ファントムガール ~白銀の守護女神~

草宗

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「最終話 東京終末戦 ~幻影の聖少女~」

34章

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「・・・しっかり・・・歩きなさいよ・・・足元フラフラじゃない・・・ったく、あんたは頑張りすぎなのよ」

「しっかりするのは、アリスの方でしょ・・・もう、血まみれのボロボロじゃん・・・いっつも自分を犠牲にしすぎなんだってば」

 悪態をついているのか、讃えあっているのか。
 仲がいいのか悪いのか、独特のコミュニケーションを取りながら、ふたりの巨大女神は互いを支えあっていた。ファントムガール・ナナとアリス。同い年の守護天使は、肩を組んで歩を進めている。
 凶獣ギャンジョーを斃した後、眠りについたふたりであったが、変身は解けていなかった。
 
「バケモン一匹・・・なんとかしたけど・・・まだ闘いは終わってないわ。無意識のうちに、肉体が戦闘態勢を解除しなかったのかしら?」

「・・・案外・・・『エデン』がわかってるのかも、しれないね」

 夢のなかで宇宙生物と会話したことを、青いファントムガールは思い返していた。
 
「・・・『エデン』に意志があるっていうわけ?」

「んー、わかんないけど・・・」
 
「眠ってるヒマはない、って?」

「『エデン』はもともと戦士のために造られた道具らしいから・・・」

「闘いを察知したら、場合によっては眠らせない、か。だったら―――」

 病院直行は免れぬ重傷を負いながら、ナナとアリスは北の丸公園から南下を続けていた。
 ズルズルと、半ば脚をひきずるようにして辿り着いたのは、皇居前の広大な敷地。
 
「この身体でも・・・決着をつけなきゃいけないようね」

 肩寄せ合っていたふたりの少女は、パッと左右に分かれた。
 無数の傷と鮮血に覆われた肉体で、構えを取る。
 鋭い視線の先―――濃厚な血煙漂うなか、何者かの人影が佇んでいた。
 
「・・・サクラ?」

 願望をこめて、ナナは親友の名を呼んだ。
 返ってきたのは、心を引き裂くような高らかな哄笑であった。
 
「ッッ!! ・・・・・・メフェレッ・・・スゥッ!!!」

「ヒャアッハッハッハアァッ~~~ッッ!!! 来たぞ来たぞォッ!! いい子ヅラしたクソ蛆虫どもがなァッ!! このオレに殺されるために来やがったァッ!!!」

「ぐッッ!! ・・・サクラはッ!? サクラはどこなのッ!!」

 一歩進むごとに激痛に襲われながら、青とオレンジの天使は懸命に走る。霞んでいた視界の先が、明瞭になっていく。
 駆け寄ったふたりのファントムガールは、ようやく超能力少女の結末を知った。
 
「ッッ!!! ・・・サクッ・・・!!!」

 銀とピンクのファントムガールは、青銅の魔剣に串刺しにされていた。
 鳩尾から背中に突き抜けた刀が、大地に深く埋まっている。
 ブリッジをするかのように反り返った美少女は、四肢をだらりと垂らして宙に浮いている。ボトボトと落ちる鮮血の雨が、地面を紅に染めていた。
 瞳から光が消えたイマドキの美貌には、白い汚濁が幾層にも塗りたくられている。
 開かれた股間からも、粘ついた白濁の糸が、トロトロと垂れていた。
 
「安心しろよォッ、まだ生きてるぜェ!? 普通ならとっくに死ねるとこだが、貴様らは頑丈でよいわァッ!! これだけ壊してもまだ遊べるッ!」

 桃色の髪を掴み、般若顔の魔人はサクラの顔を持ち上げた。
 瞳も、鼻も、口も・・・ザーメンで埋め尽くされていた。
 可愛さと美しさを併せ持った顔は、ロウで固められたかのように表情を失っている。
 
「だが、貴様ら得意の根性やらで、再び“デス”を発動されてはかなわんからなァッ!! 二度と意識の集中など、できないようにてくれたわッ!! ウヒャハハハハッ!!」

「メフェレスウウウゥゥッッ――ッ!!! お前はアアァッ~~~ッッ!!!!」

 獣の咆哮が、ナナの口から迸った。
 一直線に駆ける。渾身の力で拳を握り、怒りのままに魔人に向かっていく。
 しかし―――。
 
「フハハハハハッ!! なんだァッ、その動きはァッ!? 遅すぎてアクビがでるぞッ!!」

 ギャンジョーの兇器ローラーにより、青い天使の肉体は切り刻まれ、潰されている。
 骨の多くにヒビが入り、ズタズタに切り裂かれた乙女は、立っているだけで奇跡といえた。むろん、本来の動きなど遠く及ばない。
 
