ファントムガール ~白銀の守護女神~

草宗

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「最終話 東京終末戦 ~幻影の聖少女~」

35章

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 ズバアアアアアァァッッ!!!!
 
 縦一直線。
 メフェレスの中心に、朱線が走る。思い出したように、鮮血が噴き出す。
 薙刀を振り下ろすと同時、スレンダーな武道天使は、魔人の眼前に着地した。
 
「・・・やッ・・・た・・・!?」

「いえ、まだよッ!! 浅いわッ!!」

 サトミの叫びは、悲鳴に近かった。
 
 勝負手だった。
 5人の守護天使、全員が危機的状況にある今、奇襲ともいうべき策に賭けるしかなかった。重傷を負ったエリスに、本来なら特攻のような真似はさせたくなかった。
 それでも、最後に残った悪の首領を葬るには・・・これくらいしか、方法がなかった。
 
 エリスの聖武具は、メフェレスに届いた。決して作戦が、まったくの的外れだったとは思わない。
 
 しかし・・・
 だが。しかし。
 
 最後の最後で、メフェレスは剣の達人である身体能力を全開にした。
 動くことさえ奇跡の守護天使の攻撃は、本来のキレよりわずかに及ばなかった。
 
「・・・このッ・・・オレはァァッ・・・王はァッ・・・死なぬわァァッ―――ッ!!!」

 顔を。胸を。腹を。下腹部を。縦に切り裂きながらも、魔人は絶叫した。
 一直線に、鮮血が迸る。降り注ぐ赤い雨を浴びながら、エリスは薙刀を持つ手に力をこめた。
 
 ブシュッ!! ブジュウウウウッッ・・・ッ!!!
 
 その瞬間、腹部と背中から、大量の赤い飛沫が噴き出した。
 包帯代わりに巻きつけていたファントム・リボンも、すでに用を成してはいない。着地した衝撃で、ゲドゥーに貫かれたエリスの風穴は、とっくに開いていたのだ。
 
「ッッ・・・ァ・・・かふッ・・・!! ・・・」

 黄色の天使の手から、光の薙刀が消えていく。
 セミロングの髪を揺らし、人形のような顔がガクンと垂れた。
 ファントムガール・エリスに、再び光の武具を造り出すような力は、残されていなかった。
 
「殺すッ!! 殺してやるわアァァッ~~ッ!!! どいつもこいつもッッ・・・!! ファントムガールゥゥァアアアッ~~~ッ!!! 貴様ら全員、皆殺しだあアアァァッ~~~ッッ!!!」

「くッ!! くあああッ・・・ウアアアアッッ―――ッ!!!!」

 激昂する魔人に、呼応するかのごとくサトミも吼えた。
 血染めのナナ。右腕を失ったアリス。処刑寸前のサクラに、エネルギーの枯れたエリス。
 自分も含め、全員が全員、死の瀬戸際にある守護天使たち。
 幾度限界を迎えたかわからない身体で、ファントムガールのリーダーは、死を賭けて力を振り絞る。
 
 ドオオオオオオンンンッッッ!!!!
 
 遥か後方で、首都を揺るがす地鳴りが響いたのは、その時だった。
 
「ッッ・・・!!!」
 
「ゥッッ!!! ・・・きィッ・・・きさッ・・・まァッ!!!」

 麗しき令嬢戦士も、青銅の魔人も動きを止めた。
 止まらざるを得なかった。硬直せざるを得なかった。誰もがそうなる。喧嘩の最中に拳銃を持った暴漢が出現したら、誰もが固まらざるを得ない。
 
 逆三角形の筋肉の塊が、東京タワーを背にして立っていた。
 赤い肉体から、さらに赤い液体が垂れ落ちている。遠目からでもハッキリわかるほど、分厚い胸と肩は、激しく波打っていた。
 
「・・・闘鬼・・・ガオウッッ・・・!!」

 突如現れた怪物の名は、ナナの口からようやく告げられた。
 むろん、その正体は場の全員が知っている。このタイミングで、最強の格闘獣が登場した意味も―――。
 
 ジョーカーは、切られた。
 
 終結は、近い。全ては終わろうとしている。
 本来ならば、ミュータントひとり程度は瞬殺可能な、純然戦闘種族シュラ。万全から程遠い状態とはいえ、ここでの切り札発動は、雌雄を決する以外の意味は持ち得まい。
 
