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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 7 ④
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「生徒会については余計な口を出すのはやめておこうと思ってたけど。それだけ」
そこまでぜんぶ放り出さないよ、と笑う横顔は本当にいつもどおりで。ほっと力が抜けるやら、情けないやらで、皓太はもごもごと弁明を試みた。
「べつに、ぜんぶ放り出されたとは思ってないけど。生徒会のこともちゃんとわかってるし」
「うん」
「ただ、ちょっと、ひさしぶりだなと思っただけで」
同じ寮にいるのだから、まったく顔を見ないわけではない。けれど、ふたりで喋ることは随分とひさしぶりだった。
たしかにそうかもな、という穏やかな相槌に、うん、と頷いて、いつごろまでだっただろうな、と皓太は考えていた。
学校でのことや、自分自身のこと。そういった悩みを素直にこの人に相談していたのは。
――この二、三年はしてなかったかもしれないな。
昔の自分は、この人に相談したら、すべてが解決するとそう信じていた。
「さっき、生徒会室で荻原と話してたんだけど」
「ああ、荻原、手伝ってくれてるんだっけ。寮生委員のほうも忙しいだろうに」
「うん、それはすごいありがたいと思ってるんだけど、その、……あんまり、人からの好意にしっかり向き合ってないみたいに言われて」
「ああ」
先ほどと同じ至極あっさりとした反応に、成瀬さんもだって言われてたけどね、との台詞を返す代わりに、皓太は問いかけた。
「成瀬さんは、告白されたとき、しっかり考えて相手に応えてるの?」
言葉にした直後。小学生みたいな物言いをしてしまったと気恥ずかしくなる。けれど、成瀬は笑うことも、揶揄うそぶりも見せなかった。幼いころ、サンタクロースは本当はいないのか、と尋ねたときと似たゆっくりとした調子で、そうだな、と呟く。
あのときの自分は、彼が「いる」と言うのなら、信じると決めていたのだと思う。さすがに、今は、発言すべてを鵜呑みにするつもりはないけれど。
「こんなことを言うと、元も子もない気もするけど。でも、正直、相手によるかな」
「……まぁ、そうだよね」
それはそうだろうと皓太は認めた。そうして、ついでに、誤魔化すことなくまともに答えてくれる気があるのだろうということも。
「ちょっと話は変わるけど、ごめんな」
「え? なにが?」
「いや、皓太のそれ、俺のせいもあるのかもしれないなと思って。昔、言ったろ。まともに取り扱い続けるとしんどくなるから、ある程度は流してもいいって」
そういえば、言われたような。それも随分と昔のことではあるけれど。苦笑ひとつで、そんなことないよ、と否定する。
「たしかに言われたかもしれないけど。それここに入る前の話でしょ。そんな小さいころに言われたことを素直に引きずって、自分でなにも考えてなかったんだとしたら、俺の責任だよ」
「そっか。まぁ、そうだよな」
「そうだよ。……って、なに。そんなにしみじみと」
生ぬるい視線に晒され、皓太は軽く眉を寄せた。どうせ、大人になったなぁ、などと保護者じみたことを考えているのだろうが。たかが二才。されど二才。目線がどれほど近づこうが、まだしばらくはこういう扱いなのだろうなぁと半ば諦めている。
「行人もだけど、皓太もこの一年でしっかりしたなぁと思って」
「……一緒にされたくないんだけど」
「どっちも大事っていう意味では、俺の中では一緒だよ。安心してる」
でも、そうだな、と笑って、成瀬は話を戻した。
「たとえばだけど。そういった俺が大事にしていて、――まぁ、なんだろうな。表面的な部分だけじゃない俺のことも知っている子が、『好き』って言ってくれたとしたら、その子の本気に向き合いたいと思うかな」
そこまでぜんぶ放り出さないよ、と笑う横顔は本当にいつもどおりで。ほっと力が抜けるやら、情けないやらで、皓太はもごもごと弁明を試みた。
「べつに、ぜんぶ放り出されたとは思ってないけど。生徒会のこともちゃんとわかってるし」
「うん」
「ただ、ちょっと、ひさしぶりだなと思っただけで」
同じ寮にいるのだから、まったく顔を見ないわけではない。けれど、ふたりで喋ることは随分とひさしぶりだった。
たしかにそうかもな、という穏やかな相槌に、うん、と頷いて、いつごろまでだっただろうな、と皓太は考えていた。
学校でのことや、自分自身のこと。そういった悩みを素直にこの人に相談していたのは。
――この二、三年はしてなかったかもしれないな。
昔の自分は、この人に相談したら、すべてが解決するとそう信じていた。
「さっき、生徒会室で荻原と話してたんだけど」
「ああ、荻原、手伝ってくれてるんだっけ。寮生委員のほうも忙しいだろうに」
「うん、それはすごいありがたいと思ってるんだけど、その、……あんまり、人からの好意にしっかり向き合ってないみたいに言われて」
「ああ」
先ほどと同じ至極あっさりとした反応に、成瀬さんもだって言われてたけどね、との台詞を返す代わりに、皓太は問いかけた。
「成瀬さんは、告白されたとき、しっかり考えて相手に応えてるの?」
言葉にした直後。小学生みたいな物言いをしてしまったと気恥ずかしくなる。けれど、成瀬は笑うことも、揶揄うそぶりも見せなかった。幼いころ、サンタクロースは本当はいないのか、と尋ねたときと似たゆっくりとした調子で、そうだな、と呟く。
あのときの自分は、彼が「いる」と言うのなら、信じると決めていたのだと思う。さすがに、今は、発言すべてを鵜呑みにするつもりはないけれど。
「こんなことを言うと、元も子もない気もするけど。でも、正直、相手によるかな」
「……まぁ、そうだよね」
それはそうだろうと皓太は認めた。そうして、ついでに、誤魔化すことなくまともに答えてくれる気があるのだろうということも。
「ちょっと話は変わるけど、ごめんな」
「え? なにが?」
「いや、皓太のそれ、俺のせいもあるのかもしれないなと思って。昔、言ったろ。まともに取り扱い続けるとしんどくなるから、ある程度は流してもいいって」
そういえば、言われたような。それも随分と昔のことではあるけれど。苦笑ひとつで、そんなことないよ、と否定する。
「たしかに言われたかもしれないけど。それここに入る前の話でしょ。そんな小さいころに言われたことを素直に引きずって、自分でなにも考えてなかったんだとしたら、俺の責任だよ」
「そっか。まぁ、そうだよな」
「そうだよ。……って、なに。そんなにしみじみと」
生ぬるい視線に晒され、皓太は軽く眉を寄せた。どうせ、大人になったなぁ、などと保護者じみたことを考えているのだろうが。たかが二才。されど二才。目線がどれほど近づこうが、まだしばらくはこういう扱いなのだろうなぁと半ば諦めている。
「行人もだけど、皓太もこの一年でしっかりしたなぁと思って」
「……一緒にされたくないんだけど」
「どっちも大事っていう意味では、俺の中では一緒だよ。安心してる」
でも、そうだな、と笑って、成瀬は話を戻した。
「たとえばだけど。そういった俺が大事にしていて、――まぁ、なんだろうな。表面的な部分だけじゃない俺のことも知っている子が、『好き』って言ってくれたとしたら、その子の本気に向き合いたいと思うかな」
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