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第1章「異世界と狂戦士」
「煩悩」
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ミットレイア王国の辺境。放棄された砦に住み着いたキングスライムを討伐する依頼を受けた壱成たち。
壱成たちが廃砦の中をしばらく進むと、突然わざとらしく転倒したマイ。
「何よこれ…ヌルヌルじゃないの…」
マイの身体にはヌルヌルの液体が付着していた。
「…うわっ。足元が…」
「ヌルヌルで気持ち悪いです…」
ローラが地面を照らすと、照らしている炎が反射するくらいそこら中濡れているようであった。
「ヘドロ?…なんだろうこれ」
口に出してみたものの、このヌルヌル半透明だしヘドロでは無いか。強いて言うなら…ローション?
「ちょっと~助けてよぉイッセイ君」
「ちょっとマイさん!そんなこと言ってヌルヌルの状態でバンドウさんに抱きつく気でしょ?ほら、私が起こしてあげるわ」
「ナイスですサラ。そのおばさんはふしだらな事しか考えてませんから、隙を見せては駄目ですよ?」
相変わらず口の悪いローラ。ザ学級委員長みたいな見た目なのに凄い毒舌だ。
壱成は事の成り行きを見守りながらも、しっかりと粘液まみれになったマイをバレないように凝視していた。
うんうん、中々良い眺めだ。…というか夢のような景色だ。ヌルヌル塗れになったスタイルの良いお姉さんを間近で観れるなんて…許されるならこのまま手を伸ばして気の赴くままにあの光り輝く二つのプリンを触りたいが…ちっ、本当に忌々しい呪いだ。
…ん?
煩悩と呪いの狭間で悩む壱成であったが、ふと自分の足に違和感を覚える。
なんか誰かに掴まれているような………っ!!!
「みんな!!直ぐに離れないと!!!このヌメヌメはスライムだっ!!」
壱成の足首はまとわりついた粘液によって拘束されていた。
大声に反応したのか辺りのヌルヌルは一斉に動き出す。一箇所に集まっていくヌルヌル…それは次第に砦の一室を覆い尽くす程の巨大な塊へと姿を変えていく。
「きゃぁぁあ!!」
「ちょっと!!なんなのこれ?!」
「っ!!火球(ファイヤーボール)!!」
三人娘はヌメヌメに引きずり込まれるような形で引っ張られる。しかしローラが咄嗟に唱えた魔法によって足だけ拘束されていた壱成とサラとローラはスライムの弱点でもある炎系の魔法の効果もあってひきづり込まれることは無かった。
しかし全身に粘液を浴びていたマイは…
「ちょっとぉお!!何よこれぇぇえ!!」
「うぉぉお!!」
粘液に引っ張り上げられ宙釣りにされてしまった。しかも粘液が強い酸性なのか、服が溶け始めていたのだ。
ただでさえ露出の多かったマイの服は既に殆ど原型を留めていなかった。
「ちょっと何やってんのよ変態っ!!」
「そ、そそそそうですよ!!ハレンチです!不潔です!」
「そんなこと言ったってぇ~!!ちょっと助け…あぁん!」
何だっ?!今の声はっ?!?!
