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主任×私×急展開

ストーリー11

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「……高成とはどうなった? 告白の返事はしたのか?」

 デートの話を終わらせたと思ったら、今度は主任が私に聞いてきた。そして気がつくと主任の飲むペースが早くなっている。

「高成さんにはまだ返事していないです」

「何で?」

「何でって言われても……」

 会話が一旦中断する。主任の真っ直ぐな視線が私に突き刺さり、私は言葉を失った。よく見ると酔っているのか、いつもに増して全身からフェロモンのような空気が溢れ出て、私の心臓がバクバクし始める。

「なぁ赤崎、高成はやめとけ」

 主任は真面目な顔つきで言うと、スッと立ち上がり私の隣に来た。

 何? この前まで高成さんはいい人だって言っていたのに。それより何で私の隣に来た!? もう何からつっこんでいいか分からない。

「高成さん、いい人だって主任言ってましたよね?」

 私はさりげなく横に移動して主任から少し距離をとる。

「あぁ、高成はいいヤツだ」

「じゃあ何でやめとけって」

 主任はじりじりと私に近づいてくる。隣に来た主任の色香はハンパない。私はドキドキが治らなくて、座ったまま後退あとずさりをする。

「なんか嫌だ」

「嫌だってそんな子供みたいな……」

 冗談……だよね? 私、からかわれているだけだよね?

 でも主任はこんな冗談をする人ではない。後退あとずさりする私の後を主任もじりじりと追いかけてくる。

 そして、背中に壁がトンッと触れて私は追い詰められてしまった。私の至近距離に主任がいる。主任から溢れ出る色香のせいか、私は主任の顔を見たまま動けなくなってしまった。

 顔が…

 いや全身が熱い。

 頬も絶対赤くなっている。

 そんな顔を主任に見られたくないと思いパッと横を向いて顔を隠す。

「…

 突然名前で呼ばれ、思わず主任の顔を見てしまった。すると小悪魔のように微笑む主任と目が合い私の耳元でささやく。

「美織、五秒待つ。嫌なら逃げろ」

 逃げろって今から何をするの!? それより体が動かないし目も逸らせないし胸もめっちゃキュンキュンしてるし。そんなこと考えている間にも主任はカウントダウンをしている。

「五秒経ったな」

 主任は壁に片腕をあてるともう片方の手で私の前髪を上げ、おでこに軽く唇をあてた。そして次にほっぺにチュッとして……次は……どこに……。

「美織、可愛い」

 硬直している私を見て笑顔を見せると、そのまま主任の唇が私の唇に軽く触れた。

 主任とキス……私は夢を見てるの?さっきまでいつもみたいに普通に話をしてたはずなのに。

「高成じゃなくて……俺じゃダメか?」

 軽く触れた唇が離れたかと思うと、真剣な眼差しをしながら今度はしっかりと唇が触れ、長く深いキスに変わっていた。

 ゆっくりと唇が離れ、お互い顔を見合わせる。ふと夢から覚めて現実に戻ったような感覚で真っ白になっていた頭が起動し始めた。

「あ、あの……私そろそろ帰りますね」

 なんだか急に恥ずかしくなって顔を赤くさせながら頑張って立ち上がり、自分のコートを掴んで逃げるようにして部屋を飛び出した。

 急いで自分のマンションの部屋へ戻り、一目散にベッドに飛び込む。

 私、何で主任とキスしてるの?

 ワイン…酔った勢いってやつ?

 主任とのキスを思い出し全身が再熱する。訳わからないけど…まだ唇に感触が残っている。私はそっと指で自分の唇を触った。

 26年生きてきて、私もそれなりに恋愛経験をしているしキスだって初めてってわけでもない。なのに何でこんなにドキドキするの?

 まさか……これも溺愛の練習ですか?

 なんだかこの日は朝まで眠れなかった。
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