられたのか、それ以上を言っても意味がないと匙を投げられたのか。理由は定かでなかったものの、予想外の交流はそこで途絶えた。もういっさい興味はないというふうな態度で歩き去って行った背中から視線を外し、そのまま窓のほうを見る。本当になんとなくの行為だった。窓の外にも、とくに気になるものはなにもない。遠くに見える寮を眺めたまま、ぽつりと行人は呟いた。
予想外が続いたせいか、湧きかけた涙はいつのまにかどこかに引っ込んでしまっていた。
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