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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 6 ③
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誰もいないところでひとりでサボってて、なにかあったほうが、俺は嫌だからね。そう、なんでもないふうに続けて、そこでようやく四谷は行人を見た。
「どうするの?」
「どうするって……」
「だから、俺の行き先はわかったでしょ。教室に戻りたかったら戻ったらいいし、生徒会室にでも行きたかったら行けばいいじゃん。榛名にはサボる場所あるでしょ」
なんだか、それは、自分には戻る場所があるだろう、と言われているみたいだった。自分の考えすぎかもしれないけれど。
行人にとって、四谷は嫌いな人間だった。嫌味で、自信があって、その自信を笑われない程度の能力があって、自分と同じように小柄で「かわいい」と評される容姿をしていて、けれど、それを卑下することなく自分のために利用して、自分の立場を確立させている。
たぶん、水城とも、少し似ている。自分が苦手だと感じるタイプ。でも、今はそうじゃない。そういう目につく苦手だけではないところを知って、もちろん、やっぱり相容れないなぁと思うこともあるけれど、それも含めて、友達だと思っている。少なくとも、行人は。
足元に落としそうになった視線を堪え、行人は希望をはっきりと言葉にした。
「俺は、……四谷と話したい」
「そう」
自分にはない、と切り捨てられたなかったことにほっとしたものの、四谷の視線はするりと行人から逸れていった。保健室の扉を見つめたまま、答える。
「じゃあ、一緒に来る? 頼んだら、たぶん、相談室くらい貸してくれると思うけど」
思っていた以上にすんなりと受け入れられた状況に、「え」と行人は目を丸くした。その反応に構うことなく、四谷は慣れた調子で扉を引く。
なんだ、今日は、朝から来たのか、と笑う穏やかな声と、いいでしょ、べつに、と応じる拗ねたような声。四谷が選んでここにいたのだということのわかる雰囲気を、敷居を踏み越えないまま眺める。養護教諭と言葉を交わしていた四谷が、ちらりと廊下に立ち尽くしている自分を見やった。
「ちょっと話したいんだけど、相談室貸してくれない? ――はぁ? いや、喧嘩とかしないから。なんだと思ってるの、俺のこと」
あいつも十分すぎるほど気ぃ強いから、と指を指され、視線の合った養護教諭にぺこりと目礼を返す。行人だって、喧嘩をするつもりはない。……まぁ、自分に思うところがあるのであれば、言葉なんてきつくてもいいからはっきり教えてほしいと思っているけれど。
「ほら、鍵借りたから。行くよ、隣」
「あ、……うん」
やりとりを終え戻ってきた四谷に、以前のような口調で誘われ、慌てて行人は首を縦に振った。保健室のすぐ隣にある相談室の鍵を回し、四谷が中に入る。そのあとに続いて、そっと扉を閉める。
机を挟んで向かい合う椅子があるくらいの、なにもない小さな部屋。奥の椅子を引いた四谷は、鞄を床に置いた。そうして、扉を閉めたところで立ち止まっていた行人に声をかける。
「座れば?」
「……うん」
ぎこちない返事を繰り返して、行人は正面の椅子に腰をかけた。四谷とこんなふうに静かに話すのは、本当にひさしぶりかもしれない。なにを言おう、なにを話そう、なにを聞こう。いろいろと考えていたつもりだったのに、頭の中が真っ白で、行人はぎゅっと膝の上で拳を握った。そっと息を吐き、真正面から四谷を見つめる。
「どうするの?」
「どうするって……」
「だから、俺の行き先はわかったでしょ。教室に戻りたかったら戻ったらいいし、生徒会室にでも行きたかったら行けばいいじゃん。榛名にはサボる場所あるでしょ」
なんだか、それは、自分には戻る場所があるだろう、と言われているみたいだった。自分の考えすぎかもしれないけれど。
行人にとって、四谷は嫌いな人間だった。嫌味で、自信があって、その自信を笑われない程度の能力があって、自分と同じように小柄で「かわいい」と評される容姿をしていて、けれど、それを卑下することなく自分のために利用して、自分の立場を確立させている。
たぶん、水城とも、少し似ている。自分が苦手だと感じるタイプ。でも、今はそうじゃない。そういう目につく苦手だけではないところを知って、もちろん、やっぱり相容れないなぁと思うこともあるけれど、それも含めて、友達だと思っている。少なくとも、行人は。
足元に落としそうになった視線を堪え、行人は希望をはっきりと言葉にした。
「俺は、……四谷と話したい」
「そう」
自分にはない、と切り捨てられたなかったことにほっとしたものの、四谷の視線はするりと行人から逸れていった。保健室の扉を見つめたまま、答える。
「じゃあ、一緒に来る? 頼んだら、たぶん、相談室くらい貸してくれると思うけど」
思っていた以上にすんなりと受け入れられた状況に、「え」と行人は目を丸くした。その反応に構うことなく、四谷は慣れた調子で扉を引く。
なんだ、今日は、朝から来たのか、と笑う穏やかな声と、いいでしょ、べつに、と応じる拗ねたような声。四谷が選んでここにいたのだということのわかる雰囲気を、敷居を踏み越えないまま眺める。養護教諭と言葉を交わしていた四谷が、ちらりと廊下に立ち尽くしている自分を見やった。
「ちょっと話したいんだけど、相談室貸してくれない? ――はぁ? いや、喧嘩とかしないから。なんだと思ってるの、俺のこと」
あいつも十分すぎるほど気ぃ強いから、と指を指され、視線の合った養護教諭にぺこりと目礼を返す。行人だって、喧嘩をするつもりはない。……まぁ、自分に思うところがあるのであれば、言葉なんてきつくてもいいからはっきり教えてほしいと思っているけれど。
「ほら、鍵借りたから。行くよ、隣」
「あ、……うん」
やりとりを終え戻ってきた四谷に、以前のような口調で誘われ、慌てて行人は首を縦に振った。保健室のすぐ隣にある相談室の鍵を回し、四谷が中に入る。そのあとに続いて、そっと扉を閉める。
机を挟んで向かい合う椅子があるくらいの、なにもない小さな部屋。奥の椅子を引いた四谷は、鞄を床に置いた。そうして、扉を閉めたところで立ち止まっていた行人に声をかける。
「座れば?」
「……うん」
ぎこちない返事を繰り返して、行人は正面の椅子に腰をかけた。四谷とこんなふうに静かに話すのは、本当にひさしぶりかもしれない。なにを言おう、なにを話そう、なにを聞こう。いろいろと考えていたつもりだったのに、頭の中が真っ白で、行人はぎゅっと膝の上で拳を握った。そっと息を吐き、真正面から四谷を見つめる。
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