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第1章「異世界と狂戦士」
「狂戦士」
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「あら?バンドウさんじゃない?一杯やっていかない??」
「ご、ごめんね!ギルドに呼ばれてるんだ」
「そうなの?それはしょうがないわね。また暇なときねっ」
「う、うん…」
通りを小走りで行く男は酒場の娘に呼び止められるも、先を急いでいるようで"ぎこちなく"あしらっては通り過ぎて行く。
「あら?バンドウさんだわ!」
「素敵…格好いいわよね~」
道を行く男の姿を見るや否や、通りにいた女性たちは一斉に彼に注目し、思い思いの声を上げる。
それも無理はないだろう。純金を思わせるかのような美しい黄金色の艶めいた髪。大きな瞳に高い鼻。端正なルックスは世間で言うところの"黄金比率"を体現している。それは"王子様"と形容するのがぴったりであり、清潔さと気品さを見事に兼ね備えている。そして180センチ後半ほどの高身長には身なりの良さを感じさせる高価な純白の絹のマント。
彼ほどの男とすれ違えば、世に振り向かない女性はいないだろう。
…。
そして、その金髪でイケメンな彼こそがこの俺!阪東 壱成(ばんどう いっせい)の生まれ変わった姿なのだ!!
信じられないとは思うが、なんと俺は生まれ変わり…俗に言う転生とやらだろうか?…をしてしまったみたいなのである。
しかも新たに生を授かったこの世界は、どうやら地球とは"かなり"異なる世界らしく…なんとゲームの中の世界のように、魔法にドラゴンとファンタジー要素満載の異世界だったのだ。
生活の中の至る所に魔法やそれに関する類のものが見られ、一生発光し続ける鉱石や透明になることが出来るマントなど如何にもファンタジーっぽいものがありとあらゆる所にあるのだ。
まあ、今挙げた羽織れば透明になることが出来るマントなんかは太古の遺跡や鉱山などから偶然発見される"古代具(アーティファクト)"と呼ばれるもので、一般人がそうやすやすと見る事は出来ない物なのだが…
そんな全く別の新しい世界に生まれた俺は、どうやら赤ん坊の時に道端に捨てられていたらしく、現在の年齢である15歳になるまで孤児として孤児院で育てられた。この世界では道端に赤ん坊が捨てられているなんて事は特に珍しい事でも無く、国の運営する孤児院は沢山の子供で溢れていた。
そして孤児として育てられた子供の大半が"冒険者"と呼ばれる職業に就く。正確に言うと就くというか、冒険者になるほか無いと言った方が正しいか。後は街の衛兵や騎士団に入るなんて選択肢もあるが、ろくに栄養を摂ること無く育てられた貧弱な孤児院の子供が採用されるケースは少ないと聞く。まあ魔法の才能などがあれば話は別だろうけど。
そんな訳でつい先日、おれは15歳の誕生日を迎え孤児院を卒業(と言う名の強制退去)したのだ。そして俺は晴れて冒険者となった。
そして今は冒険者たちの活動拠点でもある"冒険者ギルド"に向かっているところである。
冒険者ギルドは三階建ての建物で、この世界においては高価な物とされているガラスや大理石などが用いられている立派な建物だ。
街のメインの通りに建てられていて、この街では一番大きな建物である。
ギルドに着いた俺は西部劇でよく目にするような木造で上下が開いている押し扉を開けて中へと入る。
すると…
「あら?こんにちはバンドウ様!今日はこの前のように"暴れたり"はされないですか?」
カウンターの受付嬢から声が聞こえてきた。
その声を聞いた俺は慌てて彼女の元へ駆けつける。
「ちょっと声が大きいですってリリアさん!冒険者は評判が命なんですからっ」
「ごめんなさい、からかってみただけですよ?ふふっ」
