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第二章 お魚マウント舞踏会
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私より先に生まれたというだけで王太子であるヴァルター様の婚約者となったお姉様。
将来の王妃の座を約束されていた、目障りなお姉様が遂に消えてくれたわ。
つまりは私の勝ちってこと。
……けれど、なんだか不安が消えてくれないのよね。
お姉様はリーンバルト王国からも追放され、すごすご帝都の片隅に引っ込んで、しょんぼり市井で暮らしているというのに、おかしな話だわ。
「どうしたんだい、リリー。溜め息をついて」
「ヴァルター様、私、なんだか不安で……」
「幸せすぎると不安になることがある。僕もそうだよ。君と婚約できたことが幸せすぎて不安なんだ。これが夢だったらどうしようと思うことがある」
そう言いながら、ヴァルター様が私の肩を抱き寄せてくれた。
王宮の庭園で寄り添う私とヴァルター様。
夢にまで見た状況だわ。
お姉様もこうしてヴァルター様と寄り添ったことがあるのかしらと思うと悔しくなるけれど、きっと私の方が華奢で可愛いから、もっとお似合いに見えるはずだわ。
「私もヴァルター様と同じ気持ちです」
そうなのね、私は幸せすぎて不安なのね。
だから毎晩悪夢を見るんだわ。
私への嫉妬心で狂ったお姉様に虐められる、恐ろしい夢。
「帝国の舞踏会で、君こそが僕の真実の婚約者であることを発表するよ、リリー。そうすれば君はリーンバルト王国の次期王妃だと誰もが認識することになる。唯一心配なことがあるとすれば、君の美しさに目の眩んだエルフに君を奪われてしまわないかということだ」
「たとえエルフに見初められようとも、私の気持ちは変わりませんわ! 小さい頃からずっとヴァルター様をお慕いしていたんですもの!」
「ありがとう、リリー。僕も、初めて出会ったのが君であればと、何度思ったか――」
ヴァルター様の唇を、つい指で塞いでしまったわ。
無礼だと怒られるかもしれないと思ったけれど、我慢できなかったの。
「それは言わないでくださいませ。ヴァルター様と出会い、こうして結ばれただけでリリーは幸せです。苦難の道のりではありましたけれど、それを乗りこえたからこそ強い絆で結ばれているのだと信じたいですわ」
「ああ、そうだね。きっと君の言う通りだ、リリー。僕らは艱難辛苦を乗り越えたからこそ、固い絆で離れがたく結ばれることになったんだね」
これから始まる私たちの素晴らしい宝石のような日々に瑕疵があっただなんて思いたくないからヴァルター様の言葉を遮ったけれど、嬉しくないわけではなかったわ。
お姉様との出会いはヴァルター様にとっては傷なんですって。
なかったことにしてしまいたいんですって!
ぷぷぷ。ざまあないですね。
お姉様はいつも偉そうだったわ。
年齢は二歳しか変わらないのに、いつもご自分が正しいと言わんばかりの態度で振る舞うからイライラして仕方なかった。
偉そう、というか、自分が納得できなければ国是さえも否定する頭のおかしいところがおありだった。
お姉様の傲慢な態度があまりに自然なので、ついつい流されてしまう人もいたから本当に恐かったの。
あのままお姉様を好き勝手させていたら、リーンバルト王国はめちゃくちゃになっていたに違いないわ。
でも、そのせいで国外追放までされてしまいましたね?
つまり、お姉様が全部間違っていたということですよ!
直接会って言ってやりたいわ。でも、ダメね。
お姉様は公爵家から追い出され、国外追放された哀れな人。
リーンバルト王国の次期王妃である私の人生にはもはや関係のない人だもの。
「私、ヴァルター様と一緒にいられて幸せですわ」
「僕もだよ。リリー」
何より腹立たしかったのは、素敵なヴァルター様の婚約者という地位にありながら、少しも幸せそうではなかったこと。
だからお姉様、私を恨んだりするのは筋違いですよ?
全部が全部、お姉様の身から出た錆なんですもの!
ああでも、この私の最高に幸福な姿をお姉様に見せつけてやりたい!
帝都に着いたら、馬車の御者に命じて、お姉様が暮らしているというあばら家の前を通らせればいいかしら。
ヴァルター様の馬車に乗せてもらう予定だから、ヴァルター様の了解を得ないといけないわね。
お姉様が心配だからお顔をひと目拝見したい、なんて言うのはどうかしら?
ヴァルター様は私を心優しい妹だと思ってくれるでしょうね。
落ちぶれたお姉様を見たら、ヴァルター様はますます私と一緒になれてよかったと思ってくださるに違いないわ!
