13 / 14
シリーズ002
006
しおりを挟む
だが、彼女は気づいてしまった。
『俺の異能はな、父親と同じものらしい。そして、その父親に酷い目に合わされたのが、俺の育ての親とその仲間達だ。だから酒が入ると、養母にその時の話を散々聞かされた。……だから過信できないんだよ』
『いのうもちになるほうほうはふたつあるけど、じょうけんはひとつだけ。……じぶんのちにまものやまぞくのちをまぜること』
そして、似た異能を持つモノへの心当たりが加わり、理性で止める暇もなく、フランソワーズの本能が一つの結論を導いてしまった。
「まさか、あの異能は……」
「よっと!」
二人掛かりで向けられた短剣4本を、メレディスは十字槍を器用に回して弾き飛ばした。そのまま遠心力で石突を纏めて叩き込み、暗殺者を片付けていく。
「お前、素手の方が強くなかったっけ?」
「流石に纏めて来られると、得物使わないと追いつかないんだよっ!」
次いで上から下へ槍を振って、武器を叩き落とした暗殺者の顎を掌底で打ち抜いたメレディスは、一度跳ねるように後方へ飛び退く。ライも剣を振ってから、別の暗殺者を蹴飛ばして距離を置いた。
「数が多くて面倒だな……銃は?」
「エルザさんの所、整備中」
「代用くらい借りとけよな……」
そして、相手は容赦なく銃を撃ち放ってくる。
適当な建物の陰に隠れた直後に、繋がる音が周囲の物体の悉くを弾き壊していく。
「あんなのあったっけ!?」
「エルザが昔作った機関銃だ!! 大方国にある工房からかっぱらってきたんだろう!!」
もうあいつ等暗殺者じゃねえよ、という苦情は受け付けてもらえない。このままでは建物ごと貫かれるのも時間の問題だ。弾切れを狙おうにも、あれは確か上部に開いた穴に弾丸を入れて、銃身に移動させてから即座に発砲する仕組みの筈だ。撃ち手と補充要員、そして弾丸が箱であれば銃身が焼き崩れるまで撃ち続けられる。
「仕方ない、使うか……メル、反対側を走れ。その間に撃ち手をやる」
「いいけど、手早くね。流石に10秒くらいしか持ちそうにないし」
「……それだけあれば十分だ」
メレディスと別れたライは、建物の陰を伝って別の路地裏から大通りに顔を出した。うまく横に出れたが、移動した分距離がある。
「届くな……」
剣は移動中に鞘に納めた。単発銃も抜いて手元にある。
選んだのは土属性徹甲弾、土の魔法で生み出された金属の弾頭は、あらゆる鉄を貫く。
「ふぅ…………よし」
適当な硬貨を投げる。但し投げたのは、先程ライが走り抜けた建物の陰である。それもその筈、目的は囮への合図だ。
遅れて、機関銃の銃声がズレ始めた。
建物の陰から出てきたメレディスに銃口を合わせようとしたが、銃身の重さが仇となっているのか、相手の移動速度に追いつけていない。
別の対処手段を用いるだろうが、その思考を切り替えるまでが致命的な隙となる。
(……『Stand-by,DIVE!』)
ライは脳内で命じた。しかしそれは、自身に対してではない。
命じたのは、『時間』そのものに対してだ。
そして命令した瞬間、ライの身体は水の流れの中に潜るように、時の流れの中に潜り込んだ……
ライは大通りに飛び出したが、機関銃の銃身が彼の方を向くことはない。いやむしろ、動く気配すらない。
これがライ自身の異能、一時的に時の流れに干渉し、停止した空間を移動できる力。
彼はその間に機関銃に可能な限り接近していく。そして異能が切れ、時が動き出すと同時に発砲した。
放たれた土属性徹甲弾は狙い違わず機関銃の機関部に命中し、その機能を破壊する。
「キサッ――」
「遅えよっ!」
呻く黒衣達に向けて片手で剣を一線、怯んだところを囮になっていたメレディスが駆け戻ってから追撃する。
ライも片手に剣、もう片方に単発銃を構えて応戦したが、不利を悟ってか黒衣達は撤退し始めた。
「追いかける?」
「無駄だ」
剣を仕舞い、単発銃の金具を操作して中折れの状態にしてから、空薬莢を排出した。しかしライは次の弾丸を装填することなく、銃身を元に戻している。
「やってもやらなくても、どうせまた来る。……全く、殺そうとするくらいなら、その殺意を直接『親父』にぶつければいいのにな」
