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第二章 お魚マウント舞踏会
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「イリス! その……よければ俺と舞踏会に行かないか!?」
あれから、ちょくちょく食事を食べにくるようになったアルト。
ご飯の最中、急に切り出されたので驚きですわ。
「舞踏会?? なんでわたしですの??」
エリクサーの代わりにハイポーションをくださったことでいざこざは手打ちとなりましたが、舞踏会に誘い誘われるような間柄になった覚えはありません。
まあ、ハイポーションという高価な代物をいただいてしまったので、その差分を清算するためにも定食屋よろしく食事の提供はしているのですが。
「そ、そのだな。パートナーが必要なんだが、俺も急にエルフリーフから戻ってきたし、見つからなくってな!」
「婚約者がいるのではなくって?」
「そのようなものはいない! 本当にパートナーが見つからなくて困っているんだ、俺は!!」
「パートナー候補も婚約者候補も探そうと思えばすぐ見つかりますし殿下は引く手あま――何をする離してくださいヴェリ殿ォ!!」
ちょくちょくうちにご飯を食べに来るこの三人組。
食事時だというのにわちゃわちゃしているアーロとヴェリを横目にもぐもぐしながら考えていたら、ピーンと来てしまいましたわ。
「その舞踏会って、もしや今月末に行われる帝国中から貴賓を招いて行われる帝国建国記念日の舞踏会のことですの?」
「そうっ、それだ!」
「う~ん……あまり気がすすみませんわね」
ポリポリ、キュウリのぬか漬けを食べながらお答えします。
そう。ぬか床を作ったのです!
だってお米を精米するたびに、ぬかが手に入るんですもの。ぬか床を作らない理由などどこにもありませんわ!!
幾度か失敗しつつも、食塩水の濃度や混ぜる唐辛子の分量、旨味のための乾物たちの塩梅を調節し、なんとか軌道に乗りましたわ。
今では毎日ラルフがぬか床のお世話をしてくれていますの。
毎日美味しいぬか漬けが食べ放題ですわ!
「はあっ。カリカリで、旨味がしみた、このしょっぱいぬか漬けがあれば無限に白米が食べられますわ~」
「誠に。誠に。このぬか漬け、なるものは大変ライスラに合いますね」
「ヴェリ様は話がわかりますわね~。お茶漬けにしても美味しいですわよ~」
「むむっ。字面が既に美味しそうですね……!」
「ヴェリ殿! 殿下が勇気を出してお誘いしているのだから邪魔をするのはおやめいただきたいっ!!」
「はて? 先程アルト様の口上を邪魔しようとしていた方の発言とは思えませんね?」
「このままでは流石に殿下が気の毒でしょう!?」
アルトが気の毒なことになっているらしいのでそちらを見やると、何故か涙目でぷるぷる震えていましたわ。
ご飯が進んでないようですけれど、ぬか漬けが口に合わなかったのかしら? こんなに美味しいのに??
「何故だ!? 女は誰でもああいう催しが好きなものだろう!! 帝国中の貴族の娘が俺に誘われたがって宮中で様々な方法で俺の記憶に残ろうとしているというのに!?」
「それならパートナーはすぐに見つかるんじゃないですの?」
「――という感じなのではないか!? と思っただけだが!? そう! おまえのような人間ならの話だ! すべては俺の妄想だが!?」
「なるほど。確かにわたしの国にアルト様がいらっしゃったら、そんな感じでパートナーの座を巡った争いが起きそうですわね~」
「おまえだって俺のパートナー争いに加われよ!?」
「加わりませんわよ。リーンバルト王国ではわたしにも婚約者がいましたし」
「……婚約者、か」
「まあ。もう婚約破棄されたので自由の身ですが~!」
ちなみに、骨折を治すのにハイポーションは使っていませんわ。
だって骨折ごときにはハイポーションだってもったいなさすぎますもの!
それなりの貴族の家でも早々手に入るようなものではないんですのよ??
