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第二章 お魚マウント舞踏会
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「それではイリス、俺ともう一度ダンスを……!」
「いえ。わたしそろそろ行かねばならないんですの。わたしの魂がかかっていると言っても過言ではないんですの」
「魂が!? 俺も行こう!」
「え? ですが他のご令嬢方がアルト様の次のパートナーの座を虎視眈々と狙っているご様子ですが……」
「俺のパートナーはおまえだけだ。存分にドヤ顔をするといい」
「ドヤァ!」
嫉妬の眼差しが心地良いですわ。
後が恐い気もしますが、一時の快楽のためなら後のことはうっちゃるのがわたしのスタイルですわ!
「こちらですの! 見てくださいませ! この新鮮なお刺身を! 何より共に用意されたこのお醤油を!!」
「生の魚……? この黒いものはなんだ?」
アルトが担当者の方を見ましたわ。
エルフの真顔だから恐いのでしょう、担当者の方がビクビクしていますわ。
「イスト王国のサシミと豆油でございます、アルト殿下……!」
「お米に合うこと間違いなしなんですの! 最高ですわ! この世のすべてがこのテーブルにありますわ!!」
「オコメに合うということはつまり、おまえはこれが欲しいんだな?」
「はいですの!! 喉から手が出るほど!! あとはお味噌も欲しいですわ!! この方の国に必ずあるはずですのッッ!!」
アルトは一つ頷くと、言いましたわ。
「では、おまえの国との交易に関して関税を全撤廃するので、帝都中で販売するように」
「ハヒェッ!? アッ、ありがとうございます!? 殿下!!」
「感謝するのなら彼女にするといい。俺は彼女の願いを叶えただけだからな」
「ありがとうございます! 姫君!」
「わたしは姫君でもなんでもありませんわよ! でも、よかったですわねイストの方! ヒャッフウですわね! アルト様は最高ですわ!! 大好きですわッ!!」
「ダッ!? ――エルフ生に悔いなし」
「殿下ァ―ッ!!」
アルトがフラフラしているとアーロが駆け寄ってきましたわ。圧倒的に保護者ですわ。
ヴェリは既にこちらのテーブルに来てお醤油を賞味していますわ。
そして、ピーンと来た顔をしていますわ!
あなたならわかりますわね? この味がどれほどお米に合うか!!
「しかし、生の魚は流石に……」
「ヴェリ様までそんなことを! 美味しいですわよ! 生の魚! 新鮮なら問題ありませんわ。ん~っ! お米が欲しくなる味ですわ~!!」
「危なくないのか? イリス」
「危なかったらこんなところに置いていないと思いますわよ。ほら、アルト様もあーん」
わたしたちはイチャイチャカップルを演じているところなんですもの。
これくらいはしてもいいでしょう?
ほら、先程近くで生の魚を野蛮だとおっしゃっていた方々に見せつけてやりたいんですから、アルト様も食べてくださいませ!!
エルフの王子が食べたとなれば、あっという間にこの国にお刺身文化が定着しますわ!!
「これは、間接、キ――!?」
「あ、わたしが口を付けたのがお嫌なら匙を取り替えて――」
「問題ない! 待って替えるな! いただくッ」
「あっ」
ぱくり。お醤油をつけた青背魚のお刺身をアルトが一口で食べましたわ。
「うっ……」
「お口に合わないということはないと思うのですけれど……」
でも、日本人でも生の魚がどうしても食べられないという方もいますわ。
もしかしたら本当にダメだったりするのかもしれないですわ。
その時には謝ることとしましょう。アルトならきっと許してくれますわ。友ですもの!
「美味い……ッ! こんなに美味いものを食べたことは、ない……ッ!!」
まさかの感涙が来ましたわ。
アルトが号泣しています。前世ぶりにお刺身を食べたわたしだってここまで感情が高ぶりはしませんでしたわ。
「アルト様、本当にお魚とお醤油を気に入ってくれたんですわね……!」
「いやっ、殿下はあなたに食べさせてもらったから美味しく感じているだけかと……!」
「いえいえアーロ殿。本当に美味しいですよ。このオショーユがなんとも言えず魚の旨味を引き立てているようです。間違いなくライスラに合いますね。アーロ殿もいかがです?」
「ヴェリ殿はさっさと食べて毒味をしておいてくださいよ! 殿下に毒味をさせないでください!!」
「それは失敬。まさかあーんが来るとは夢にも思わず。もぐもぐ」
みんなが美味しそうにお魚を食べていますわ。わたしももっと食べたくなってしまいますわ。
ひょいぱくですわ。一度食べ始めたらもう止まりませんわ!
「ひぃっ! 俺が口をつけた匙がイリスの口に……!!」
「殿下がお幸せなら、アーロはもう何も申しません……ッ」
「とかいって、事あるごとに口を出す未来が見えますがねえ」
「ヴェリ殿!! そんな未来が来ないことを切に願っているのですからおやめいただきたいッ!!」
和気藹々とお刺身を嗜んでいるうちに、人が集まってきましたわ。
みんなが食べたそうにこちらを見ていますわ。ですが遅かったですわね。
このお皿のお魚は、全部わたしたちがいただきますわーッ!!
