21 / 28
親愛と深愛(2)
しおりを挟む
「そうだな」
顔を上げ、エリアスは認めた。
「おまえの言うとおり、あのころはまだ心のどこかが子どもだったのだろう。なにもかもが嫌になって逃げてしまった」
「逃げることが悪いわけでもない。休むことも重要だ。自分の心と向き合うことも。あのころのおまえは一心不乱という感じだったからな」
「そうかもしれない」
「ここに引き篭もったころもそうだぞ。勇者殿と暮らしていたころのことが嘘のように、刺々しく戻っていたしな。世捨て人というよりは、手負いの野生動物という感じだったが」
「おい」
「だが、それも、次第に落ち着いたろう。のんびりとした時間を満喫し始めているように見えたから、それはそれでいいかと俺は思っていたんだ」
王都と違って、妙な噂も駆け引きもなにも必要がないからな。そうアルドリックが言う。からかう調子の薄まった穏やかな顔を、エリアスは改めて見つめた。
ゆったりとした時間を素直に享受できるようになったのは、何年も懲りずに足を運んでくれたアルドリックのおかげと知っていた。
「俺にとってもここに来ることは良い息抜きで、なによりも楽しかったからな。だが、勇者殿が戻ってきただろう。そこでまたおまえは変わった」
「そんなにか」
ぎこちなく苦笑ったエリアスに、アルドリックも苦笑を刻んだ。
「なんと言えばいいのだろうな。ありていな言い方をすれば、ひどく生き生きとして見えた。俺がなにを言わずとも宮廷に顔を出す頻度が上がって、ゆるやかに停滞していたおまえの時間が再び動き出したとわかったんだ」
柔らかであたたかな口調のまま、アルドリックは続ける。
「勇者殿は、本当にすごいパワーを持っているな」
「……そうなのだろうな」
太陽のような男と思ったのは、つい少し前の自分だ。すごいパワーとは言い得て妙に違いない、と。エリアスは笑った。なにせ、自分の未熟で叶わなかったものの、はじめて愛したいと願うことのできた相手だったのだから。
「とは言え、だ。勇者殿が元の世界に戻ってからの五年、おまえを見守っていたつもりでいたものだから、大人げないとわかっていても面白くなくてな」
「なにがだ?」
「俺ではなにも変わらなかったおまえが、勇者殿が戻ってきた途端にまた動き出したことが」
ここで「そんなことはない」と言うこともきっと正しくはないのだろう。口を閉ざしたエリアスを見つめたまま、アルドリックは淡々と謝罪を告げた。ハルトと似た、意志の強く、だが、こちらを慮る気遣いに満ちた瞳。
「余計なことを言った。煩わせてすまない」
なぜなのだろうな、とエリアスは思った。ハルトにしろ、アルドリックにしろ、自分を好きだという理由はやはりよくわからない。だが、まっすぐに向けられている感情を、気の迷いという台詞で一蹴してはいけないのだということだけはわかった。
ハルトのような顔をさせたいわけではなく、あれは向き合いたくないという自分の弱さが招いたものだった。静かに友人の名前を呼ぶ。
「アルドリック」
気持ちを知ったときは戸惑った。純粋に驚いたし、好意の上に胡坐をかいていたのではないかと悩みもした。
だが、この十日。頭にあったのは、ほとんどハルトのことだった。それが答えなのだ。アルドリックよりもハルトの存在が大きいということ。ただ、アルドリックのことを友人として大切に思っていることも事実だった。
だから、せめて。変に取り繕うことなく、正直に言おうとエリアスは決めた。
「おまえのことは好きだ。人間として。友人として。だが、それ以上として見ることはできない」
「そうか」
「すまない」
「いいさ、わかっていたことだからな。おまえに友として好いてもらっているというだけで十分だ」
沈黙は流れたが、胃の縁が重くなるような冷たさは生じなかった。
自分の言動が正しかったのかどうか、エリアスにはわからない。自分よりよほど人間のできた男だから、気を遣っているだけかもしれない。そうわかっていても、酷い顔をさせずにすんだことにほっとした。沈黙を破ったのは、アルドリックだった。
「俺は、おまえのことは勇者殿の件で関わり合いになる以前から知っていた」
ぽつりとした、だが、よく聞く世間話の調子。いったいなんの話だと思ったものの、エリアスは続きを待った。そのエリアスを穏やかに見つめ、もちろん、とアルドリックが言い足す。