 Dead or Alive
 
 闇が滅ぶか、光が絶えるか―――。
 
「我が親衛隊70余名ッ・・・全て屠り尽くしたかッ!! だがッ!! すでに警戒する必要はなかったようだなァッ~~ッ!? もはや動けまいッ、バケモノも限界に達したのは見透けているぞォッ!!!」

 答えるかわりに、赤銅の鬼は低く唸った。
 消耗しきったのは、ファントムガールだけではない。70体・・・厳密には、敵前逃亡した者を除いた52体。その全てと闘い続け、さすがのシュラにも限界が迫っている。
 
「いいぞッ・・・やはり全てはッ!! このオレを中心に回っているのだァァッ!!! 死に掛けの姿でよくぞノコノコ現れてくれたッ!! 探す手間が省けたぞォッ・・・殺してやるッ!! 貴様も逃さず縊ってくれるッ!!」

「ガ・・・オウゥッ・・・!! 逃げ・・・てッ・・・!! もう十分ッ・・・十分先輩は・・・やってくれたからッ・・・!!」

「忌々しき過去はッ・・・全て清算するッッ!! 恨みも恥辱も憎しみも、全て晴らしてオレは新たな王となるのだァァッ―――ッ!!! てめえら全員ッ、まとめて門出の贄となれッッ!!!」

「ダメッ・・・今のその身体じゃッ・・・いくらガオウでも勝てないッ!!」

「違うわッ、ナナ!」

 なにかを感じ取ったサトミの声は、鋭かった。
 鍛えられた、くノ一の五感が騒いでいる。結末が来る、と。
 いつ、誰の命の綱が途切れても、おかしくはない断崖で。身を引き千切りそうな強風が、確かに吹き荒んでいる。
 
「あれはガオウじゃない、吼介よッ!」

「え・・・?」

「瞳に宿った理性で・・・彼は勝機を見据えているッ!! 闘争本能に駆られてここに来たんじゃない、策と未来を私たちに託すつもりよッ!!」

 ズオオオォォッッ・・・オオオオッ!!!
 
 大きく開いた、右の掌。
 光の球が、凝縮されていく。闘鬼のものとしては小さい、けれども確かな濃密さで。
 渦を巻く球体は、眩い輝きを四方に放つ。
 
「・・・なぜッ・・・? アイツが・・・白い光をッ・・・!?」

 断面からバチバチと火花を飛ばす右腕を押さえ、アリスが言う。乳房からも腹部からも、コードを垂らした無惨な姿。サイボーグ少女もまた、最後の力を振り絞っていた。
 
「聖なる光は・・・ファントムガールじゃなきゃ、出せないんじゃないの・・・!?」

「完全なる戦士のシュラに、光も闇も関係ないわ。・・・アリスは知らないでしょうけど」

 お台場で処刑された自分に、エネルギーを与えたのは誰か。アリスは教えられていなかった。
 一方で、自身もガオウに救われているサトミは、身をもってシュラの能力を理解している。
 
「シュラならば、必要に応じて魔滅の光も操れる・・・けれど」

 足りない。
 
 ガオウがここに来て、守護天使たちと同種の技を繰り出す意図はわかる。闇の眷属であるメフェレスには、聖なる光エネルギーがもっとも有効であるからだ。
 しかし、哀しいかな。闘鬼は消耗しすぎた。
 搾りカスのごとき光弾で斃せるほど、メフェレスという魔人は脆くない。
 
「・・・サトミ。・・・ナナ」

 赤銅の鬼が、言葉を放った。
 低く、落ち着いた響きは、ふたりの少女が愛した男のそれだった。
 
「吼介」

 同時に答える。いみじくも、人間のときの名を。
 
「あと一発。・・・お前たちなら、出せるだろ?」

 紅に染まった怪物の声は、優しさすら含んで聞こえた。
 
「・・・できるわ」「うん。やれるよ」

「知っているな? 光と光を重ねれば、巨大な力を生み出せる」

「ええ」「吼介が教えてくれたんじゃん」

「波長を合わせれば・・・互いをリンクできれば、奇跡は起こせる。オレたち3人なら、きっとできる」

「・・・ええ」「・・・うん」

「やるぞ。3人の光を重ねて・・・ヤツを撃つ」

 ガオウの右手の上で、白光の球体が躍った。
 
 1+1=2 ではなく
 1×1=10 になる奇跡。
 
 ナナとアリスが、凶獣ギャンジョーを破ったように。再びの絶技を、メフェレスに対して敢行する。ひとりひとりは微力でも、掛け合わさった3人の光ならば、闇王を葬るのに不足はない。
 
