悪役令嬢は我が道を進みます

春野いろ

文字の大きさ
6 / 8
お嬢様は本気でお見合いに挑みます

ストーリー6

しおりを挟む
「これはエリザ嬢、今日はいかがなされました?」

「いえ、父が国王様にお会いするというので、わたくしもご一緒しました。王子に挨拶をと思い廊下を歩いてましたら、庭園にお姿があられましたので声をおかけしたのですが……お連れ様がいらしたのですね。失礼致しました。それではまた」

 エリザと呼ばれる女性は申し訳なさそうに深々と頭を下げ非礼を詫びると、足早に庭園から出て行った。

「よろしかったのですか?」

「エリザ嬢とはいつでも会えますから大丈夫です。それよりそろそろ部屋に戻りましょうか」

 王子はチエリーに合わせてゆっくりと歩き部屋に戻ろうとした……が、何やら周りが騒がしい。チエリー達は兵士が慌ただしく廊下を走るのを止めて騒ぎの原因を聞き出した。

「じ、実は城の近くで魔界の者が暴れていまして……」

 兵士の話を聞くとどうやらこの近くに魔界の者が暴れていて、さっき会ったエリザも騒ぎに巻き込まれているらしい。

って以前にも魔界の者がこちらの世界でご迷惑を?」

 チエリーは気になって王子に尋ねる。

「実は少し前にも同じような事がありまして、その時は魔術を使うやたら強い魔界の女性だったみたいですけど、今回も同じ女性かもしれませんね」

 話を聞いたチエリーはピシッと固まった。間違いなくその女性はチエリーの事だからだ。サンドウィッチ騒動の時の騒ぎの事を言っているのだろう。影に隠れている執事に視線を送ると、執事は気まずそうにチエリーから視線を逸らす。

「き、きっと違う者だと思いますわ。そうだ、わたくし達もエリザ様?でしたっけ。助けに行きましょう」

「チエリー嬢は何と勇敢な人なんだ。そうですね、助けに行きましょう」

 チエリーは勇敢な人と褒められているが、多分暴れているのは前と違う人だと濡れ衣をはらしに行くのだろう。

 チエリー達(執事を含む)は急いで現場へと向かい、暴れている魔界の者と対面する。そこに居たのは、もちろん魔術を使うやたら強い女性ではなく、人型ではない獣型の魔獣と呼ばれる巨大な者がいた。

「ほら、今回暴れているのは魔界の女性じゃなくて魔獣みたいですね」

 ほら前回と違うでしょ?と言わんばかりに魔獣を指差し違いを強調するチエリーだけど、王子にはチエリーの声は耳に入らず巨大な魔獣を前に放心状態となっている。

「エリザ嬢」

 巨大な魔獣の近くに怖くて腰を抜かしているエリザがいる。それに気づいた王子は彼女に声をかけるが恐怖で足が動かない。

 兵士達が大勢で魔獣に攻撃を仕掛けるがそれも無意味で、魔獣の一撃で兵士達は皆吹き飛ばされてしまった。

 泣きながら助けを求めるように王子を見つめるエリザだけど、肝心の王子は足を震えさせたまま後退りしてしまう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

答えられません、国家機密ですから

ととせ
恋愛
フェルディ男爵は「国家機密」を継承する特別な家だ。その後継であるジェシカは、伯爵邸のガゼボで令息セイルと向き合っていた。彼はジェシカを愛してると言うが、本当に欲しているのは「国家機密」であるのは明白。全てに疲れ果てていたジェシカは、一つの決断を彼に迫る。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

甘そうな話は甘くない

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
「君には失望したよ。ミレイ傷つけるなんて酷いことを! 婚約解消の通知は君の両親にさせて貰うから、もう会うこともないだろうな!」 言い捨てるような突然の婚約解消に、困惑しかないアマリリス・クライド公爵令嬢。 「ミレイ様とは、どなたのことでしょうか? 私(わたくし)には分かりかねますわ」 「とぼけるのも程ほどにしろっ。まったくこれだから気位の高い女は好かんのだ」 先程から散々不満を並べ立てるのが、アマリリスの婚約者のデバン・クラッチ侯爵令息だ。煌めく碧眼と艶々の長い金髪を腰まで伸ばした長身の全身筋肉。 彼の家門は武に長けた者が多く輩出され、彼もそれに漏れないのだが脳筋過ぎた。 だけど顔は普通。 10人に1人くらいは見かける顔である。 そして自分とは真逆の、大人しくか弱い女性が好みなのだ。 前述のアマリリス・クライド公爵令嬢は猫目で菫色、銀糸のサラサラ髪を持つ美しい令嬢だ。祖母似の容姿の為、特に父方の祖父母に溺愛されている。 そんな彼女は言葉が通じない婚約者に、些かの疲労感を覚えた。 「ミレイ様のことは覚えがないのですが、お話は両親に伝えますわ。それでは」 彼女(アマリリス)が淑女の礼の最中に、それを見終えることなく歩き出したデバンの足取りは軽やかだった。 (漸くだ。あいつの有責で、やっと婚約解消が出来る。こちらに非がなければ、父上も同意するだろう) この婚約はデバン・クラッチの父親、グラナス・クラッチ侯爵からの申し込みであった。クライド公爵家はアマリリスの兄が継ぐので、侯爵家を継ぐデバンは嫁入り先として丁度良いと整ったものだった。  カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています。

それは思い出せない思い出

あんど もあ
ファンタジー
俺には、食べた事の無いケーキの記憶がある。 丸くて白くて赤いのが載ってて、切ると三角になる、甘いケーキ。自分であのケーキを作れるようになろうとケーキ屋で働くことにした俺は、無意識に周りの人を幸せにしていく。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】悪役令嬢は婚約破棄されたら自由になりました

きゅちゃん
ファンタジー
王子に婚約破棄されたセラフィーナは、前世の記憶を取り戻し、自分がゲーム世界の悪役令嬢になっていると気づく。破滅を避けるため辺境領地へ帰還すると、そこで待ち受けるのは財政難と魔物の脅威...。高純度の魔石を発見したセラフィーナは、商売で領地を立て直し始める。しかし王都から冤罪で訴えられる危機に陥るが...悪役令嬢が自由を手に入れ、新しい人生を切り開く物語。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

処理中です...