魔法薬の作り手は少なく、その材料の供給はエルフが一手に担っているのです。
代わりに前婚約者様にいただいた慰謝料でポーションを買って治しましたわ。
骨折程度ならポーションで十分ですわ。
でも、ポーションとはいえ魔法薬は高価ですから、今月の生活費は結構カツカツなのですわよね。
舞踏会に参加するなんてお金のかかることをやってられるような身分ではもうないのですわ。
「おまえとの婚約を破棄、か。婚約を破棄されることがどれだけ女にとって致命的なことか……リーンバルト王国は出禁にしてやろうか?」
「おやめくださいましアルト様ッ! そんなことをされたらリーンバルト王国が世界中から総スカンを食らいますわ!? そんなことになったらわたしの可愛い妹が、内緒でお夜食をたらふく食べさせたいくらい愛らしいわたしの妹が! どれほど!! 苦労することか!!」
「なるほど。おまえの妹がいるのならやめておこう」
「そうですわ! おかしな冗談はおっしゃらないでくださいませ! びっくりしますわ!」
「悪かった。びっくりさせてしまったな」
神妙な顔で頷くアルト。
まったく、真顔で冗談を言われてもこちらにはわからないんですからやめてほしいですわ。この王子様にはそういうところがおありですわ。
「恐い顔をして恐いことを言われるとわたしの蚤の心臓がピクピクしてしまいますわ。エルフの恐さをもっと自覚してくださいませ」
「おまえの心臓がピクピクに!? わかった!! 気をつけよう!! 死ぬなよ!?」
「死にませんわよ! 好き嫌いせずいっぱい食べて健康的に長生きしてみせますわ!!」
「具体的に何年生きる?」
「ふふん。百年は生きてみせますわ!」
「……それでも、百年か」
「何か言いまして?」
「いや、何も」
まーた恐い顔になりましたわ、このお方。
何を考えているんだかわかりませんけど、エルフの恐い顔って人間にとっては死亡フラグなんだから勘弁して欲しいものですわ。
あれから、ちょくちょく食事を食べにくるようになったアルト。
ご飯の最中、急に切り出されたので驚きですわ。
「舞踏会?? なんでわたしですの??」
エリクサーの代わりにハイポーションをくださったことでいざこざは手打ちとなりましたが、舞踏会に誘い誘われるような間柄になった覚えはありません。
まあ、ハイポーションという高価な代物をいただいてしまったので、その差分を清算するためにも定食屋よろしく食事の提供はしているのですが。
「そ、そのだな。パートナーが必要なんだが、俺も急にエルフリーフから戻ってきたし、見つからなくってな!」
「婚約者がいるのではなくって?」
「そのようなものはいない! 本当にパートナーが見つからなくて困っているんだ、俺は!!」
「パートナー候補も婚約者候補も探そうと思えばすぐ見つかりますし殿下は引く手あま――何をする離してくださいヴェリ殿ォ!!」
ちょくちょくうちにご飯を食べに来るこの三人組。
食事時だというのにわちゃわちゃしているアーロとヴェリを横目にもぐもぐしながら考えていたら、ピーンと来てしまいましたわ。
「その舞踏会って、もしや今月末に行われる帝国中から貴賓を招いて行われる帝国建国記念日の舞踏会のことですの?」
「そうっ、それだ!」
「う~ん……あまり気がすすみませんわね」
ポリポリ、キュウリのぬか漬けを食べながらお答えします。
そう。ぬか床を作ったのです!
だってお米を精米するたびに、ぬかが手に入るんですもの。ぬか床を作らない理由などどこにもありませんわ!!
幾度か失敗しつつも、食塩水の濃度や混ぜる唐辛子の分量、旨味のための乾物たちの塩梅を調節し、なんとか軌道に乗りましたわ。
今では毎日ラルフがぬか床のお世話をしてくれていますの。
毎日美味しいぬか漬けが食べ放題ですわ!
