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兄の愛情
1話
しおりを挟む4月。大学の入学式を終えて初登校。
俺は初めての講義にドキドキしていた。もちろん、初めての講義に初めて会う人々。緊張しないわけがない。
しかし、そんなことよりも気にしていることがある。
「静かに。今日からあなた達の心理学を担当する、人文社会学部の阿奈河那良人です」
ザワザワとした教室がシーンと静まり返るほどハッキリと、低い声が響く。
教壇に立つ教授は1度辺りを見回してから一点を見つめる。
その目線の先、それは……
「琳緒、ちゃんと一人で来れて偉いね……でも、どうしてそんなに遠くに座ってるの?」
教授はそう言うと、1番後ろに座っている俺に近づいてくる。周りの学生は再びザワザワし始め、俺と教授の関係を噂し始める。
「お、お兄ちゃん……その、みんな、見てるから…」
「そんなのは関係ない、そうだよね?琳緒は私のかわいい弟なんだから」
教授、基お兄ちゃんはくい、と俺の顎を掴んで強制的に目を合わせる。有無を言わせないその目はどこまでも暗い。
「おいで、琳緒」
「……っ、、おに、ちゃ…」
お兄ちゃんに言われると、自分の意思とは関係なく勝手に身体が動く。そのままお兄ちゃんに連れられ、1番前の席に座らされる。
「琳緒は本当にいい子だね。これからはお兄ちゃんの講義は1番前に座るんだよ」
「ぁ、うん…」
お兄ちゃんは1度俺の頭を撫でてから、再び周りを見渡す。
他の学生の目線が痛い。
「さて、講義を始めますよ。静かにしなさい」
再びお兄ちゃんの低い声が響く。声は聞こえなくなったものの、俺を見つめる目線は変わらず痛い。
______________________
______________
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「今日はここまでです。課題は次までにやってきなさい。いいですね?」
お兄ちゃんはそう言うと、すぐに教室を出ていく。
「っなぁ、お前!教授の弟なのか!?」
「阿奈河先生の弟さんって本当!?ねぇねぇ、阿奈河先生ってどんな人が好みなの!?」
お兄ちゃんがいなくなると俺の周りに人集りができる。学生がそれぞれ口を開くが、出てくる言葉は全てお兄ちゃんに関することだけだった。
「え、えと…うん…お兄ちゃん、、だよ?」
「うわ、マジかよ…!てかそういえば、お前の名前は?確か…りか?だっけか?」
「……琳緒だよ」
俺ってそんなに女の子っぽいか?と自身の顔に少し不満を覚える。
戸惑いながらも学生の質問に答えていると、いつの間にか1人の男子学生と2人きりになっていた。彼は野原 楓雅と名乗った。
「とにかく、よろしくな琳緒!大学生活は人生の夏休みって言うし、楽しもうぜ!」
「……うん、よろしく…楓雅」
肩を組んでニカッと笑う野原は、よく見ると顔がいい。まぁ、お兄ちゃんには劣るが……
不安だった大学生活は、彼のお陰で楽しくなりそうだ。
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