「ナナァッ!!!」

 メフェレスが放った漆黒の光弾が、カウンターでアスリート少女に迫る。
 横から飛び込んだアリスが、両腕をクロスして暗黒弾を受け止めた。
 
「うわああああッ―――ッ!!!」

「アリッ・・・スゥッ!!! きゃあああッ――ッ!!!」

 闇エネルギーが爆発し、ふたりの聖少女を吹き飛ばす。
 赤い飛沫と、金属の破片が飛び散った。悲鳴をあげながら、ショートヘアとツインテールの女神が、大地を転がり飛ぶ。
 
「瀕死のクズどもがなんのマネだァッ!? 所詮貴様らは、王となるこのメフェレスへの捧げモノよッ! 結局最後に笑うのは、支配者として生まれたこのオレなのだァァッ――ッ!!!」

 アリスの損傷具合も、ナナと変わらぬ酷さであった。
 すでに金色のプロテクターも仮面も砕け、剥がれた表皮から機械の身体が覗いている。乳房や腹部には穴が開き、千切れたコードが何本も飛び出ていた。外見の惨状だけでも稼動しているのが不思議なほどだが、内部の骨格や臓器もいくつか破壊されている。
 対するメフェレスは、外傷的には無傷に等しかった。
 サクラにより心臓を潰されかけたとはいえ・・・ひきずるダメージは、守護天使たちとは大きな差があった。死の寸前まで追い詰められたものの、内容が違いすぎるのだ。
 
「ア゛ッ・・・ぐぶッ・・・!!」

 大地に横たわる少女たちの肢体が、ビクビクと痙攣する。
 切り刻まれたナナの柔肌から鮮血が溢れ出し、アリスの皮膚はさらに破れてメタリックな鈍色が露わになっている。メフェレスの「殲滅魔弾」の余波を受け、黒い煙が昇っていた。
 ただの、一発。それも直撃したわけではないというのに、正義の少女たちは地を舐め這いつくばる。糸の切れた人形の如く、ぐったりと横たわる。
 降りしきる哄笑の雨を浴びながら、ナナもアリスも、ただ激痛に身を震わせることしかできなかった。
 
「フヒャヒャハハアアッ――ッ!! さあ、殺してやるぞッ!! どういう順番がいい!? ひとりづつ、手足を切り落とすのがいいか、目玉でもくり抜いてやるか・・・反抗的なヤツほど後に殺すのが面白いかァッ!? おトモダチが死ぬ姿をたっ~~ぷりと見せ付けてなァッ!!」

「ッッ・・・ァ゛・・・・・・ぅ・・・ア゛・・・」

「ん~~ッ? なんだァッ、この蛆虫め・・・その手はまるで、仲間を助けたいと言わんばかりだな」

 不快極まりない、という視線を、メフェレスは下に向ける。
 串刺しにされたエスパー天使の右手が、ゆっくりと魔人に向かって伸びていた。
 その右手で、なんの攻撃ができるわけでもないのは、わかっている。それでも、いまだに掴みかかろうとする意志が・・・友の窮地に動き出した気力が・・・メフェレスには不愉快だった。
 
「粛清ッッ!! ファントムガール・サクラァッ――ッ!!」

 両手でピンクの頭部を掴んだ魔人は、暗黒のエネルギーを流し込んだ。
 光を滅ぼす闇が、サクラの表面を覆っていく。マグマのような焦熱が、美しき女子高生を焼き始めた。
 銀とピンクの守護天使が、火炙りの極刑に処されていく。
 
「ッッ~~~ッ!!! ィ゛ッ・・・!! ァギッ~~ッッ!!! ぁ゛・・・ッ~~ッ!!!」

 ジュウウウッ~~~ッ・・・シュウウウッ~~~ッ・・・!!!
 
 ヴィンッ!! ヴィッ!! キャリキャリキャリッ!! ヴィヴィッ!! ギギィッ!!
 
 黒煙が噴き出し、輝く肢体が無惨に焦げていく。
 胸中央と下腹部とで、消えかけの結晶体が狂騒の音色を奏でた。
 串刺しのまま、焼かれていくサクラ。しかし、間もなく絶命しようかという少女戦士を、かつての恋人はまだ許さなかった。
 
「ヒャハッ!! フヒャハハハッ!!! いいザマだァッ――ッ、カスの分際でオレを裏切った者は・・・死刑すらも生温いッ!!」

 魔人の股間中央に、腕ほどもある肉棒がそそり立っていた。
 白い汚濁で満ちた、サクラの口腔に突き入れる。仰向けで宙に浮いた肢体が、瞬間ビクリと強張る。
 咽喉奥まで一気に貫くイラマチオ。
 メフェレスの青銅ペニスが、サクラの口をいっぱいに満たして摩擦する。
 