「はあっ。カリカリで、旨味がしみた、このしょっぱいぬか漬けがあれば無限に白米が食べられますわ~」
「誠に。誠に。このぬか漬け、なるものは大変ライスラに合いますね」
「ヴェリ様は話がわかりますわね~。お茶漬けにしても美味しいですわよ~」
「むむっ。字面が既に美味しそうですね……!」
「ヴェリ殿! 殿下が勇気を出してお誘いしているのだから邪魔をするのはおやめいただきたいっ!!」
「はて? 先程アルト様の口上を邪魔しようとしていた方の発言とは思えませんね?」
「このままでは流石に殿下が気の毒でしょう!?」
アルトが気の毒なことになっているらしいのでそちらを見やると、何故か涙目でぷるぷる震えていましたわ。
ご飯が進んでないようですけれど、ぬか漬けが口に合わなかったのかしら? こんなに美味しいのに??
「何故だ!? 女は誰でもああいう催しが好きなものだろう!! 帝国中の貴族の娘が俺に誘われたがって宮中で様々な方法で俺の記憶に残ろうとしているというのに!?」
「それならパートナーはすぐに見つかるんじゃないですの?」
「――という感じなのではないか!? と思っただけだが!? そう! おまえのような人間ならの話だ! すべては俺の妄想だが!?」
「なるほど。確かにわたしの国にアルト様がいらっしゃったら、そんな感じでパートナーの座を巡った争いが起きそうですわね~」
「おまえだって俺のパートナー争いに加われよ!?」
「加わりませんわよ。リーンバルト王国ではわたしにも婚約者がいましたし」
「……婚約者、か」
「まあ。もう婚約破棄されたので自由の身ですが~!」
ちなみに、骨折を治すのにハイポーションは使っていませんわ。
だって骨折ごときにはハイポーションだってもったいなさすぎますもの!
それなりの貴族の家でも早々手に入るようなものではないんですのよ??
魔法薬の作り手は少なく、その材料の供給はエルフが一手に担っているのです。
代わりに前婚約者様にいただいた慰謝料でポーションを買って治しましたわ。
骨折程度ならポーションで十分ですわ。
でも、ポーションとはいえ魔法薬は高価ですから、今月の生活費は結構カツカツなのですわよね。
舞踏会に参加するなんてお金のかかることをやってられるような身分ではもうないのですわ。
「おまえとの婚約を破棄、か。婚約を破棄されることがどれだけ女にとって致命的なことか……リーンバルト王国は出禁にしてやろうか?」
「おやめくださいましアルト様ッ! そんなことをされたらリーンバルト王国が世界中から総スカンを食らいますわ!? そんなことになったらわたしの可愛い妹が、内緒でお夜食をたらふく食べさせたいくらい愛らしいわたしの妹が! どれほど!! 苦労することか!!」
「なるほど。おまえの妹がいるのならやめておこう」
「そうですわ! おかしな冗談はおっしゃらないでくださいませ! びっくりしますわ!」
「悪かった。びっくりさせてしまったな」
神妙な顔で頷くアルト。
まったく、真顔で冗談を言われてもこちらにはわからないんですからやめてほしいですわ。この王子様にはそういうところがおありですわ。
「恐い顔をして恐いことを言われるとわたしの蚤の心臓がピクピクしてしまいますわ。エルフの恐さをもっと自覚してくださいませ」
「おまえの心臓がピクピクに!? わかった!! 気をつけよう!! 死ぬなよ!?」
「死にませんわよ! 好き嫌いせずいっぱい食べて健康的に長生きしてみせますわ!!」
「具体的に何年生きる?」
「ふふん。百年は生きてみせますわ!」
「……それでも、百年か」
「何か言いまして?」
「いや、何も」
まーた恐い顔になりましたわ、このお方。
何を考えているんだかわかりませんけど、エルフの恐い顔って人間にとっては死亡フラグなんだから勘弁して欲しいものですわ。
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