「ヒャハッ!! ・・・フヒャハハハハアアァッ~~ッ!!! なにを企もうがッ!! この状況からなにを挽回できるッッ!!?」

 高らかに笑うメフェレスは、魔剣を頭上に振り上げた。
 もっとも警戒すべき闘鬼は遠く、その造り出した光球は弱い。今のガオウに脅威はない。
 逆にサトミを除く4人の守護天使たちは・・・瀕死となって足元に転がっている。
 
「その弱々しい光弾が届くより先に、オレは全員を殺せるぞッ!! サトミィッ!! 赤鬼ッ!! 貴様らの前で、こやつらの首をことごとく斬り落としてくれるわァッ!! さあ、どいつから死にたいッ!?」

「・・・エリちゃん」

 狂乱の魔人を見上げながら、青い天使がゆっくりと立ち上がる。
 ガクガクと揺れる脚は、今にも崩れそうだった。
 声を掛けられたエリスもまた、貫かれた華奢な肢体を、懸命に起こしていく。
 
「やはり貴様かァッ!? 貴様から殺すのがいいかッ、ファントムガール・ナナァッ!?」

「・・・エリちゃん、でいいんだよね? ・・・ごめんね。ユリちゃんと・・・約束していた温泉・・・いけなくなったんだね・・・」

「・・・妹は・・・幸せでした。少しでも・・・皆さんの、役に立てて・・・」

「・・・あたしがやって欲しいこと・・・あなたなら、わかるよね?」

「はい。ユリもきっと・・・わかると思います」

「うん。・・・じゃあ・・・」

 小刻みに震えるナナの右手に、白い光球が渦を巻く。
 同時に青銅の魔剣が、アスリート少女の首に振り下ろされた。
 
「なにをしようがッ!! 無駄だと言っておろうがァッッ!!!」

「エリスッッ!! 思いっきり、やってッ!!」

 乾いた音がした。その瞬間、黄色の武道天使の手は、握り掴んでいた。
 メフェレスではなく。
 ファントムガール・ナナの左手首を。
 
「動けないナナさんをッ!! 私の柔術で運びますッ!!」

 風を切り裂く音がした。二種類。
 激痛に反応した、青い肢体が跳ね転がる。ショートヘアの上を、魔人の刃がかすめ過ぎる。
 
「なッ・・・味方をッ!? 投げるかッ!!」
 
「ボロボロのこの身体でもッ!! 痛みには、勝手に動いてくれるのよッ!!」

 転がり続けるナナが、ある地点で止まる。
 魔人メフェレスと、彼方で構えるガオウとを結んだ、直線上。
 さらに、ナナとメフェレスとの間にサトミが立つ。一直線に並ぶ、女神と闘鬼と魔人―――。
 
「小癪ッッ・・・なッ!!!」

 寒々しい予感が、メフェレスの背中を駆け抜けていた。
 振り払うように。苛立ちを紛らすように。再度構えた魔剣を、眼前のエリスに向ける。両肩で息をするスレンダーな戦士に、斬撃を避ける余裕はなかった。
 愛らしい顔の中央に。渾身の突きは、発射された。
 
 ズドオオオオォォォッッ!!!
 