小悪魔の様にクスッと笑う彼女の名前はリリア。冒険者ギルドの受付嬢で冒険者たちからリリア嬢と呼ばれているギルドの看板娘的な存在だ。
身長は160後半はあるだろう高身長で、スタイル抜群。俗に言う、出るとこは出ていて引っ込むところは引っ込んでいる理想的なスタイルである。容姿は可愛い系というよりは綺麗系で、仕事をバリバリする感じのキャリアウーマンでありながら、今回のようにたまに可愛い一面を見せたりする…要は高スペックな女の人である。
駆け寄って来たリリア嬢からは、この世界ではあまり嗅ぐことの出来ない匂い…前世で俺が、なんの匂いかは分からないが兎に角綺麗な人から感じる同じような香りを勝手に"美人の匂い"と名付けていた香りがした。
この世界にも香水なんかあったりするんだろうか?それになんか髪もふわふわしているし…。
兎に角、リリア嬢は前世の俺ならば死ぬまで関わることの無いような女性だ。…実際死ぬまで無かったのだが。
「それで、この前の"あれ"は何だったんですか?バンドウ様、突然暴れ出すから大変だったんですよ?…それに私を押し倒して…」
リリア嬢は自身の金髪を指でくるくると弄りながら、わざとらしい上目遣いで俺の目を見つめながら言う。
リリア嬢の言う"あれ"とは俺の身体に憑いた"呪い"の事を言っているのだろう。
前世の俺はブサイク、低身長、試験に落ち続ける能力のなさ…更には童貞と三拍子、、、いや最早何拍子だかわからないくらいマイナスな要素しか無かった。
逆に今世の俺はイケメン、高身長、更に冒険者ギルドの登録の際の技能テストではここ数年で一番の成績を残した。そう、前世とは真逆でプラス要素しか無いのだ。
生まれ変わって最高の人生を歩むはずだったのだが、ちょうど一年前くらいのことだった。幼少期からずば抜けてイケメンだった俺は、周りの女の子やお姉さん方からチヤホヤされて育った。俺が前世で渇望し続けた童貞卒業。それもこの姿、この環境ではそれを成し遂げるのも時間の問題だと思っていた。
しかし、身体が子供から"男"へと成長してきたある日のことだった。
いつものように同じ孤児院の同年代の女の子が俺の腕を掴んで遊びに行こうと引っ張ったのだ。その時に俺はこの忌々しい呪いに気づいた。
女の子に触れられた直後、俺は自分の中に湧き上がる謎の感情を抑えることが出来なくなって意識を失ったのだ。その後は聞いた話なのだが、俺の身体は全身の筋肉が隆起して僅かであるが巨大化し、周囲の物を壊して暴れまわっていたらしい。
そしてその現象は俺が女性に触れられる度に巻き起こった。時には近くの人に危害を与えることもあった為、本来なら16に卒業するはずの孤児院を俺は一年早く卒業させられたのだ。
そしてこの呪いはある一定の年齢層の女性に触れられることで発動するらしい。小さな女の子やお婆さんに触れられても何も起こらなかったことから、今のところはそのように仮定をしている。
この忌々しい呪いの所為で、俺は前世からの唯一の忘れ物である童貞卒業がかなり困難であるという事実に直面することなった。
生まれ変わって全てを手にできたと思っていたら、一番大事なものを手にする…いや、手放すか?ことはできないかもしれないのだ。これでは酷い人生を送っていた前世と同じである。
というか女性に触れるだけで理性を失って暴れ出すなんて…童貞卒業どころか日常生活にすら支障をきたすレベルだ。
まさかこれからずっとこの呪いがかかったままなんてことは無いだろうかと心配している。そして俺が冒険者になったのはこの呪いの解き方を探すためでもあるのだ。
そしてこの呪いの事は出来る限り隠していくつもりである。女性に触ると暴れ出すなんて危ない奴と関わってくれるような人は少ないと思うし、そんな奴はより上位のランクへ昇格することは出来ないからだ。
