【R15】Time Latency

桐生彩音

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シリーズ002

006

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 だが、彼女は気づいてしまった。
『俺の異能はな、父親と同じものらしい。そして、その父親に酷い目に合わされたのが、俺の育ての親とその仲間達だ。だから酒が入ると、養母エルザにその時の話を散々聞かされた。……だから過信できないんだよ』
『いのうもちになるほうほうはふたつあるけど、じょうけんはひとつだけ。……じぶんのちにまものやまぞくのちをまぜること』
 そして、似た異能を持つモノへの心当たりが加わり、理性で止める暇もなく、フランソワーズの本能が一つの結論を導いてしまった。
「まさか、あの異能は……」




「よっと!」
 二人掛かりで向けられた短剣4本を、メレディスは十字槍を器用に回して弾き飛ばした。そのまま遠心力で石突をまとめて叩き込み、暗殺者を片付けていく。
「お前、素手の方が強くなかったっけ?」
「流石にまとめて来られると、得物使わないと追いつかないんだよっ!」
 次いで上から下へ槍を振って、武器を叩き落とした暗殺者の顎を掌底で打ち抜いたメレディスは、一度跳ねるように後方へ飛び退く。ライも剣を振ってから、別の暗殺者を蹴飛ばして距離を置いた。
「数が多くて面倒だな……銃は?」
「エルザさんの所、整備中」
「代用くらい借りとけよな……」
 そして、相手は容赦なく銃を撃ち放ってくる。
 適当な建物の陰に隠れた直後に、繋がる音が周囲の物体のことごとくを弾き壊していく。
「あんなのあったっけ!?」
「エルザが昔作った機関銃ガトリングだ!! 大方ペイズにある工房からかっぱらってきたんだろう!!」
 もうあいつ等暗殺者じゃねえよ、という苦情は受け付けてもらえない。このままでは建物ごと貫かれるのも時間の問題だ。弾切れを狙おうにも、あれは確か上部に開いた穴に弾丸を入れて、銃身に移動させてから即座に発砲する仕組みの筈だ。撃ち手と補充要員、そして弾丸が箱であれば銃身が焼き崩れるまで撃ち続けられる。
「仕方ない、使うか……メル、反対側を走れ。その間に撃ち手をやる」
「いいけど、手早くね。流石に10秒くらいしか持ちそうにないし」
「……それだけあれば十分だ」
 メレディスと別れたライは、建物の陰を伝って別の路地裏から大通りに顔を出した。うまく横に出れたが、移動した分距離がある。
「届くな……」
 剣は移動中に鞘に納めた。単発銃も抜いて手元にある。
 選んだのは土属性徹甲弾、土の魔法で生み出された金属の弾頭は、あらゆる鉄を貫く。
「ふぅ…………よし」
 適当な硬貨を投げる。但し投げたのは、先程ライが走り抜けた建物の陰である。それもその筈、目的はメレディスへの合図だ。
 遅れて、機関銃ガトリングの銃声がズレ始めた。
 建物の陰から出てきたメレディスに銃口を合わせようとしたが、銃身の重さがあだとなっているのか、相手の移動速度に追いつけていない。
 別の対処手段を用いるだろうが、その思考を切り替えるまでが致命的な隙となる。
(……『Stand-by,DIVE!』)
 ライは脳内で命じた。しかしそれは、自身に対してではない。
 命じたのは、『時間』そのものに対してだ。



 そして命令した瞬間、ライの身体は水の流れの中に潜るように、時の流れの中に潜り込んだ……



 ライは大通りに飛び出したが、機関銃ガトリングの銃身が彼の方を向くことはない。いやむしろ、動く気配すらない。
 これがライ自身の異能、一時的に時の流れに干渉し、停止した空間を移動できる力。
 彼はその間に機関銃ガトリングに可能な限り接近していく。そして異能が切れ、時が動き出すと同時に発砲した。
 放たれた土属性徹甲弾は狙い違わず機関銃ガトリングの機関部に命中し、その機能を破壊する。
「キサッ――」
「遅えよっ!」
 呻く黒衣達に向けて片手で剣を一線、怯んだところを囮になっていたメレディスが駆け戻ってから追撃する。
 ライも片手に剣、もう片方に単発銃を構えて応戦したが、不利を悟ってか黒衣達は撤退し始めた。
「追いかける?」
「無駄だ」
 剣を仕舞い、単発銃の金具を操作して中折れの状態にしてから、空薬莢を排出した。しかしライは次の弾丸を装填することなく、銃身を元に戻している。
「やってもやらなくても、どうせまた来る。……全く、殺そうとするくらいなら、その殺意を直接『親父』にぶつければいいのにな」
 単発銃を腰に仕舞いながら、ライは後ろを向いた。しかし、視線を向けたのはメレディスではなかった。
「その辺りどう思うよ、『蒼薔薇の剣姫』殿」
「……隠す気はないのか?」
 何を今更、という具合にライは肩を竦める。
「どうせバレるんだ。だったら最初から話した方がいい。違うか?」
「……違わないな」
 暗闇から、フランソワーズが姿を現した。但し目付きは普段以上に剣呑であり、その両腕も腰の細剣レイピアを抜くために操っている。
「正直な話、最初はまさかと思っていた。しかし、異能持ちの在り方と今までの言動を重ね合わせると、嫌でも真実が目についてしまう」
「そんなもんだよ。世の中なんて」
 メレディスは一歩下がった。正直十字槍を差し込んで止めようとも考えたが、ライの一瞥を受けて下がらざるを得なかったのだ。
「父親と同じ異能、魔族との血の繋がり、そして……私がかつて戦った魔王『クェーブ』との経験が教えてくれた」
 実際のところ、フランソワーズ自身にも分からなかった。自分はどうすればいいのかを。
 だが、しかし、それでも言わなければならないと彼女自身も理解している。
「貴方が持つ異能は、『時を止める』……魔王と同じ力だ!!」
「正解……」
 そこでライは、ようやくフランソワーズに身体を向けた。武器を構えることもせず、ただ堂々と、



「…………俺は西の果てを支配する魔王、クェーブの息子だ」



 その正体を明かした。
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