「ヌオオッッ・・・!!?」

「『臨死眼』。カワイイ後輩を、もう二度と死なせなどしないわ」

 青銅の刀身が貫いたのは、エリスの顔面ではなく、サイボーグ戦士の左手だった。
 
「二股男。アンタのことは、好きじゃない。けど、サトミとナナがいいなら・・・今回は許してあげるわ」

 赤いセンサーが光る瞳で、アリスは赤銅の鬼を見た。
 ガオウ、ナナ、サトミ。直線に並んだそれぞれの手に、白い光球が唸っている。
 
「だから。・・・さっさと、やっちゃってよね」

 アリスの右腕が殴る。火花をスパークさせた、切断面で。メフェレスの右の肘を。
 千切れたコードから漏れる電撃が、剣を持つ魔人の腕を麻痺させる。
 
「ウオオオッッ!!? ウオオオオッッ―――ッッ!!!!」

 筋肉は、神経から送られる電気信号によって動かされる。
 電撃によって乱されたメフェレスの右手の筋肉は、最高のパートナーである愛剣を手放した。
 
「いまよッ!!!」

「応ッッ!!!」

 ドオオオォォゥッッッ!!!
 
 闘鬼が放つ。渾身の力をこめて、白光の砲弾を。
 真っ直ぐに進む光弾は、ファントムガール・ナナが生み出した光に激突する。
 
「これがッ!! あたしのッ!! 最後のスラム・ショットォォッ――ッ!!!!」

 ドオオオオオオッッッンンンッッ!!!!
 
 ガオウとナナ。ふたつの光弾が激突した瞬間、爆発したかのように巨大化する。眩さが倍化する。
 
「気に入らないけどッ!! アンタとナナじゃあ、波長があうのも当然よねッ!!」

 エリスの身体を抱きながら、サイボーグ少女は可能な限り遠くへ飛ぶ。
 その見詰める先で、赤銅の格闘鬼は、霞みとなって消えていく。
 ガオウにしても、それが最後の一撃だった。
 
「サトミッ!! ・・・あとはあなたがッ!! 決めるだけよッ!!」

「わかっているわッ!!」

 巨大光弾が突き進む先に、紫の守護女神が待っていた。
 その手に踊る光弾。ファントム・バレット。
 ガオウ×ナナ。そのうえサトミが掛け合わされれば、背信の闇王メフェレスとて、耐え切れるわけがない―――。
 
「グウウウウゥゥッッ!!? ウオオッッ――ッ、オレは死なんンンッッ――ッ!!!」

 般若面が叫ぶ。青銅の魔人は、プライドをかなぐり捨てて、その場を逃げんとした。
 魔剣を失ったメフェレスにとって、それは最善の選択。
 だが、地を蹴ろうとしたその脚は、何者かの手によって掴まれる。
 
「きィィッッ!!! きさッ!! まアァァッ~~~ッ!!!」

 足元を見る、憎悪の視線の先で。
 白濁と汚水に濡れた、ファントムガール・サクラの美貌が、寂しげな微笑を浮かべていた。
 
「決めてッ、サトミィィッ!!」

「ッ・・・サトミッ・・・さんッ!!」

「いッッ・・・けェェッ―――ッッ!!!」

「・・・ファントムッ!! バレットォッ!!!」

 ドシュウウウウッッ!!!
 
 迫る巨大光弾に、サトミが造り出した白き光弾が飲み込まれる。
 そのまま、3つの光が混ざった砲弾は、動けぬメフェレスに殺到した。
 
 ッッ・・・・・・・・・え? ・・・・・・ッ!!?
 
「・・・・・・バ・・・」

 カな。
 
 信じられぬ想いが、誰ともない口から洩れ出ていた。
 
 これは。
 
 これは・・・違う。
 
 ガオウとナナは、1×1=10 だった。
 しかし、これは。
 
「・・・・・・1+1=2 ・・・いや・・・10+1=11 ・・・」

 リンクして、いない。
 サトミが生み出した光弾は、ナナとガオウが掛け合わせた光に、混ざっていなかった。
 
 ドオオオオゥゥンンンンッッッ!!!!
 