この情報機器が無い異世界において、より多くの信憑性の高い情報が入ってきやすいのは一般人では商人か高位の冒険者くらいである。金銭的に商人にはなれないので、俺がこの呪いを解いてくれるような有名な魔法使いやヒーラーの情報を手にするためには冒険者として成功するしか無いのだが…
この前早速やらかしてしまった。
冒険者ギルドで登録の手続きなどをしていた際に、ふと隣に座ってきたリリア嬢に腕を掴まれてしまったのだ。
本来の俺であれば、こんな可愛い子と触れ合えて有頂天な気分になるはずだが、この呪いのせいでそれも叶わず、更には呪いが発動してしまうという最悪の事態に陥ってしまったのだ。
不幸中の幸いというかなんというか、近くにいた上級冒険者が睡眠系の魔法で眠らせてくれたので事なきを得たらしいが…少なくともその時ギルドに居た数人には俺の呪いがバレてしまった恐れがある。
目の前のリリア嬢もその一人であり…
「リリアさん、押し倒してはいないんじゃないですか?暴れまわっていたとは思いますが…」
理性を失ってしまうとなりふり構わず暴れてしまうので、女性を押し倒すことは無い…と思う。まあ、羨ましいが…。
「あれ?記憶があるんですかバンドウ様?」
「いや…記憶は無いんですけど、その…経験上というか…な、何というか…はは」
外面は超イケメンな俺だが、中身は前世とそんなに変わりの無いブサメンな為、相変わらず綺麗な女の人と喋れるようなスキルは無いのだ。
「なーんだっ、そうなんですね。ふふっ。それにしてもバンドウ様、私が触れた後バンドウ様のお身体が少し大きくなっていたようにお見受けしたのですが?」
なんて鋭い…流石出来る女系受付嬢だ。
「い、いやぁー。き、気のせいだったりしませんかね?」
「いえ、確かに巨大化…とまではいきませんが、筋肉が異様に隆起していたのを見ました。それにこの柱…」
そう言ってリリア嬢は彼女後ろにある冒険者ギルドの建物の中で一番太い柱を指差す。
すると、その柱の一部が大きく抉られ欠けているのが分かった。
「この柱、ミスリル合金で出来ているのですが…暴れていたバンドウ様が素手で殴って…ほら、この様に」
「り、リリアさん!この話はもういいんじゃないですかね?!今日は仕事の紹介を…」
「狂戦士…」
リリアは壱成を見ながらそう呟いた。
「え?」
「バンドウ様が昔よく聞かされていたお話に出てくる"狂戦士"にそっくりなんです」
「リリアさん…狂戦士って一体…」
リリアはニコッと微笑むと、壱成に奥の部屋に来るように促す。
「バンドウ様?あまり人に聞かれたく無いのではないですか?」
彼女は一体…
「は、はい…」
こうして壱成は受付嬢リリアと共に、冒険者ギルド内にある個室へと入って行ったのだった。
「ご、ごめんね!ギルドに呼ばれてるんだ」
「そうなの?それはしょうがないわね。また暇なときねっ」
「う、うん…」
通りを小走りで行く男は酒場の娘に呼び止められるも、先を急いでいるようで"ぎこちなく"あしらっては通り過ぎて行く。
「あら?バンドウさんだわ!」
「素敵…格好いいわよね~」
道を行く男の姿を見るや否や、通りにいた女性たちは一斉に彼に注目し、思い思いの声を上げる。
それも無理はないだろう。純金を思わせるかのような美しい黄金色の艶めいた髪。大きな瞳に高い鼻。端正なルックスは世間で言うところの"黄金比率"を体現している。それは"王子様"と形容するのがぴったりであり、清潔さと気品さを見事に兼ね備えている。そして180センチ後半ほどの高身長には身なりの良さを感じさせる高価な純白の絹のマント。
彼ほどの男とすれ違えば、世に振り向かない女性はいないだろう。
…。
そして、その金髪でイケメンな彼こそがこの俺!阪東 壱成(ばんどう いっせい)の生まれ変わった姿なのだ!!
