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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅤ 0 ②
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――成瀬さんにとっては、茅野さんとかもそうなんだろうけど、向原先輩もそうなんだろうな、きっと。
以前の自分はそう思うことはできなかっただろうけれど、今はそんなふうに思うこともできる。
「怖い人じゃないって、昔、言ってましたよね。成瀬さん」
「言ったかな?」
問い返した成瀬ははっきりと覚えていないようだった。けれど、そうだろうな、とも思う。自分にとっては彼とはじめてしっかりと会話をした夜のことで、だから、すべてを覚えているけれど、この人にとっては、たぶん、当然の事実で、とりとめもない世間話だったろうから。
「でも、実際、べつに怖くないだろ、あいつ。近寄りがたい雰囲気つくってるだけで、俺よりぜんぜん気も長いよ、本当」
「それ、茅野さんも言ってました」
「だろうな」
くすくすと楽しそうに笑う顔を見つめ、そっと笑みを落とす。怖いだけの人ではないとわかっても、怖くないとはやはり思わない。それは事実だったものの、言葉にするつもりはなかった。
圧倒的なアルファを恐れるのは、オメガの本能だ。それでもなにひとつ怖くないというのであれば、それは最低でも信頼と呼ばねばならないのだろう。
「だから、仲が良いんですか?」
「そうだな。気が短いやつよりは、気が長いやつのほうが楽は楽だけど。それより、行人は? 仲直りしたって言ったわりにこんなところにいるけど。生徒会室、顔出しにくいの?」
「あ、……いや、その」
きれいに話を流された上に、目を逸らしていた部分を聞かれてしまい、「えっと」と行人は口ごもった。なんとなく図書室に足が向いた、というのは、自分に都合の良い理由だとわかっている。
「お節介だとは思うけど、行きづらいからって足を遠のけると、どんどん行きづらくなるよ。喧嘩してるわけじゃないんだろ?」
「それは、はい。してない、です」
「よかった」
自分の返事に、にこりと彼がほほえむ。成瀬の言うことは正しく、行人自身も喧嘩をしているつもりではない。ただ、少し落ち着かない気持ちがどこかにあるというだけで。
……なんか、俺、こんなのばっかだな。
後悔しないようにしようと決めたつもりで、少しは成長したつもりで、でも、実際はきっとほとんどなにも変わっていない。
「大丈夫だよ」
ぐるぐると同じところを巡る行人の内心などすべて承知しているふうに、成瀬は言った。
「行人も、皓太も。少しずつでもちゃんと進んでるから」
以前の自分はそう思うことはできなかっただろうけれど、今はそんなふうに思うこともできる。
「怖い人じゃないって、昔、言ってましたよね。成瀬さん」
「言ったかな?」
問い返した成瀬ははっきりと覚えていないようだった。けれど、そうだろうな、とも思う。自分にとっては彼とはじめてしっかりと会話をした夜のことで、だから、すべてを覚えているけれど、この人にとっては、たぶん、当然の事実で、とりとめもない世間話だったろうから。
「でも、実際、べつに怖くないだろ、あいつ。近寄りがたい雰囲気つくってるだけで、俺よりぜんぜん気も長いよ、本当」
「それ、茅野さんも言ってました」
「だろうな」
くすくすと楽しそうに笑う顔を見つめ、そっと笑みを落とす。怖いだけの人ではないとわかっても、怖くないとはやはり思わない。それは事実だったものの、言葉にするつもりはなかった。
圧倒的なアルファを恐れるのは、オメガの本能だ。それでもなにひとつ怖くないというのであれば、それは最低でも信頼と呼ばねばならないのだろう。
「だから、仲が良いんですか?」
「そうだな。気が短いやつよりは、気が長いやつのほうが楽は楽だけど。それより、行人は? 仲直りしたって言ったわりにこんなところにいるけど。生徒会室、顔出しにくいの?」
「あ、……いや、その」
きれいに話を流された上に、目を逸らしていた部分を聞かれてしまい、「えっと」と行人は口ごもった。なんとなく図書室に足が向いた、というのは、自分に都合の良い理由だとわかっている。
「お節介だとは思うけど、行きづらいからって足を遠のけると、どんどん行きづらくなるよ。喧嘩してるわけじゃないんだろ?」
「それは、はい。してない、です」
「よかった」
自分の返事に、にこりと彼がほほえむ。成瀬の言うことは正しく、行人自身も喧嘩をしているつもりではない。ただ、少し落ち着かない気持ちがどこかにあるというだけで。
……なんか、俺、こんなのばっかだな。
後悔しないようにしようと決めたつもりで、少しは成長したつもりで、でも、実際はきっとほとんどなにも変わっていない。
「大丈夫だよ」
ぐるぐると同じところを巡る行人の内心などすべて承知しているふうに、成瀬は言った。
「行人も、皓太も。少しずつでもちゃんと進んでるから」
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