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兄の愛情
2話
しおりを挟む初登校から数日が経った。俺はあれから毎日楽しく過ごし、野原とも親友と言えるほど仲良くなった。
「琳緒、次阿奈河先生の講義だよな?俺さ、課題不安なんだよ…琳緒は?ちゃんとやったか?」
「え?ああ…もちろん。心理学は得意な方だし」
俺と野原は話しながらも1番前の席に座る。談笑しながらお兄ちゃんを待っていると、不意に教室が凍りつくほどの負のオーラが流れ込んでくる。
「っ……ぁ」
負のオーラの正体は言うまでもなく、お兄ちゃんだった。サーっと自分の顔から血の気が引いていくのがわかる。
やらかした。俺と野原の距離は肩が触れ合うほど近い。ここ数日は野原に遊びに誘われたりと、何かとお兄ちゃんに会えていなかったのだ。
「琳緒、お兄ちゃんの所においで」
「お、お兄ちゃ、「早く」…っはい…」
お兄ちゃんに逆らえる筈もなく、俺は楓雅の動揺した声も聞かずにお兄ちゃんの所に行く。
「琳緒、悪い子はどこかな?お兄ちゃんの言うこと聞かないとダメだよね?」
「ご、ごめんなさ…!お兄ちゃ、俺…っ!?」
続きを言わせないとばかりに、お兄ちゃんは俺を強く抱き締めた。腰と肩に回された腕はミシミシと叫ぶ俺の骨を無視してさらに強く締め付けてくる。
ザワザワとする教室のよりもうるさい心臓の音。それはお兄ちゃんへの気持ちからくるものなのか、それとも恐怖からくるものなのか、俺にはわからなかった。
「琳緒、私はちゃんと教えたよね。琳緒はお兄ちゃんのかわいい弟。琳緒はお兄ちゃんのモノ。琳緒はお兄ちゃんのことだけ見て、お兄ちゃんとだけ話して、お兄ちゃんの声だけ聞けばいい…そうだよね?」
俺だけにしか聞こえないが、ハッキリと教え込むように耳元で言われる。その声は低く、有無を言わせない。その洗脳するような言葉は、俺には日常茶飯事だった。
「琳緒、返事は?」
「っは、はい…」
低く、地面を這うような声は俺の背筋をゾクゾクさせる。
お兄ちゃんの背中に回された俺の手は、いつの間にかお兄ちゃんの服を乱暴に、しかし弱々しく掴んでいた。その手は震え、何度もお兄ちゃんの服を掴み直した。
「っ…ふふ、琳緒は本当にかわいいね…っと」
「んわ!?ちょ、なに…!?」
不意に、ひょいとお兄ちゃんに抱き上げられる。降ろしてもらおうともがくも、お兄ちゃんの力には敵わなかった。
「すみません、用事を思い出したので今日は休講にします。前回の課題は各自集めて私の研究室に待ってきてください」
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