信じられないとは思うが、なんと俺は生まれ変わり…俗に言う転生とやらだろうか?…をしてしまったみたいなのである。
しかも新たに生を授かったこの世界は、どうやら地球とは"かなり"異なる世界らしく…なんとゲームの中の世界のように、魔法にドラゴンとファンタジー要素満載の異世界だったのだ。
生活の中の至る所に魔法やそれに関する類のものが見られ、一生発光し続ける鉱石や透明になることが出来るマントなど如何にもファンタジーっぽいものがありとあらゆる所にあるのだ。
まあ、今挙げた羽織れば透明になることが出来るマントなんかは太古の遺跡や鉱山などから偶然発見される"古代具(アーティファクト)"と呼ばれるもので、一般人がそうやすやすと見る事は出来ない物なのだが…
そんな全く別の新しい世界に生まれた俺は、どうやら赤ん坊の時に道端に捨てられていたらしく、現在の年齢である15歳になるまで孤児として孤児院で育てられた。この世界では道端に赤ん坊が捨てられているなんて事は特に珍しい事でも無く、国の運営する孤児院は沢山の子供で溢れていた。
そして孤児として育てられた子供の大半が"冒険者"と呼ばれる職業に就く。正確に言うと就くというか、冒険者になるほか無いと言った方が正しいか。後は街の衛兵や騎士団に入るなんて選択肢もあるが、ろくに栄養を摂ること無く育てられた貧弱な孤児院の子供が採用されるケースは少ないと聞く。まあ魔法の才能などがあれば話は別だろうけど。
そんな訳でつい先日、おれは15歳の誕生日を迎え孤児院を卒業(と言う名の強制退去)したのだ。そして俺は晴れて冒険者となった。
そして今は冒険者たちの活動拠点でもある"冒険者ギルド"に向かっているところである。
冒険者ギルドは三階建ての建物で、この世界においては高価な物とされているガラスや大理石などが用いられている立派な建物だ。
街のメインの通りに建てられていて、この街では一番大きな建物である。
ギルドに着いた俺は西部劇でよく目にするような木造で上下が開いている押し扉を開けて中へと入る。
すると…
「あら?こんにちはバンドウ様!今日はこの前のように"暴れたり"はされないですか?」
カウンターの受付嬢から声が聞こえてきた。
その声を聞いた俺は慌てて彼女の元へ駆けつける。
「ちょっと声が大きいですってリリアさん!冒険者は評判が命なんですからっ」
「ごめんなさい、からかってみただけですよ?ふふっ」
小悪魔の様にクスッと笑う彼女の名前はリリア。冒険者ギルドの受付嬢で冒険者たちからリリア嬢と呼ばれているギルドの看板娘的な存在だ。
身長は160後半はあるだろう高身長で、スタイル抜群。俗に言う、出るとこは出ていて引っ込むところは引っ込んでいる理想的なスタイルである。容姿は可愛い系というよりは綺麗系で、仕事をバリバリする感じのキャリアウーマンでありながら、今回のようにたまに可愛い一面を見せたりする…要は高スペックな女の人である。
駆け寄って来たリリア嬢からは、この世界ではあまり嗅ぐことの出来ない匂い…前世で俺が、なんの匂いかは分からないが兎に角綺麗な人から感じる同じような香りを勝手に"美人の匂い"と名付けていた香りがした。
この世界にも香水なんかあったりするんだろうか?それになんか髪もふわふわしているし…。
兎に角、リリア嬢は前世の俺ならば死ぬまで関わることの無いような女性だ。…実際死ぬまで無かったのだが。
「それで、この前の"あれ"は何だったんですか?バンドウ様、突然暴れ出すから大変だったんですよ?…それに私を押し倒して…」
リリア嬢は自身の金髪を指でくるくると弄りながら、わざとらしい上目遣いで俺の目を見つめながら言う。
リリア嬢の言う"あれ"とは俺の身体に憑いた"呪い"の事を言っているのだろう。
前世の俺はブサイク、低身長、試験に落ち続ける能力のなさ…更には童貞と三拍子、、、いや最早何拍子だかわからないくらいマイナスな要素しか無かった。
逆に今世の俺はイケメン、高身長、更に冒険者ギルドの登録の際の技能テストではここ数年で一番の成績を残した。そう、前世とは真逆でプラス要素しか無いのだ。
生まれ変わって最高の人生を歩むはずだったのだが、ちょうど一年前くらいのことだった。幼少期からずば抜けてイケメンだった俺は、周りの女の子やお姉さん方からチヤホヤされて育った。俺が前世で渇望し続けた童貞卒業。それもこの姿、この環境ではそれを成し遂げるのも時間の問題だと思っていた。
しかし、身体が子供から"男"へと成長してきたある日のことだった。