マイの方を見ると身を悶えさせているようだった。
「どうしたの?!何が…」
「す、スライムが身体中を…んっ!」
どうやらスライムが身体をまさぐっているようだ。
うーむ。このままずっと眺めていたい。
「バンドウさん?!どうする?!彼女を助けないとっ!」
「私の魔法で一掃すべきです!」
「い、いやローラ?それだとマイさんまで消し飛んじゃう…。でも俺のスキルはこのデカイ粘液の塊には多分効かないしな…どうしよう」
本当はスライムに好き勝手やられるグラビアアイドルの様なプロポーションの異世界ガールをずっと眺めていたいのだが、流石にそうはいかないか。でも本当に俺にはなす術無いしなぁ…。
「と、取り敢えずマイさんを助けましょう。俺とサラでキングスライムの注意を引いて、その隙にローラが魔法でマイさんを…」
「分かった!」
「了解です」
今のところローラの魔法以外に有効な攻撃手段が無いため、これが俺にできる精一杯か…。
マイが9等級でサラとローラは10等級だ。2人とも10等級の中ではかなり実戦慣れしている方ではあるが、やはり実力的には俺がなんとかしなければならないのだが…。
「お願いします!!私はおばさんの周辺を狙って魔法を撃ちますので」
キングスライムは砦の一室を埋め尽くす程の大きさである。倒すためには1個体に必ず1つは存在している感覚器官がどこにあるのか探す必要がある。感覚器官、いわゆる核を見つけないと空気中の魔力を元に永遠と分裂と自己再生を繰り返すのだ。
この薄暗い屋内でスライムの核を探すのは至難の技である。なのでキングスライム討伐の正攻法としては圧倒的な火力で広範囲を一気に攻撃しなければならないのだが…。それをするにも先ずはマイの救出か。
壱成とサラはキングスライムを斬りつけながら左右から大きく旋回する。
攻撃を通すことが目的ではなく、キングスライムの注意を逸らす為である。
巨大な粘液の塊は魔力に反応しているのか壱成とサラの方へと身体の一部であろう粘液の手を伸ばす。
「偉大なる火の精サラマンダーよ。我に堅忍と太白(たいはく)の魔を授け給え…火球(ファイヤーボール)!」
詠唱によって強化された火球がマイを拘束している周囲の粘液に直撃する。
「ちょっと!!私に当たりそうだったわよっ!?」
「うるさい…動かないで下さい。火球!!」
「ひぃぃい!!」
的確に周囲の粘液を攻撃するローラ。火球が当たった箇所は大量の煙を上げながら溶けていく。
「ナイスよローラ!あとは私が…加速(ファスト)!!」
身体強化の魔法を唱えたサラはキングスライムの身体を足場にしながらマイの元へ行く。
「うわっ!ヌメヌメで触りたくない…」
「ちょっと!!早く助け…ひゃんっ」
「変な声出さないでよ!!!もう、しょうがないんだから…よいしょっと」
「ひゃふぅんっ」
サラの手を借りて拘束の緩くなったスライムから抜け出し、地面に落ちるマイ。
2人はローラの元まで下がる。
「救出したわバンドウさん!!やっちゃって良いわよっ!!」
「お願いします!!私も魔法で援護しますので」
「もう全身ヌルヌルよぉ…イッセイ君!私の分もやっちゃってぇ!!」
全員の期待を一身に背負う壱成。
これまでマイが捕まっているから俺が我慢していたみたいな空気になっている。
しかしここまで言われて逃げるわけには…
「良し!!…や、やるかぁ!!」
威勢のない声を上げながら壱成はキングスライムに向かって行ったのだった。
壱成たちが廃砦の中をしばらく進むと、突然わざとらしく転倒したマイ。
「何よこれ…ヌルヌルじゃないの…」
マイの身体にはヌルヌルの液体が付着していた。
「…うわっ。足元が…」
「ヌルヌルで気持ち悪いです…」
ローラが地面を照らすと、照らしている炎が反射するくらいそこら中濡れているようであった。
「ヘドロ?…なんだろうこれ」
口に出してみたものの、このヌルヌル半透明だしヘドロでは無いか。強いて言うなら…ローション?
「ちょっと~助けてよぉイッセイ君」
「ちょっとマイさん!そんなこと言ってヌルヌルの状態でバンドウさんに抱きつく気でしょ?ほら、私が起こしてあげるわ」
「ナイスですサラ。そのおばさんはふしだらな事しか考えてませんから、隙を見せては駄目ですよ?」
相変わらず口の悪いローラ。ザ学級委員長みたいな見た目なのに凄い毒舌だ。
壱成は事の成り行きを見守りながらも、しっかりと粘液まみれになったマイをバレないように凝視していた。
うんうん、中々良い眺めだ。…というか夢のような景色だ。ヌルヌル塗れになったスタイルの良いお姉さんを間近で観れるなんて…許されるならこのまま手を伸ばして気の赴くままにあの光り輝く二つのプリンを触りたいが…ちっ、本当に忌々しい呪いだ。
…ん?
煩悩と呪いの狭間で悩む壱成であったが、ふと自分の足に違和感を覚える。
なんか誰かに掴まれているような………っ!!!