 ぐちゅ。じゅピュッ。どぶぅ。ピュルルッ。じゅぼオッ、ぐぼオッ・・・
 
 腰を突くたび、唇の端からザーメンが溢れる。淫靡な音色が世界を満たす。
 腹部を貫かれ、漆黒の炎で焼かれながら、美少女戦士が犯されていく。涙を流す代わりに、サクラの全身は激しく悶え続けた。
 
「サッ・・・!!! 桃ッ・・・子オォッ――ッ!!! ・・・」

「ウヒャハハハアアッ――ッ!! ミス藤村の痴態、誰もが待ち望んだ光景よッ!! 類い稀な美少女が穢れていく様を、人間どもは興奮して見ているに違いないわァッ!!」

 懸命に身を起こそうとするナナとアリス。足掻く女神たちを嘲笑い、サクラへの公開陵辱は続く。
 グブグブと溢れ出る白濁に、黄色が混ざる。
 咽喉を襲う異物感とザーメンの悪臭が、胃液と吐瀉物を溢れさせた。
 
「サクラァッ!! 所詮貴様はッ・・・我が肉便器に過ぎんッ!!」

 ジョボッ! ジョボボボボ・・・ジョジョジョッ!

 大量の小便が、咽喉に突っ込まれた亀頭の先から放出される。
 弩流となって注がれる黄金水は、瞬く間にサクラの胃を満たした。入りきらなかった分が逆流し、咽喉を遡っていく。
 男根を頬張った唇の端から、尿の飛沫が噴き出した。
 勢いついた黄金の奔流は、形のいい鼻からも溢れ出る。さらには瞳からも。耳からも。ブシュブシュと、水漏れの音色がサクラの美貌を埋め尽くす。
 アイドル顔負けのマスクも、ピンクの髪も。小水の滝が濡らしていった。
 
「ゴボッ!! ・・・オ゛ッ・・・!! ・・・ぅぶッ・・・・・・―――ッ!!」
 
 苦悶に歪んだ美少女の顔を、ヌラヌラと月光が照り返す。
 可憐さの頂点にも立つようなサクラにとって、文字通りに便器と化した恥辱は、肉体の損傷を凌駕するダメージだった。
 
 ピクンッ・・・ヒクッ・・・ぴくぴくッ・・・・・・・・・
 
 痙攣が途絶えると同時に、エスパー天使の瞳から光が消える。
 全身を脱力させたサクラから、魔人の肉棒がグボリと抜かれた。
 
「どうしたァッ~~!? 死ぬか? もう死ぬのかッ、ウジ女ァッ!? ションベンまみれ程度では許さんぞォッ~~ッ、誰もが目を背けるほどの、酷い死に様を晒してもらわねばなァ~~ッ!!」

 返事のないピンクの天使から、青銅の剣を引き抜く。
 血と精液と小便に濡れた肢体が、どしゃりと落ちた。大の字で横臥するファントムガール・サクラ。腹部中央に開いた穴から、じわりと赤色が広がる。
 その細い首に、メフェレスは魔剣の刃を押しつけた。
 
「ヒャハハハハァァッ~~ッ!! 貴様のその整った美貌だけは、終生可愛がってやるわッ!! 首から下は見せしめとして八つ裂きにしようッ!!」

 ギッ・・・ギィッ・・・ブシュッ・・・・・・
 
 ノコギリのように、魔人が刀を挽く。ゆっくり。少しづつ。
 サクラの首、その薄皮一枚一枚を、魔剣は切り裂いた。肉を裂く音に、鮮血の噴出音が混ざる。
 ファントムガール・サクラの、公開処刑。
 もはや闘うことのできないエスパー天使を、メフェレスは嬲るように斬首していく。美少女の咽喉の上で、青銅の剣が何度も往復する。
 
「サクッ・・・ラァァッ―――ッ!!!!」

 吼えたのはアリスであった。ようやく立ち上がった身体で走る。脚をもつれさせながら、サイボーグ戦士は全力で駆けた。
 スローモーションでも見るかのように、その足取りは重かった。
 
「ゴミめがッ・・・!! 王の邪魔を、するでないわァッッ!!」

 振り返るメフェレスが、魔剣を構え直す。
 渾身の力で、右の拳を握るアリス。般若の顔をした闇の王に、怒りをこめて振り放つ。
 
 ザグンンンッッ!!!
 