「宮廷によくある噂のひとつとして知っていたに過ぎないが。魔術師殿の狐の愛児。ビルモス殿に次ぐ成績で魔術師学院を卒業した秀才。……もっと下種な言い方もあったが、こんなところだ。まぁ、ビルモス殿の忠実なお人形というわりには生意気な口を利くと思ったが」
「放っておいてくれ。あのころは俺も若かったんだ」
「なに、俺もそうだ。若かったから、噂でしかおまえを判別していなかった」
そう言われると、昔のアルドリックは、もう少しわかりやすく野心的だっただろうか。思い返そうとしたものの、あまりはっきりとした記憶はなかった。あたりまえだ。アルドリックが一心不乱と表現したとおりで、あのころのエリアスは周囲などなにも見ていなかったのだから。
「そんなふうだったから、召喚されたばかりの勇者殿がおまえを選んだときは驚いた。たしかに見目は良いが、第一印象としてはとっつきにくいし、今よりも冷たい印象が強かったからな」
「放っておいてくれ」
くつくつと笑われ、エリアスは先ほどと同じ台詞を繰り返した。だが、アルドリックに気にした様子はない。どこに着地するのか読めない話がどんどんと先に進んでいく。
「おまえが勇者殿に害を成すことはないと知っていたが、べつの部分で心配は覚えたな。感情の乏しいお人形のもとで、寄る辺のない勇者殿の心が安らぐのか、とね」
たぶん、誰よりもあの当時の自分が思っていたことだ。エリアスに今も否はない。だというのに、アルドリックの青い瞳は柔らかだった。
「自分が勇者殿の護衛に就くことが決まっていたから、余計に。おまけに、召喚された勇者殿が思っていたよりもずっと幼気な子どもだったものでな。俺の庇護欲も動いたんだ」
「俺もそうだ」
素直に認めたエリアスに、アルドリックもあっさりと請け負った。
「そうだな。最初はそうだったんだろう」
最初。では、途中からは庇護欲と映らなくなっていたのだろうか。考えるように黙ったエリアスに、アルドリックは静かに呟いた。
「勇者殿は見る目があったのだろうな」
今度は素直に頷くことはできなかった。
「そうなのだろうか」
ぽつりと問いをこぼしたエリアスに、そうさ、とアルドリックは頷く。自明の理と言わんばかりのあっさりとした調子だった。
「繰り返すようだが、おまえは変わったからな」
「変わった、か」
「ああ、あの二年で。人間がぐっと丸くなって、……俗な言い方をするとすれば、愛を知ったのだろう。それで、それは、勇者殿のおかげだ」
間違いないと断言され、エリアスはうつむいた。アルドリックの声が優しすぎたせいか、目元が潤みそうになった気がしたのだ。
――ハルトがいなくなったときも、涙もなにも出なかったというのに。
心が空っぽに戻ったような感覚があっただけで、やはり自分が誰かを愛することなどできるはずもないのだ、と。そう思い知ったというのに。
「そのおまえに俺は惹かれたんだ。おまえを変えた勇者殿に敵うはずがなかったんだよ」
「アルドリック」
「それだけだ。これも先ほど言ったとおりだが、おまえが気に病むことはなにもない」
顔を上げたエリアスの瞳を見つめ、それと、とアルドリックが言う。
「できれば、これからも変わらず友人でいてくれると俺はうれしい」
顔を上げ、エリアスは認めた。
「おまえの言うとおり、あのころはまだ心のどこかが子どもだったのだろう。なにもかもが嫌になって逃げてしまった」
「逃げることが悪いわけでもない。休むことも重要だ。自分の心と向き合うことも。あのころのおまえは一心不乱という感じだったからな」
「そうかもしれない」
「ここに引き篭もったころもそうだぞ。勇者殿と暮らしていたころのことが嘘のように、刺々しく戻っていたしな。世捨て人というよりは、手負いの野生動物という感じだったが」
「おい」
「だが、それも、次第に落ち着いたろう。のんびりとした時間を満喫し始めているように見えたから、それはそれでいいかと俺は思っていたんだ」
王都と違って、妙な噂も駆け引きもなにも必要がないからな。そうアルドリックが言う。からかう調子の薄まった穏やかな顔を、エリアスは改めて見つめた。
ゆったりとした時間を素直に享受できるようになったのは、何年も懲りずに足を運んでくれたアルドリックのおかげと知っていた。
「俺にとってもここに来ることは良い息抜きで、なによりも楽しかったからな。だが、勇者殿が戻ってきただろう。そこでまたおまえは変わった」
「そんなにか」
