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「第三話 新戦士推参 ~破壊の螺旋~ 」
20章
しおりを挟む殴られ続けるエリの両手が消える。
凄まじい速さで動いた両手は、ついに壊し屋の左手首を捕らえたのだ。
葛原の尋常ならざる速度の打撃は、エリには見ることさえできなかった。しかし、その打撃のリズムを、百発以上の殴打を刻まれた身体が覚えたのだ。
壊し屋の異常な破壊欲が、逆転の一手を少女に授ける。
一撃で、この黒い巨人を沈めることは・・・可能だ。
命綱の手首を、一気にねじ上げる!
「??!ッッッ」
極まったはずの関節技が、極まらない!?
ズルリとぬめる感覚がするや、手首のポイントがずれる。
確実に手首を捕えているのに、拳の先が伸びる! 二本指の貫き手が、くっきりとした二重瞼を抉り刺す。
「ぐわああッッ――ッッッ!! うわああああッッ―――ッッッ!!!」
命綱を手放したエリが、右目を押さえて絶叫する。赤い涙が頬を伝う。両膝立ちになって天を仰ぐ少女武道家は、まるでトドメを刺してくれるよう、懇願しているようだった。
壊し屋の右の貫き手が、防御できない少女の鳩尾に埋まる。
「ごぶうううッッッ?!!」
ドロリとした血塊が薄ピンクの唇を割る。そのまま貫き手は、折れた肋骨に、握った内臓を叩きつける。
「ごぼおおおおおッッッッ―――――ッッッ!!!!!」
純真な少女の口腔から、溶岩のように大量の血塊が吐き出される。ビチャビチャと派手な音をたて、潰れたトマトのような物体が、コンクリの大地に落ちる。
「エリいいィィッッッ!! エリいィィッッッ―――ッッッ!! 目を覚ましてッ! お姉ちゃんッッ――ッッッ!!」
神崎ちゆりの足元で、ユリが姉の惨状に泣き叫ぶ。その声も届かず、胡桃に似たエリの瞳は、白目を剥いたままだった。
「キヒヒヒヒヒ! キヒヒヒヒヒ! さて、そろそろトドメをさしてやるか」
誰の目にも明らかな敗北者に、恐怖の宣告が下される。
妹の懇願も無視し、もはや腕に垂れ下がるだけの、西条エリの儚げな身体に、黒い巨人が絡みつく。コブラツイスト。だが、細く長く、柔軟な壊し屋は、通常よりもさらに一回転多く、エリに螺旋状に絡みついたのだ。
「よく見とけ。オレの『スネークツイスト』の恐怖をな」
葛原の螺旋に絡んだ長身が、ねじったゴムが戻る勢いで、一息に元に戻る!
普通、コブラツイストという技は、相手の脇腹を捻って痛めつける技だ。だが、それより一回転、余分に捻られるということはつまり・・・脇腹を、丸々一回転捻り上げられるということ!!
ブチブチブチブチブチイイイィィィッッッ!!!
肉と骨の断ち切られる、壮絶な絶叫ッッ!!
「お姉ちゃんッッッ!!! お姉ちゃ―――ッッんんんッッッ!!!」
コンクリートの決闘場に、ユリの叫ぶが哀しく響く。
言葉の通り、破壊されたエリの骸が、黒い巨人に手首を掴まれ吊り下げられる。ブラーンブラーンと、脱力した細い足が揺れる。伝統ある武道の血統者が、街の乱暴者に完膚なきまでに制圧された瞬間だった。
捨てられるエリ。大の字になって、天を仰ぐ。血まみれの唇が、微かに震えている。エリは生きていた。
「『新ファントムガール』って言ってもォ~、正体がわかれば、こんなもんよ。他愛な~~い」
「確か、ファントムガールについては、殺してもいいって話だったな」
葛原が恐ろしい台詞を吐く。この先さらに、まだ瀕死のエリを嬲り尽くそうと言うのか。
「いいけど、ちょっと待ってぇ~。一応さ、調べてみるから」
ヒールを響かせ、ちゆりが壊れたエリのもとにいく。姉の悲惨な敗北の様に、激昂するかと危惧したユリは、ただメソメソと泣き崩れるだけだった。どうやら心底から、戦士ではないらしい。敵ながら呆れたちゆりは、もはや興味もなかった。
壊し屋に両脚を持たせて開かせる。股間の間に座った女豹が爪をたてると、分厚いデニムの生地が、画用紙みたいに容易く切り裂け、大事な部分が外気に触れる。
幼さの残る風貌に合わせるように、少女の恥毛は淡かった。風にそよぐ海藻の奥に、誰にも触られたことのない、聖なる亀裂がある。
なんの前触れもなく、無造作に鋭い爪が侵入する。
ちゆりの趣味から言えば、処女をイカせるのは嫌いではない。寧ろ、嫌がる少女を悦楽の虜にする作業は、征服欲を満たしてくれるごちそうのひとつだ。だが、今は目的が違う。まずはエリがファントムガールであることを、確認するのが優先だ。
穴がキツイのも遠慮せず、五本の指が全て膣内に差し込まれる。破瓜のヌルリとした感触も、ちゆりには気にならない。極度の激痛が麻酔がわりになっているエリは、破瓜の苦痛も感じなかったことだろう。そればかりか、愛液が分泌されてないにも関わらず、膣を掻き乱される痛みすら、感じてないようだ。ただ、異物の挿入感が、もぞもぞと腰を小刻みに震わせる。
「・・・・・・ユ・・・・・・リ・・・・・・・・・」
乱暴な扱いが刺激し、エリの意識を呼び戻したようだ。しかし、掠れた瞳が、まだ半濁した意識であることを教える。作業に没頭するちゆりは、委細構わず膣内を、あるモノを求めて探し続ける。
「・・・・・・ユリ・・・・・・・・ごめ・・・・ん・・・・・私・・・・じゃ・・・・・ダメ・・・・だっ・・・・た・・・・・・・・」
「あれぇ~~、おかしいなあ~~? 『エデン』が見つからないなんて」
涙に揺れる瞳を、息も絶え絶えな姉に向けるユリ。蚊の鳴くような声は、血を分けた妹には、ハッキリと聞こえた。
「・・・・ユリ・・・・・こいつら・・・・・・を・・・・・・・」
「こいつの中に、『エデン』がいないってのは、ど~ゆ~こと? ・・・まさか」
ラインの濃い目立つ瞳が、背後の妹をするどく射抜く。
「こいつら・・・を・・・・・・・・やっつけ・・・・て・・・・・私が・・・・・ゆる・・・・す・・・・・・・」
ブオオオオオオッッッ!!!