「・・・焦らずに、殺される順番を待っていろォッ!!」

 アリスの右の二の腕が、キレイな断面図を見せていた。
 重々しい響きをあげ、金属製の右腕が大地に落ちる。
 甲高い絶叫が、サイボーグ少女の口から迸った。
 
「ウアアアアアァァッ―――ッッ!!!! ガアアッ・・・アアアアッ~~ッ!!!」

「クヒャハァッ、機械のくせに痛みがあるとは残念なヤツめッ!! そおら、どれほど痛みを感受するのか試してみるか」

 アリスの右腕は、灼熱弾の砲口よりさらに根本、より肩に近い部分で切断されていた。
 激痛と、最大の必殺技を失った衝撃。ダブルのショックで棒立ちとなった鋼鉄乙女を、魔人が捉える。
 青銅剣の切っ先を、右腕の切断面に突き刺すや、ギュルギュルと回転させた。
 
「アガギャアアハアッ!!! きゃあウッ!! グガアアアアッッ―――ッ!!!!」

「いいッ!! いいぞッ、アリスゥッ!! クールぶったメス豚が泣き叫ぶ声は最高だァッ!! 気が変わったぞ、反抗的な貴様から処刑するッ!! 我が剣でバラバラに分解するとしようッ!!」

「やめッ・・・やめェェろォッ――ッ、メフェレスゥッ~~~ッ!!!」

 赤く染まった青い天使が叫ぶ。奇跡とも言っていい力で、再度立ち上がる。
 骨を軋ませ、血飛沫を飛ばして、ナナは走った。ふたりの友のため、限界のはずの身体で魔人に向かう。
 
「フンッ!! 次から次へと」

 振り向きざまのバックキックを、メフェレスは放った。
 ナナの鳩尾に、魔人の足が埋まる。本来決まるはずのない打撃は、易々とアスリート少女の腹部を抉った。
 くの字に折れ曲がった、グラマラスな守護天使。
 ボタボタと胃液を吐きながら、ひれ伏すようにメフェレスの足元に座り込む。
 
「ごぼオッ!! オオエェッ!! ・・・グブッ!! ・・・ァ・・・アァ・・・」

「・・・貴様さえいなければ、あの時、とっくにサトミを始末できたのだ・・・」

 憤怒の表情で見下ろす魔人の脳裏には、初めて青いファントムガールと邂逅した日のことが蘇っていた。
 
「お前がファントムガールになどならなければ・・・とっくに世界は、オレのものになっていた。貴様のせいでオレは屈辱を味わいッ!! 無用な遠回りをさせられる羽目になったッ!!」

「ぐうゥッ・・・!! こふッ!! ・・・ぅうッ・・・ぅぐうッ!!」

 右手に握った魔剣を、メフェレスは天高く突き上げた。
 座り込んだ天使を、冷たく見下ろす。対するナナは、鋭い視線で宿縁の敵を見上げた。
 だが、腹部を押さえて呻くナナに、立ち上がる力はもうない。
 
「貴様から始まった闘いは・・・貴様から終わらせるのが筋か」

「・・・・・・お前、なんかッ・・・・・・大っ嫌いだッ・・・・・・!!」

「死ね。ファントムガール・ナナ」

 青銅の魔剣が振り下ろされた。
 ナナの頭頂。青いショートヘアの、頂きに向かって―――。
 
 バチイイイイッッッ!!!
 
「させない、わ」

 風が吹いた。
 凛々しくも清らかな、秋の風だった。夜の東京を駆け抜ける風は、満月を浴びて光るかのようだった。
 青銅の肌を叩く烈風に、魔人は粟立った。
 
「ッッ・・・サトミィィッ・・・!!!」

「メフェレス。・・・決着の、刻よ」

 紫の守護天使から伸びた光の帯が、メフェレスの右腕に絡まっていた。
 ナナに届く寸前、魔人の剣は止まっていた。憎悪に燃える眼光で、ファントム・リボンの先・・・彼方に佇む、麗しき令嬢を射抜く。
 
「貴様ァァッッ!!! 貴様だけはァァッ、この手で引き裂くッッ!!! 殺して殺して犯して殺してッ・・・」

「私たちファントムガールには、もうひとり仲間がいるわ」

 狂乱する闇王の声を、冷静な女神が沈黙させた。
 反射的に、上空を見上げる魔剣の達人。
 戦慄する視界に、満月を背にした黄色の天使が映り込んだ。
 
「ユリアの姉、ファントムガール・エリス・・・!! 参りますッ!!」

 よく見知った、それでいて初遭遇の守護女神は、大上段に光の薙刀を構えていた。
 落下の加速とともに、聖なる武具を振り下ろす。
 魔人メフェレスの正中線。一気に、頭頂から股間へと。
 
「オオオオオッ・・・!! ウオオオオオッッ―――ッ!!!」

 吼える魔人。力をこめる右腕。動かぬ剣。張り詰めた光の帯。切迫する咆哮。
 青銅の魔剣を封じられたメフェレスが、迫る薙刀の光を見詰める―――。
 
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