 巨大光弾が、青銅の魔人に直撃する。衝撃の波が、ビリビリと皇居前広場全体を揺るがす。
 メフェレスを覆う青銅の鎧。その全体に、無数の亀裂が走っていた。
 シュウシュウと、黒煙が立ち昇る。グラグラと震える魔人に、深刻なダメージを与えたのは間違いなかった。
 
 しかし、メフェレスは生きている。
 縦一直線に走った斬撃の痕から、噴血し。全身を焼け焦がそうとも。
 
「ッッ・・・フハァッ!! フヒャハハハハハハッッ!!! アヒャヒャハハハアアァッ~~~ッ!!!」

 見た目に巨大な光弾であっても、その威力はギャンジョーに放ったそれとは、比べものにならなかった。
 だから、魔人を仕留められなかった。
 3人の光を掛け合わす。それしか、斃す手段のない状況で。
 
 ファントムガール・サトミは、ふたりと波長を合わすことが、できなかった。
 
「・・・・・・な・・・んで・・・?」

 泣きそうな声が、青い守護天使の口から洩れた。
 掻き消すように、重いものが、大地に沈む音色が重なる。
 サトミの両膝が、崩れ落ちた音だった。
 
「・・・はァッ! はァッ! はァッ!! ・・・」

 こみあげる震えを、サトミは抑えることができなかった。
 膝に続いて、両手を大地につける。四つに這った姿勢のまま、長い髪を垂らしてサトミは震え続けた。
 崩れ落ちたものは、身体だけではないようだった。
 
「・・・・・・サトミ・・・」

「・・・できな・・・・・・かった・・・・・・」

 紫のグローブを嵌めた指が、広場の大地を掻き毟る。
 
「・・・できない・・・私には・・・できなかった・・・・・・。ナナちゃんと・・・あのひとが・・・造り上げたものにッ・・・私を、重ねるなんてッ・・・・・・!!」

 バカな。
 
 バカな。バカな。バカな。バカなッ!! 
 
 この期に及んで。五十嵐里美は。
 藤木七菜江と工藤吼介。このふたりが結び合うことを、心底からは認められなかったのかッ!!
 
「サトミ・・・さん・・・」

「ごめん・・・ごめんなさい、ナナちゃん・・・私は・・・私はッ・・・」

 哄笑する魔人。泣き声のナナ。崩れ落ちるサトミ。
 こんな。こんなことがあって、いいのか。
 悪夢のような、光景だった。華麗な大逆転で、正義は勝利を掴むのではなかったのか? こんなことで。守護天使の象徴たる少女の、人間らしい嫉妬心で。全ての希望は、砕け散るというのか。
 
「勝ったッッ!!! オレのッ・・・このメフェレスのッ・・・勝ちだアアァッ―――ッ!!! オレは生き残ったァァッ!!!」

 魔人が動く。地に落ちた刃を、拾おうとする。
 サトミは俯き。ナナはそんなサトミを見詰め。アリスは絶句し。エリスは呆け。サクラは死んだように動かない。
 誰もが、阻止できない。メフェレスが魔剣を手にすれば、今度こそ守護天使たちは全滅の憂き目に遭うというのに。
 
「私はッ・・・本当は・・・あなたのことを、許せてなかったみたい・・・」

「・・・やめて・・・もうやめて・・・サトミさん・・・」

 メフェレスの右手が、再び青銅の刀を握った。
 ゆっくりと、近づいていく。
 まずは眼の前。背を向けたままの、青いショートヘアの少女に。
 
「ィッッ・・・ナナッ!! もういいッ! メフェレスがッ・・・!!」

 友の窮地に、サイボーグ少女が声を絞り出す。
 背後から忍び寄る殺意にも、気がつかぬようにナナはサトミを見詰め続けた。
 
「サトミさんッ・・・お願いッ・・・もうそんなことは・・・」

「ナナァッ!! 前をッ!! 前を向きなさいッ!!」

「・・・私は・・・どうしようもない・・・最低の女よ・・・・・・」

「サトミさんッッ!!」

「ナナァッ――ッ!!! 前を向けえェェッ――ッ!!!」

 青銅の刀身が、光る。
 前を振り返ると同時、ファントムガール・ナナの首に、メフェレスの斬撃が閃いた。
 
 ズッパアアアアアアッッ・・・ンンンッッ!!!!
 
「・・・なッ・・・!!?」

 首が、飛んだ。
 魔人メフェレスの、首が。
 
「ッッッ・・・!!! ゲッ・・・ゲドオオオオオォゥゥッ――ッッ!!!」

 菱形の頭部。濃紺のひとつ眼。黒縄で編まれたがごとき、漆黒の肉体。
 背後から、音もなく忍び寄った凶魔ゲドゥーは、笑いに歪んだままのメフェレスの頭部を、『最凶の右手』で引き千切っていた。
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