悪役令嬢は我が道を進みます

春野いろ

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お嬢様は占いを信じます

ストーリー1

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「さぁ、わたくしの前に這いつくばりなさい」

 甲高い強気な笑い声とともに戦いの最前線で兵士達を次々と倒していく女性がいる。

 彼女の名前は『チエリー』。魔界の頂点とも言える闇皇帝の一人娘のお嬢様なのだが、見ての通りめっちゃ強い。長い髪をツインテールにして見た目は守りたくなるような可愛らしさがあるものの、自分に歯向かう者は親だろうと容赦しない。

 そんな令嬢は現在、魔界とは別の平和感が溢れる地の世界で暴れ回っている最中だ。もちろん目的があってこの地の世界へやって来たのだが、何か気に入らない事があったのかご立腹モードだ。

「お嬢様、そろそろ魔界へ帰りましょう」

 暴れ回っているチエリーの隣に眼鏡をかけ執事の格好をした男性がスッと並び話しかけた。

「執事、何言ってんの。まだ私の気が済まないわ」

 チエリーは戦い慣れした様子で笑みを浮かべ、指先から青黒く光る魔術をガンガン仕掛ける。

「しかし、こんなに派手に暴れたらこの地の世界との友好な関係が壊れてしまいます」

 どうやら執事はチエリーの暴走を止めようとしているみたいだ。

 100年程前は地の世界VS魔の世界で常に戦っていたらしいが、時が経つにつれ「大体我々はなぜ争っているのか?」と議論し合うようになり、その結果「戦いは無意味である」となり、そこから二つの世界の友好的な関係が生まれ、今では簡単に地の世界と魔界の行き来ができるようになっていた。

「わたくしの邪魔をする人間が住む世界なんて無くなってしまえばいいわ」

「そもそも何故お嬢様はここで暴れているのですか?今日の予定に地の世界への訪問、ましては戦闘などなかったはずですが……」

 話をしながらもチエリーの手は緩まない。自分に歯向かってくる者全てに攻撃を仕掛ける。執事もまた、兵士の攻撃を華麗に避けながらチエリーと話を続けた。

「今日の魔界占いでわたくしのラッキーフードがサンドウィッチだったの。ハムと卵の入ってるやつよ。だからわたくしがわざわざ魔界から買いに来たのに、そこの店主が売り切れたってかすのよ。腹が立つじゃない」

「でしたら私がサンドウィッチをお作りしますから、魔界へ帰りましょう」

 それを聞いたチエリーの攻撃の手がピタッと止まり、勢いよく隣にいる執事に人差し指を向け全力で言葉を発する。

「馬鹿ね、卵はこの地に生息する鶏の卵じゃないとダメなの。魔界のゴケゴコ(魔界に生息する鶏のような生物)の卵では話にならないわ。それにわたくしはそこの店のサンドウィッチが食べたいの」

「それは仕方がありませんね。私が何とかしますから、少しの間大人しくしていて下さい」

 上手くチエリーをなだめた執事は、恐らくチエリーが暴れているので仕方なく出動したであろう兵士達の元へ向かう。
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