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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 7 ⑦
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「高藤も、お疲れさま。今、帰り?」
「そう。生徒会で」
「そっか、大変だね。榛名は? 食堂にでも行くところだった?」
「……うん、そうだけど。ちょっと休憩しようかなと思って」
「そっか」
どこかぎこちない榛名の態度と裏腹に、四谷は皓太の思う見慣れた調子そのものだった。ほんの少し悩むような間を挟んだあと、まっすぐに榛名を見る。
「ね、榛名。あの約束、今からでもいい?」
「約束?」
「あ、……えっと」
思わず口を挟んだ皓太に、ぱっと榛名の視線が動いた。けれど、すぐ、四谷のほうに戻っていく。
「べつにいいけど。休憩するつもりだったし、飲み物取ってきたら、ここで岡たちと待ってるし」
だから、大丈夫、というぽつぽつとした了承に、ありがと、と四谷は表情を緩めた。じゃあ、と独り言のように呟くなり、榛名はふらふらと歩き去っていく。
どんよりと表現すべきか、そわそわとしていると表現すべきか。階段に消えたところで、頭に浮かんだ両極端な表現に蓋をし、皓太は四谷に意識を戻した。四谷と榛名の約束がなにかは知らないけれど、自分に用事があるのだろうことはわかったからだ。
「なに?」
俺に用事でよかった、と確認をすると、安心したように四谷が頷く。
「そう。高藤と話すとしたらどこがいいかなぁと思って。前に榛名にお願いしてたんだ。部屋、貸してほしいって。ちょっとだけいい? 長くは時間取らないから」
こちらなんて気にしていませんよを体現するように岡と朝比奈は会話を続けているものの、ちらちらと意識が向いている。だが、興味本位に晒されている気分にはならなかった。
四谷を見つめ、俺でよければ、と皓太は飾らずに了承を返した。
「時間取ってくれてありがとう。実は、最悪、『じゃ』で部屋に戻られるかもって覚悟してたんだよね」
寮室で話を切り出した四谷の第一声に、苦笑を返す。はじめに座るかと聞いたのけれど、本当にそんなに時間は取らないからと断られてしまったので、立ったまま向き合う向き合うようなかたちのままだ。
同じ空気を和らげるような調子で、軽口を選ぶ。
「そんなに冷たそうだった?」
「そんなことない、優しいよ。……いや、でも、どうだろ。優しいと思うけど、誰にでも公平だと思ってたっていうほうが正しいのかな。わからないけど」
小さく笑って、四谷は続けた。
「ほら、高藤、苦手な人にでも態度変えないでしょ。だから、ずっと誰にでも優しいんだって思ってて、……というか、そう思いたくて、だから、そう思ってたんだけど」
態度を変えないのは、のちのち自分が面倒になるからで。優しいわけではなく、倣った処世術だった。そういう意味で、公平と評されたほうがたしかにまだ正しいのだろうな、と思う。肯定も否定もせず笑みを刻むと、またひとつ四谷も笑った。
「でも、高藤、榛名にはそうじゃないもんね。昔から」
「あ、いや、……それは」
「高藤、俺、知ってる。本当に榛名と付き合ってるわけじゃないってこと」
だから、付き合ってるから当然、とか、そういう言い訳はいいよ、と。不思議なほどあっさりと四谷が制する。鎌をかけられているのだろうかと疑った時間は短かった。そういう目をしていなかったからだ。
「そう。生徒会で」
「そっか、大変だね。榛名は? 食堂にでも行くところだった?」
「……うん、そうだけど。ちょっと休憩しようかなと思って」
「そっか」
どこかぎこちない榛名の態度と裏腹に、四谷は皓太の思う見慣れた調子そのものだった。ほんの少し悩むような間を挟んだあと、まっすぐに榛名を見る。
「ね、榛名。あの約束、今からでもいい?」
「約束?」
「あ、……えっと」
思わず口を挟んだ皓太に、ぱっと榛名の視線が動いた。けれど、すぐ、四谷のほうに戻っていく。
「べつにいいけど。休憩するつもりだったし、飲み物取ってきたら、ここで岡たちと待ってるし」
だから、大丈夫、というぽつぽつとした了承に、ありがと、と四谷は表情を緩めた。じゃあ、と独り言のように呟くなり、榛名はふらふらと歩き去っていく。
どんよりと表現すべきか、そわそわとしていると表現すべきか。階段に消えたところで、頭に浮かんだ両極端な表現に蓋をし、皓太は四谷に意識を戻した。四谷と榛名の約束がなにかは知らないけれど、自分に用事があるのだろうことはわかったからだ。
「なに?」
俺に用事でよかった、と確認をすると、安心したように四谷が頷く。
「そう。高藤と話すとしたらどこがいいかなぁと思って。前に榛名にお願いしてたんだ。部屋、貸してほしいって。ちょっとだけいい? 長くは時間取らないから」
こちらなんて気にしていませんよを体現するように岡と朝比奈は会話を続けているものの、ちらちらと意識が向いている。だが、興味本位に晒されている気分にはならなかった。
四谷を見つめ、俺でよければ、と皓太は飾らずに了承を返した。
「時間取ってくれてありがとう。実は、最悪、『じゃ』で部屋に戻られるかもって覚悟してたんだよね」
寮室で話を切り出した四谷の第一声に、苦笑を返す。はじめに座るかと聞いたのけれど、本当にそんなに時間は取らないからと断られてしまったので、立ったまま向き合う向き合うようなかたちのままだ。
同じ空気を和らげるような調子で、軽口を選ぶ。
「そんなに冷たそうだった?」
「そんなことない、優しいよ。……いや、でも、どうだろ。優しいと思うけど、誰にでも公平だと思ってたっていうほうが正しいのかな。わからないけど」
小さく笑って、四谷は続けた。
「ほら、高藤、苦手な人にでも態度変えないでしょ。だから、ずっと誰にでも優しいんだって思ってて、……というか、そう思いたくて、だから、そう思ってたんだけど」
態度を変えないのは、のちのち自分が面倒になるからで。優しいわけではなく、倣った処世術だった。そういう意味で、公平と評されたほうがたしかにまだ正しいのだろうな、と思う。肯定も否定もせず笑みを刻むと、またひとつ四谷も笑った。
「でも、高藤、榛名にはそうじゃないもんね。昔から」
「あ、いや、……それは」
「高藤、俺、知ってる。本当に榛名と付き合ってるわけじゃないってこと」
だから、付き合ってるから当然、とか、そういう言い訳はいいよ、と。不思議なほどあっさりと四谷が制する。鎌をかけられているのだろうかと疑った時間は短かった。そういう目をしていなかったからだ。
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