ぎこちなく苦笑ったエリアスに、アルドリックも苦笑を刻んだ。
「なんと言えばいいのだろうな。ありていな言い方をすれば、ひどく生き生きとして見えた。俺がなにを言わずとも宮廷に顔を出す頻度が上がって、ゆるやかに停滞していたおまえの時間が再び動き出したとわかったんだ」
柔らかであたたかな口調のまま、アルドリックは続ける。
「勇者殿は、本当にすごいパワーを持っているな」
「……そうなのだろうな」
太陽のような男と思ったのは、つい少し前の自分だ。すごいパワーとは言い得て妙に違いない、と。エリアスは笑った。なにせ、自分の未熟で叶わなかったものの、はじめて愛したいと願うことのできた相手だったのだから。
「とは言え、だ。勇者殿が元の世界に戻ってからの五年、おまえを見守っていたつもりでいたものだから、大人げないとわかっていても面白くなくてな」
「なにがだ?」
「俺ではなにも変わらなかったおまえが、勇者殿が戻ってきた途端にまた動き出したことが」
ここで「そんなことはない」と言うこともきっと正しくはないのだろう。口を閉ざしたエリアスを見つめたまま、アルドリックは淡々と謝罪を告げた。ハルトと似た、意志の強く、だが、こちらを慮る気遣いに満ちた瞳。
「余計なことを言った。煩わせてすまない」
なぜなのだろうな、とエリアスは思った。ハルトにしろ、アルドリックにしろ、自分を好きだという理由はやはりよくわからない。だが、まっすぐに向けられている感情を、気の迷いという台詞で一蹴してはいけないのだということだけはわかった。
ハルトのような顔をさせたいわけではなく、あれは向き合いたくないという自分の弱さが招いたものだった。静かに友人の名前を呼ぶ。
「アルドリック」
気持ちを知ったときは戸惑った。純粋に驚いたし、好意の上に胡坐をかいていたのではないかと悩みもした。
だが、この十日。頭にあったのは、ほとんどハルトのことだった。それが答えなのだ。アルドリックよりもハルトの存在が大きいということ。ただ、アルドリックのことを友人として大切に思っていることも事実だった。
だから、せめて。変に取り繕うことなく、正直に言おうとエリアスは決めた。
「おまえのことは好きだ。人間として。友人として。だが、それ以上として見ることはできない」
「そうか」
「すまない」
「いいさ、わかっていたことだからな。おまえに友として好いてもらっているというだけで十分だ」
沈黙は流れたが、胃の縁が重くなるような冷たさは生じなかった。
自分の言動が正しかったのかどうか、エリアスにはわからない。自分よりよほど人間のできた男だから、気を遣っているだけかもしれない。そうわかっていても、酷い顔をさせずにすんだことにほっとした。沈黙を破ったのは、アルドリックだった。
「俺は、おまえのことは勇者殿の件で関わり合いになる以前から知っていた」
ぽつりとした、だが、よく聞く世間話の調子。いったいなんの話だと思ったものの、エリアスは続きを待った。そのエリアスを穏やかに見つめ、もちろん、とアルドリックが言い足す。
「宮廷によくある噂のひとつとして知っていたに過ぎないが。魔術師殿の狐の愛児。ビルモス殿に次ぐ成績で魔術師学院を卒業した秀才。……もっと下種な言い方もあったが、こんなところだ。まぁ、ビルモス殿の忠実なお人形というわりには生意気な口を利くと思ったが」
「放っておいてくれ。あのころは俺も若かったんだ」
「なに、俺もそうだ。若かったから、噂でしかおまえを判別していなかった」
そう言われると、昔のアルドリックは、もう少しわかりやすく野心的だっただろうか。思い返そうとしたものの、あまりはっきりとした記憶はなかった。あたりまえだ。アルドリックが一心不乱と表現したとおりで、あのころのエリアスは周囲などなにも見ていなかったのだから。
「そんなふうだったから、召喚されたばかりの勇者殿がおまえを選んだときは驚いた。たしかに見目は良いが、第一印象としてはとっつきにくいし、今よりも冷たい印象が強かったからな」
「放っておいてくれ」
くつくつと笑われ、エリアスは先ほどと同じ台詞を繰り返した。だが、アルドリックに気にした様子はない。どこに着地するのか読めない話がどんどんと先に進んでいく。
「おまえが勇者殿に害を成すことはないと知っていたが、べつの部分で心配は覚えたな。感情の乏しいお人形のもとで、寄る辺のない勇者殿の心が安らぐのか、とね」
