パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 7 ⑧

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「榛名に聞いたら、ちゃんと答えてくれたんだ」
「そうだったんだ」
「うん。うれしかったな。嘘吐かないでくれて。――あ、えっと、もちろん、誰かに言うつもりなんてなくて。付き合ってるふりをしたのも状況を考えたらしかたないってわかったし。だから、騙されたとも思ってないんだけど」
「わかってる」

 焦ったように言い募ろうとするのを、苦笑ひとつで遮る。

「わかってるよ、そんなに言わなくても」

 四谷は言いふらすことはしないと断言できるほど、四谷のことを知っているわけじゃない。でも、話しても大丈夫と榛名が判断したのだから、きっと大丈夫なのだろうと思うし、それに――。

「そうじゃなかったら、あんなに悩んでなかったと思うし。あんまり力になれなくてごめん」

 殻に籠っていた四谷のことを長く気にかけていたのは荻原で、しつこいくらい行動をしていたのは榛名だ。自分はと言えば、荻原に乞われて、通り一辺倒の言葉をかけただけだった。

「あ、えっと……」

 きまり悪そうに、四谷の視線が泳ぐ。

「そっか、そうだよね。高藤はもう知ってるか」
「榛名から聞いたわけじゃないし、ぜんぶ知ってるわけじゃないよ。茅野さんが判断した範囲で教えてくれただけ。ほら、一応、今は俺が生徒会長で、同じ寮のことだったから」
「そうだよね」

 同じ相槌を打って、わずかの沈黙のあと。改めてというふうに四谷は口火を切った。

「じゃあ、これも、きっと知ってると思うんだけど」
「うん」
「俺、ずっと高藤のこと好きだったんだ」

 知ってたよね、と続いたそれに、うん、と素直に認める。知っていた。知っていて、面倒に感じていて、もめごとを増やしたくもなかったから、告白されるようなタイミングはつくらないようにしようと思っていた。
 どこかすっきりしたふうに、けれど、隠しきれない緊張をはらんだ表情に、自分はやはり感情に対して不誠実だったのだろうなと悟った。
 自分はそうでないのに感情をぶつけられても面倒なだけで困る、と。そう思っていたけれど、空想のような好きであれ、なんであれ、言葉にして本人にぶつけるということは、あたりまえに勇気のいることだ。

「それで、……その、さっきも言ったけど、榛名と付き合ってるっていうのが嘘だっていうことは知ってるから、それを理由にしないでほしいんだけど」
「うん。わかった」

 今までのことはどうにもならなくとも、せめて今回は誠実に向き合おう。四谷のためにも、荻原や、榛名のためにも。自分に言い聞かせ、皓太は言葉を選んだ。
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