「みんな!!直ぐに離れないと!!!このヌメヌメはスライムだっ!!」
壱成の足首はまとわりついた粘液によって拘束されていた。
大声に反応したのか辺りのヌルヌルは一斉に動き出す。一箇所に集まっていくヌルヌル…それは次第に砦の一室を覆い尽くす程の巨大な塊へと姿を変えていく。
「きゃぁぁあ!!」
「ちょっと!!なんなのこれ?!」
「っ!!火球(ファイヤーボール)!!」
三人娘はヌメヌメに引きずり込まれるような形で引っ張られる。しかしローラが咄嗟に唱えた魔法によって足だけ拘束されていた壱成とサラとローラはスライムの弱点でもある炎系の魔法の効果もあってひきづり込まれることは無かった。
しかし全身に粘液を浴びていたマイは…
「ちょっとぉお!!何よこれぇぇえ!!」
「うぉぉお!!」
粘液に引っ張り上げられ宙釣りにされてしまった。しかも粘液が強い酸性なのか、服が溶け始めていたのだ。
ただでさえ露出の多かったマイの服は既に殆ど原型を留めていなかった。
「ちょっと何やってんのよ変態っ!!」
「そ、そそそそうですよ!!ハレンチです!不潔です!」
「そんなこと言ったってぇ~!!ちょっと助け…あぁん!」
何だっ?!今の声はっ?!?!
マイの方を見ると身を悶えさせているようだった。
「どうしたの?!何が…」
「す、スライムが身体中を…んっ!」
どうやらスライムが身体をまさぐっているようだ。
うーむ。このままずっと眺めていたい。
「バンドウさん?!どうする?!彼女を助けないとっ!」
「私の魔法で一掃すべきです!」
「い、いやローラ?それだとマイさんまで消し飛んじゃう…。でも俺のスキルはこのデカイ粘液の塊には多分効かないしな…どうしよう」
本当はスライムに好き勝手やられるグラビアアイドルの様なプロポーションの異世界ガールをずっと眺めていたいのだが、流石にそうはいかないか。でも本当に俺にはなす術無いしなぁ…。
「と、取り敢えずマイさんを助けましょう。俺とサラでキングスライムの注意を引いて、その隙にローラが魔法でマイさんを…」
「分かった!」
「了解です」
今のところローラの魔法以外に有効な攻撃手段が無いため、これが俺にできる精一杯か…。
マイが9等級でサラとローラは10等級だ。2人とも10等級の中ではかなり実戦慣れしている方ではあるが、やはり実力的には俺がなんとかしなければならないのだが…。
「お願いします!!私はおばさんの周辺を狙って魔法を撃ちますので」
キングスライムは砦の一室を埋め尽くす程の大きさである。倒すためには1個体に必ず1つは存在している感覚器官がどこにあるのか探す必要がある。感覚器官、いわゆる核を見つけないと空気中の魔力を元に永遠と分裂と自己再生を繰り返すのだ。
この薄暗い屋内でスライムの核を探すのは至難の技である。なのでキングスライム討伐の正攻法としては圧倒的な火力で広範囲を一気に攻撃しなければならないのだが…。それをするにも先ずはマイの救出か。
壱成とサラはキングスライムを斬りつけながら左右から大きく旋回する。
攻撃を通すことが目的ではなく、キングスライムの注意を逸らす為である。
巨大な粘液の塊は魔力に反応しているのか壱成とサラの方へと身体の一部であろう粘液の手を伸ばす。
「偉大なる火の精サラマンダーよ。我に堅忍と太白(たいはく)の魔を授け給え…火球(ファイヤーボール)!」
詠唱によって強化された火球がマイを拘束している周囲の粘液に直撃する。
「ちょっと!!私に当たりそうだったわよっ!?」
「うるさい…動かないで下さい。火球!!」
「ひぃぃい!!」
的確に周囲の粘液を攻撃するローラ。火球が当たった箇所は大量の煙を上げながら溶けていく。
「ナイスよローラ!あとは私が…加速(ファスト)!!」
身体強化の魔法を唱えたサラはキングスライムの身体を足場にしながらマイの元へ行く。
「うわっ!ヌメヌメで触りたくない…」
「ちょっと!!早く助け…ひゃんっ」
「変な声出さないでよ!!!もう、しょうがないんだから…よいしょっと」
「ひゃふぅんっ」
サラの手を借りて拘束の緩くなったスライムから抜け出し、地面に落ちるマイ。
2人はローラの元まで下がる。
「救出したわバンドウさん!!やっちゃって良いわよっ!!」
「お願いします!!私も魔法で援護しますので」
「もう全身ヌルヌルよぉ…イッセイ君!私の分もやっちゃってぇ!!」
全員の期待を一身に背負う壱成。
これまでマイが捕まっているから俺が我慢していたみたいな空気になっている。
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