たぶん、誰よりもあの当時の自分が思っていたことだ。エリアスに今も否はない。だというのに、アルドリックの青い瞳は柔らかだった。
「自分が勇者殿の護衛に就くことが決まっていたから、余計に。おまけに、召喚された勇者殿が思っていたよりもずっと幼気な子どもだったものでな。俺の庇護欲も動いたんだ」
「俺もそうだ」
素直に認めたエリアスに、アルドリックもあっさりと請け負った。
「そうだな。最初はそうだったんだろう」
最初。では、途中からは庇護欲と映らなくなっていたのだろうか。考えるように黙ったエリアスに、アルドリックは静かに呟いた。
「勇者殿は見る目があったのだろうな」
今度は素直に頷くことはできなかった。
「そうなのだろうか」
ぽつりと問いをこぼしたエリアスに、そうさ、とアルドリックは頷く。自明の理と言わんばかりのあっさりとした調子だった。
「繰り返すようだが、おまえは変わったからな」
「変わった、か」
「ああ、あの二年で。人間がぐっと丸くなって、……俗な言い方をするとすれば、愛を知ったのだろう。それで、それは、勇者殿のおかげだ」
間違いないと断言され、エリアスはうつむいた。アルドリックの声が優しすぎたせいか、目元が潤みそうになった気がしたのだ。
――ハルトがいなくなったときも、涙もなにも出なかったというのに。
心が空っぽに戻ったような感覚があっただけで、やはり自分が誰かを愛することなどできるはずもないのだ、と。そう思い知ったというのに。
「そのおまえに俺は惹かれたんだ。おまえを変えた勇者殿に敵うはずがなかったんだよ」
「アルドリック」
「それだけだ。これも先ほど言ったとおりだが、おまえが気に病むことはなにもない」
顔を上げたエリアスの瞳を見つめ、それと、とアルドリックが言う。
「できれば、これからも変わらず友人でいてくれると俺はうれしい」
23
あなたにおすすめの小説
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?
七角@書籍化進行中!
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。
その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー?
十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。
転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。
どんでん返しからの甘々ハピエンです。
冷徹勇猛な竜将アルファは純粋無垢な王子オメガに甘えたいのだ! ~だけど殿下は僕に、癒ししか求めてくれないのかな……~
大波小波
BL
フェリックス・エディン・ラヴィゲールは、ネイトステフ王国の第三王子だ。
端正だが、どこか猛禽類の鋭さを思わせる面立ち。
鋭い長剣を振るう、引き締まった体。
第二性がアルファだからというだけではない、自らを鍛え抜いた武人だった。
彼は『竜将』と呼ばれる称号と共に、内戦に苦しむ隣国へと派遣されていた。
軍閥のクーデターにより内戦の起きた、テミスアーリン王国。
そこでは、国王の第二夫人が亡命の準備を急いでいた。
王は戦闘で命を落とし、彼の正妻である王妃は早々と我が子を連れて逃げている。
仮王として指揮をとる第二夫人の長男は、近隣諸国へ支援を求めて欲しいと、彼女に亡命を勧めた。
仮王の弟である、アルネ・エドゥアルド・クラルは、兄の力になれない歯がゆさを感じていた。
瑞々しい、均整の取れた体。
絹のような栗色の髪に、白い肌。
美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。
第二性はオメガだが、彼は利発で優しい少年だった。
そんなアルネは兄から聞いた、隣国の支援部隊を指揮する『竜将』の名を呟く。
「フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下……」
不思議と、勇気が湧いてくる。
「長い、お名前。まるで、呪文みたい」
その名が、恋の呪文となる日が近いことを、アルネはまだ知らなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる