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袖振り合うも他生の縁
19:南凛太朗 1月18日21時55分 ④
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「だって、俺がいくら口を出しても、凜は自分の選択を変えないでしょ。信頼して、甘えてるんだよ」
勝手なこと言った春風は、取り出したスマートフォンの画面に視線を落としながら喋り続けている。
「まぁ、それはそうとしてさ。俺、実は明日からお仕事で東京なんだけど。凜も来る?」
「なんでだよ」
「なんでって、明日休みだから?」
「休みだけど。明日は一日寝るって決めてたんだよ、俺は」
「それ予定って言う? 考え直してくれてもいいじゃん。まぁ、無理にとは言わないけど。でも、時東くんに会わせてあげられるよ、俺。俺の仕事って、今回、それだから」
仕事、と半ばひとりごちる調子で南は呟いた。
そういえば、そんな話も聞いたのだった。時東の曲作りを頼まれた、と。春風のことだから、とうの昔に完成していたのだろう。含みを多分に持った顔で、春風が南を覗き込む。
「北風春太郎が俺だって知って驚く時東くん見たくない?」
「見たくない」
「えー、なんで。凛がいたらおもしろい顏すると思うんだけどなぁ」
「年下相手に意地の悪いことばっかりしてやるなよ」
いろいろと気の毒になり、南は物を申した。返ってきたのは、なにをいまさらと言わんばかりの呆れ顔だったけれど。
「そっくり凜に返してあげたい台詞だな。いろいろ、ぜーんぶ黙ってるよね」
「それとこれとは話が違うだろ」
「なんで? 俺はそのほうがおもしろいから黙ってたけど、凜はそのほうが自分に都合が良いから黙ってたんだよね。どっちも俺らの勝手なんだから、あの子からしたら一緒じゃない?」
笑顔で突き付けられた正論は、思いのほか胸に刺さった。黙り込んだ南に、またへらりと春風が笑う。
「あれ? ぐうの音も出なかった? 嫌だな、苛めるつもりはなかったんだけど」
「俺も苛められたつもりはねぇよ」
「つもりはないけど、とか付きそうな感じの顔だね、凛ちゃん」
「だから、その呼び方やめろって」
「凛も都合悪くなったら話をすり替えるの、いいかげんにやめたら?」
「……」
「なに? 凛ちゃん。聞こえないんですけど」
春風は笑っている。見慣れた顔で。けれど、もしかすると怒っていたのかもしれない。南は思い至った。いや、――怒ってるというより、拗ねてんな。
遅れて確信する。そうだとすれば、中途半端な自分に対してなのだろうか。
「もし」
踏ん切りをつけるように、南は吐き出した。
「もしだけどな、会うとしたら、俺が連絡するのが筋だろ」
会える手段を自分は持っているのだから。話したいのであれば、そうすべきなのだ。今までずっと「ここに来る限りは」と、時東の意志に任せていたけれど。
自分のほうから伝えることがあるのであれば、そうすべきた。この数日、あるいは、時東とこの店で会ってからの諸々を吐き出す覚悟が付いたのなら。
言い切った南に、うん、と春風は頷いた。あいかわらずの、柔らかな調子で。
「それは、ちょっと凛らしいかな」
勝手なこと言った春風は、取り出したスマートフォンの画面に視線を落としながら喋り続けている。
「まぁ、それはそうとしてさ。俺、実は明日からお仕事で東京なんだけど。凜も来る?」
「なんでだよ」
「なんでって、明日休みだから?」
「休みだけど。明日は一日寝るって決めてたんだよ、俺は」
「それ予定って言う? 考え直してくれてもいいじゃん。まぁ、無理にとは言わないけど。でも、時東くんに会わせてあげられるよ、俺。俺の仕事って、今回、それだから」
仕事、と半ばひとりごちる調子で南は呟いた。
そういえば、そんな話も聞いたのだった。時東の曲作りを頼まれた、と。春風のことだから、とうの昔に完成していたのだろう。含みを多分に持った顔で、春風が南を覗き込む。
「北風春太郎が俺だって知って驚く時東くん見たくない?」
「見たくない」
「えー、なんで。凛がいたらおもしろい顏すると思うんだけどなぁ」
「年下相手に意地の悪いことばっかりしてやるなよ」
いろいろと気の毒になり、南は物を申した。返ってきたのは、なにをいまさらと言わんばかりの呆れ顔だったけれど。
「そっくり凜に返してあげたい台詞だな。いろいろ、ぜーんぶ黙ってるよね」
「それとこれとは話が違うだろ」
「なんで? 俺はそのほうがおもしろいから黙ってたけど、凜はそのほうが自分に都合が良いから黙ってたんだよね。どっちも俺らの勝手なんだから、あの子からしたら一緒じゃない?」
笑顔で突き付けられた正論は、思いのほか胸に刺さった。黙り込んだ南に、またへらりと春風が笑う。
「あれ? ぐうの音も出なかった? 嫌だな、苛めるつもりはなかったんだけど」
「俺も苛められたつもりはねぇよ」
「つもりはないけど、とか付きそうな感じの顔だね、凛ちゃん」
「だから、その呼び方やめろって」
「凛も都合悪くなったら話をすり替えるの、いいかげんにやめたら?」
「……」
「なに? 凛ちゃん。聞こえないんですけど」
春風は笑っている。見慣れた顔で。けれど、もしかすると怒っていたのかもしれない。南は思い至った。いや、――怒ってるというより、拗ねてんな。
遅れて確信する。そうだとすれば、中途半端な自分に対してなのだろうか。
「もし」
踏ん切りをつけるように、南は吐き出した。
「もしだけどな、会うとしたら、俺が連絡するのが筋だろ」
会える手段を自分は持っているのだから。話したいのであれば、そうすべきなのだ。今までずっと「ここに来る限りは」と、時東の意志に任せていたけれど。
自分のほうから伝えることがあるのであれば、そうすべきた。この数日、あるいは、時東とこの店で会ってからの諸々を吐き出す覚悟が付いたのなら。
言い切った南に、うん、と春風は頷いた。あいかわらずの、柔らかな調子で。
「それは、ちょっと凛らしいかな」
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