「いえ。わたしそろそろ行かねばならないんですの。わたしの魂がかかっていると言っても過言ではないんですの」
「魂が!? 俺も行こう!」
「え? ですが他のご令嬢方がアルト様の次のパートナーの座を虎視眈々と狙っているご様子ですが……」
「俺のパートナーはおまえだけだ。存分にドヤ顔をするといい」
「ドヤァ!」
嫉妬の眼差しが心地良いですわ。
後が恐い気もしますが、一時の快楽のためなら後のことはうっちゃるのがわたしのスタイルですわ!
「こちらですの! 見てくださいませ! この新鮮なお刺身を! 何より共に用意されたこのお醤油を!!」
「生の魚……? この黒いものはなんだ?」
アルトが担当者の方を見ましたわ。
エルフの真顔だから恐いのでしょう、担当者の方がビクビクしていますわ。
「イスト王国のサシミと豆油でございます、アルト殿下……!」
「お米に合うこと間違いなしなんですの! 最高ですわ! この世のすべてがこのテーブルにありますわ!!」
「オコメに合うということはつまり、おまえはこれが欲しいんだな?」
「はいですの!! 喉から手が出るほど!! あとはお味噌も欲しいですわ!! この方の国に必ずあるはずですのッッ!!」
アルトは一つ頷くと、言いましたわ。
「では、おまえの国との交易に関して関税を全撤廃するので、帝都中で販売するように」
「ハヒェッ!? アッ、ありがとうございます!? 殿下!!」
「感謝するのなら彼女にするといい。俺は彼女の願いを叶えただけだからな」
「ありがとうございます! 姫君!」
「わたしは姫君でもなんでもありませんわよ! でも、よかったですわねイストの方! ヒャッフウですわね! アルト様は最高ですわ!! 大好きですわッ!!」
「ダッ!? ――エルフ生に悔いなし」
「殿下ァ―ッ!!」
アルトがフラフラしているとアーロが駆け寄ってきましたわ。圧倒的に保護者ですわ。
ヴェリは既にこちらのテーブルに来てお醤油を賞味していますわ。
そして、ピーンと来た顔をしていますわ!
あなたならわかりますわね? この味がどれほどお米に合うか!!
「しかし、生の魚は流石に……」
「ヴェリ様までそんなことを! 美味しいですわよ! 生の魚! 新鮮なら問題ありませんわ。ん~っ! お米が欲しくなる味ですわ~!!」
「危なくないのか? イリス」
「危なかったらこんなところに置いていないと思いますわよ。ほら、アルト様もあーん」
わたしたちはイチャイチャカップルを演じているところなんですもの。
これくらいはしてもいいでしょう?
ほら、先程近くで生の魚を野蛮だとおっしゃっていた方々に見せつけてやりたいんですから、アルト様も食べてくださいませ!!
エルフの王子が食べたとなれば、あっという間にこの国にお刺身文化が定着しますわ!!
「これは、間接、キ――!?」
「あ、わたしが口を付けたのがお嫌なら匙を取り替えて――」
「問題ない! 待って替えるな! いただくッ」
「あっ」
ぱくり。お醤油をつけた青背魚のお刺身をアルトが一口で食べましたわ。
「うっ……」
「お口に合わないということはないと思うのですけれど……」
でも、日本人でも生の魚がどうしても食べられないという方もいますわ。
もしかしたら本当にダメだったりするのかもしれないですわ。
その時には謝ることとしましょう。アルトならきっと許してくれますわ。友ですもの!
「美味い……ッ! こんなに美味いものを食べたことは、ない……ッ!!」
まさかの感涙が来ましたわ。
アルトが号泣しています。前世ぶりにお刺身を食べたわたしだってここまで感情が高ぶりはしませんでしたわ。
「アルト様、本当にお魚とお醤油を気に入ってくれたんですわね……!」
「いやっ、殿下はあなたに食べさせてもらったから美味しく感じているだけかと……!」
「いえいえアーロ殿。本当に美味しいですよ。このオショーユがなんとも言えず魚の旨味を引き立てているようです。間違いなくライスラに合いますね。アーロ殿もいかがです?」
「ヴェリ殿はさっさと食べて毒味をしておいてくださいよ! 殿下に毒味をさせないでください!!」
「それは失敬。まさかあーんが来るとは夢にも思わず。もぐもぐ」
みんなが美味しそうにお魚を食べていますわ。わたしももっと食べたくなってしまいますわ。
ひょいぱくですわ。一度食べ始めたらもう止まりませんわ!
「ひぃっ! 俺が口をつけた匙がイリスの口に……!!」
「殿下がお幸せなら、アーロはもう何も申しません……ッ」
「とかいって、事あるごとに口を出す未来が見えますがねえ」
「ヴェリ殿!! そんな未来が来ないことを切に願っているのですからおやめいただきたいッ!!」
和気藹々とお刺身を嗜んでいるうちに、人が集まってきましたわ。
みんなが食べたそうにこちらを見ていますわ。ですが遅かったですわね。
このお皿のお魚は、全部わたしたちがいただきますわーッ!!
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