いつものように同じ孤児院の同年代の女の子が俺の腕を掴んで遊びに行こうと引っ張ったのだ。その時に俺はこの忌々しい呪いに気づいた。
女の子に触れられた直後、俺は自分の中に湧き上がる謎の感情を抑えることが出来なくなって意識を失ったのだ。その後は聞いた話なのだが、俺の身体は全身の筋肉が隆起して僅かであるが巨大化し、周囲の物を壊して暴れまわっていたらしい。
そしてその現象は俺が女性に触れられる度に巻き起こった。時には近くの人に危害を与えることもあった為、本来なら16に卒業するはずの孤児院を俺は一年早く卒業させられたのだ。
そしてこの呪いはある一定の年齢層の女性に触れられることで発動するらしい。小さな女の子やお婆さんに触れられても何も起こらなかったことから、今のところはそのように仮定をしている。
この忌々しい呪いの所為で、俺は前世からの唯一の忘れ物である童貞卒業がかなり困難であるという事実に直面することなった。
生まれ変わって全てを手にできたと思っていたら、一番大事なものを手にする…いや、手放すか?ことはできないかもしれないのだ。これでは酷い人生を送っていた前世と同じである。
というか女性に触れるだけで理性を失って暴れ出すなんて…童貞卒業どころか日常生活にすら支障をきたすレベルだ。
まさかこれからずっとこの呪いがかかったままなんてことは無いだろうかと心配している。そして俺が冒険者になったのはこの呪いの解き方を探すためでもあるのだ。
そしてこの呪いの事は出来る限り隠していくつもりである。女性に触ると暴れ出すなんて危ない奴と関わってくれるような人は少ないと思うし、そんな奴はより上位のランクへ昇格することは出来ないからだ。
この情報機器が無い異世界において、より多くの信憑性の高い情報が入ってきやすいのは一般人では商人か高位の冒険者くらいである。金銭的に商人にはなれないので、俺がこの呪いを解いてくれるような有名な魔法使いやヒーラーの情報を手にするためには冒険者として成功するしか無いのだが…
この前早速やらかしてしまった。
冒険者ギルドで登録の手続きなどをしていた際に、ふと隣に座ってきたリリア嬢に腕を掴まれてしまったのだ。
本来の俺であれば、こんな可愛い子と触れ合えて有頂天な気分になるはずだが、この呪いのせいでそれも叶わず、更には呪いが発動してしまうという最悪の事態に陥ってしまったのだ。
不幸中の幸いというかなんというか、近くにいた上級冒険者が睡眠系の魔法で眠らせてくれたので事なきを得たらしいが…少なくともその時ギルドに居た数人には俺の呪いがバレてしまった恐れがある。
目の前のリリア嬢もその一人であり…
「リリアさん、押し倒してはいないんじゃないですか?暴れまわっていたとは思いますが…」
理性を失ってしまうとなりふり構わず暴れてしまうので、女性を押し倒すことは無い…と思う。まあ、羨ましいが…。
「あれ?記憶があるんですかバンドウ様?」
「いや…記憶は無いんですけど、その…経験上というか…な、何というか…はは」
外面は超イケメンな俺だが、中身は前世とそんなに変わりの無いブサメンな為、相変わらず綺麗な女の人と喋れるようなスキルは無いのだ。
「なーんだっ、そうなんですね。ふふっ。それにしてもバンドウ様、私が触れた後バンドウ様のお身体が少し大きくなっていたようにお見受けしたのですが?」
なんて鋭い…流石出来る女系受付嬢だ。
「い、いやぁー。き、気のせいだったりしませんかね?」
「いえ、確かに巨大化…とまではいきませんが、筋肉が異様に隆起していたのを見ました。それにこの柱…」
そう言ってリリア嬢は彼女後ろにある冒険者ギルドの建物の中で一番太い柱を指差す。
すると、その柱の一部が大きく抉られ欠けているのが分かった。
「この柱、ミスリル合金で出来ているのですが…暴れていたバンドウ様が素手で殴って…ほら、この様に」
「り、リリアさん!この話はもういいんじゃないですかね?!今日は仕事の紹介を…」
「狂戦士…」
リリアは壱成を見ながらそう呟いた。
「え?」
「バンドウ様が昔よく聞かされていたお話に出てくる"狂戦士"にそっくりなんです」
「リリアさん…狂戦士って一体…」
リリアはニコッと微笑むと、壱成に奥の部屋に来るように促す。
「バンドウ様?あまり人に聞かれたく無いのではないですか?」
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こうして壱成は受付嬢リリアと共に、冒険者ギルド内にある個室へと入って行ったのだった。
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