将来の王妃の座を約束されていた、目障りなお姉様が遂に消えてくれたわ。
つまりは私の勝ちってこと。
……けれど、なんだか不安が消えてくれないのよね。
お姉様はリーンバルト王国からも追放され、すごすご帝都の片隅に引っ込んで、しょんぼり市井で暮らしているというのに、おかしな話だわ。
「どうしたんだい、リリー。溜め息をついて」
「ヴァルター様、私、なんだか不安で……」
「幸せすぎると不安になることがある。僕もそうだよ。君と婚約できたことが幸せすぎて不安なんだ。これが夢だったらどうしようと思うことがある」
そう言いながら、ヴァルター様が私の肩を抱き寄せてくれた。
王宮の庭園で寄り添う私とヴァルター様。
夢にまで見た状況だわ。
お姉様もこうしてヴァルター様と寄り添ったことがあるのかしらと思うと悔しくなるけれど、きっと私の方が華奢で可愛いから、もっとお似合いに見えるはずだわ。
「私もヴァルター様と同じ気持ちです」
そうなのね、私は幸せすぎて不安なのね。
だから毎晩悪夢を見るんだわ。
私への嫉妬心で狂ったお姉様に虐められる、恐ろしい夢。
「帝国の舞踏会で、君こそが僕の真実の婚約者であることを発表するよ、リリー。そうすれば君はリーンバルト王国の次期王妃だと誰もが認識することになる。唯一心配なことがあるとすれば、君の美しさに目の眩んだエルフに君を奪われてしまわないかということだ」
「たとえエルフに見初められようとも、私の気持ちは変わりませんわ! 小さい頃からずっとヴァルター様をお慕いしていたんですもの!」
「ありがとう、リリー。僕も、初めて出会ったのが君であればと、何度思ったか――」
ヴァルター様の唇を、つい指で塞いでしまったわ。
無礼だと怒られるかもしれないと思ったけれど、我慢できなかったの。
「それは言わないでくださいませ。ヴァルター様と出会い、こうして結ばれただけでリリーは幸せです。苦難の道のりではありましたけれど、それを乗りこえたからこそ強い絆で結ばれているのだと信じたいですわ」
「ああ、そうだね。きっと君の言う通りだ、リリー。僕らは艱難辛苦を乗り越えたからこそ、固い絆で離れがたく結ばれることになったんだね」
これから始まる私たちの素晴らしい宝石のような日々に瑕疵があっただなんて思いたくないからヴァルター様の言葉を遮ったけれど、嬉しくないわけではなかったわ。
お姉様との出会いはヴァルター様にとっては傷なんですって。
なかったことにしてしまいたいんですって!
ぷぷぷ。ざまあないですね。
お姉様はいつも偉そうだったわ。
年齢は二歳しか変わらないのに、いつもご自分が正しいと言わんばかりの態度で振る舞うからイライラして仕方なかった。
偉そう、というか、自分が納得できなければ国是さえも否定する頭のおかしいところがおありだった。
お姉様の傲慢な態度があまりに自然なので、ついつい流されてしまう人もいたから本当に恐かったの。
あのままお姉様を好き勝手させていたら、リーンバルト王国はめちゃくちゃになっていたに違いないわ。
でも、そのせいで国外追放までされてしまいましたね?
つまり、お姉様が全部間違っていたということですよ!
直接会って言ってやりたいわ。でも、ダメね。
お姉様は公爵家から追い出され、国外追放された哀れな人。
リーンバルト王国の次期王妃である私の人生にはもはや関係のない人だもの。
「私、ヴァルター様と一緒にいられて幸せですわ」
「僕もだよ。リリー」
何より腹立たしかったのは、素敵なヴァルター様の婚約者という地位にありながら、少しも幸せそうではなかったこと。
だからお姉様、私を恨んだりするのは筋違いですよ?
全部が全部、お姉様の身から出た錆なんですもの!
ああでも、この私の最高に幸福な姿をお姉様に見せつけてやりたい!
帝都に着いたら、馬車の御者に命じて、お姉様が暮らしているというあばら家の前を通らせればいいかしら。
ヴァルター様の馬車に乗せてもらう予定だから、ヴァルター様の了解を得ないといけないわね。
お姉様が心配だからお顔をひと目拝見したい、なんて言うのはどうかしら?
ヴァルター様は私を心優しい妹だと思ってくれるでしょうね。
落ちぶれたお姉様を見たら、ヴァルター様はますます私と一緒になれてよかったと思ってくださるに違いないわ!
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