旋風が、唸る。
泣き崩れていた妹の身体が、全身のバネ運動で、瞬時に起きあがったのだ。
般若の形相。
可愛らしい顔立ちは同じなのに、噴き出す闘気の種類がまるで違う。ズタズタになった服からは、小ぶりな乳房が見え隠れしているというのに、今は気にする素振りがない。初めて見せる鋭い目つきは、西条姉妹には考えられない獰猛さだ。
誰もが美少女と認める内気な女のコは、いまや勇ましい闘士となったのだ。
その雰囲気が、十二分に確証となった。
「闇豹」も壊し屋も、姉への興味はすでにない。ふたり並んで、本当の敵と対峙する。
「あんたがファントムガールだったかぁ~。まさか、ジキルとハイドとはねぇ~」
「お姉ちゃんを酷い目に遭わせて・・・覚悟はできてますよね?」
可愛いトーンはそのままだが、モジモジとした引っ込み思案な様子が消えている。とはいえ、その口調からは、野蛮な様子や無秩序な感じは受けない。今までのユリと、基本的には変わらないのだ。
ただ、闘志が大幅に上がった。と、解釈すればいいだろう。
「い~い~ねぇ~! そうこなくっちゃねぇ~~。けど、やる気になったからって、勝てるとは限んないよォ。あんたの双子の姉貴は、手も足も出なかったんだからぁ~」
ゆらり・・・と影が前に出る。
獲物を一匹、血祭りにあげた細長い壊し屋は、さらなるご馳走を求めて、餓えた破壊欲を満たしにかかる。
黒い体躯に溢れる、黒い瘴気。壊し屋・葛原修司の望みは、肉体を破滅することが、泣き叫ぶ悲鳴を聞くことが、全て。それ以外にも、それ以上にも、何も要らないのだ。
「キヒ・・・キヒヒヒヒヒ・・・・・・・また、一匹、壊せるか・・・今日は大猟だな」
一歩、また一歩。
黒い槍が、童顔の少女ににじり寄る。その後ろでルージュの端を歪ませて、コギャルが死闘の観戦を決めこむ。
左手を軽く前に出すユリ。その指は自然な様子で開いている。力の感じさせぬ、それでいて無駄のない、最高の構え。
だが、同じ構えで姉のエリは敗れ去ったのだ――
タイ式キックボクシングの構えを取る壊し屋が、徐々に距離を詰める。密度を増す空間。交錯する緊張感が、熱い火花を飛ばす。
近付く。近付く。近付く。
射程距離に、入る。
黒い拳が、消える。
エリには見えなかった、右ストレートが顔面へ、当たる。
その瞬間、吹っ飛んだのは、壊し屋の黒い身体。
ブンッッッ!! ・・・・・という空気の摩擦音が、ちゆりの耳をかするや、2mの長身は地響きとともに、灰色の壁に激突していた。雑居ビルが震度2ほどで揺れる。
「へ?? ・・・・・・・・な、なに??」
「・・・『想気流柔術・気砲』・・・・・・」
何が起きたかわからぬ「闇豹」のつぶやきに応えるように、ユリが巨人を弾いた技名を告げる。それは、『新ファントムガール』、『黄色のファントムガール』がコウモリのミュータントを吹き飛ばした技を彷彿とさせる技だった。
「・・・キヒッ・・・双子とはいえ、妹の方が断然強いってオチかよ・・・」
コンクリートに埋まったまま、壊し屋がうなる。ボサボサの髪の向こうで、無慈悲な眼光が青白い炎を吐く。
「ならば・・・オレも久慈様から授かった力を、全開にさせてもらうぞ」
黒い霧が細長い全身から噴射され、嵐のような勢いで壊し屋を包んでいく。黒い龍となった乱気流は天に昇り、猛烈な悪寒を周辺に撒き散らす。
天が揺らぐ。地が震える。分子が怯えて、空が戦慄する。
闇からの使者の誕生に、この地の生きとし生ける者全てが、恐れおののき固唾を飲む。
そして、空に湧いた黒点がひとつ―――
轟音に乗せて、壊し屋を媒介としたミュータントが、若者の街の降り立った―――
「エリ・・・・・・ちょっと待ってて・・・行ってくるよ・・・・・・」
姉を一瞥し、奥義を極めた武道家の娘が、瞳を閉じて仁王立つ。
やがて、白く発光した少女の身体は、光の粒子となって散乱して消えていった。
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