単発銃を腰に仕舞いながら、ライは後ろを向いた。しかし、視線を向けたのはメレディスではなかった。
「その辺りどう思うよ、『蒼薔薇の剣姫』殿」
「……隠す気はないのか?」
何を今更、という具合にライは肩を竦める。
「どうせバレるんだ。だったら最初から話した方がいい。違うか?」
「……違わないな」
暗闇から、フランソワーズが姿を現した。但し目付きは普段以上に剣呑であり、その両腕も腰の細剣を抜くために操っている。
「正直な話、最初はまさかと思っていた。しかし、異能持ちの在り方と今までの言動を重ね合わせると、嫌でも真実が目についてしまう」
「そんなもんだよ。世の中なんて」
メレディスは一歩下がった。正直十字槍を差し込んで止めようとも考えたが、ライの一瞥を受けて下がらざるを得なかったのだ。
「父親と同じ異能、魔族との血の繋がり、そして……私がかつて戦った魔王『クェーブ』との経験が教えてくれた」
実際のところ、フランソワーズ自身にも分からなかった。自分はどうすればいいのかを。
だが、しかし、それでも言わなければならないと彼女自身も理解している。
「貴方が持つ異能は、『時を止める』……魔王と同じ力だ!!」
「正解……」
そこでライは、ようやくフランソワーズに身体を向けた。武器を構えることもせず、ただ堂々と、
「…………俺は西の果てを支配する魔王、クェーブの息子だ」
その正体を明かした。
『俺の異能はな、父親と同じものらしい。そして、その父親に酷い目に合わされたのが、俺の育ての親とその仲間達だ。だから酒が入ると、養母にその時の話を散々聞かされた。……だから過信できないんだよ』
『いのうもちになるほうほうはふたつあるけど、じょうけんはひとつだけ。……じぶんのちにまものやまぞくのちをまぜること』
そして、似た異能を持つモノへの心当たりが加わり、理性で止める暇もなく、フランソワーズの本能が一つの結論を導いてしまった。
「まさか、あの異能は……」
「よっと!」
二人掛かりで向けられた短剣4本を、メレディスは十字槍を器用に回して弾き飛ばした。そのまま遠心力で石突を纏めて叩き込み、暗殺者を片付けていく。
「お前、素手の方が強くなかったっけ?」
「流石に纏めて来られると、得物使わないと追いつかないんだよっ!」
次いで上から下へ槍を振って、武器を叩き落とした暗殺者の顎を掌底で打ち抜いたメレディスは、一度跳ねるように後方へ飛び退く。ライも剣を振ってから、別の暗殺者を蹴飛ばして距離を置いた。
「数が多くて面倒だな……銃は?」
「エルザさんの所、整備中」
「代用くらい借りとけよな……」
そして、相手は容赦なく銃を撃ち放ってくる。
適当な建物の陰に隠れた直後に、繋がる音が周囲の物体の悉くを弾き壊していく。
「あんなのあったっけ!?」
「エルザが昔作った機関銃だ!! 大方国にある工房からかっぱらってきたんだろう!!」
もうあいつ等暗殺者じゃねえよ、という苦情は受け付けてもらえない。このままでは建物ごと貫かれるのも時間の問題だ。弾切れを狙おうにも、あれは確か上部に開いた穴に弾丸を入れて、銃身に移動させてから即座に発砲する仕組みの筈だ。撃ち手と補充要員、そして弾丸が箱であれば銃身が焼き崩れるまで撃ち続けられる。
「仕方ない、使うか……メル、反対側を走れ。その間に撃ち手をやる」
「いいけど、手早くね。流石に10秒くらいしか持ちそうにないし」
「……それだけあれば十分だ」
メレディスと別れたライは、建物の陰を伝って別の路地裏から大通りに顔を出した。うまく横に出れたが、移動した分距離がある。
「届くな……」
剣は移動中に鞘に納めた。単発銃も抜いて手元にある。
選んだのは土属性徹甲弾、土の魔法で生み出された金属の弾頭は、あらゆる鉄を貫く。
「ふぅ…………よし」
適当な硬貨を投げる。但し投げたのは、先程ライが走り抜けた建物の陰である。それもその筈、目的は囮への合図だ。
遅れて、機関銃の銃声がズレ始めた。
建物の陰から出てきたメレディスに銃口を合わせようとしたが、銃身の重さが仇となっているのか、相手の移動速度に追いつけていない。
別の対処手段を用いるだろうが、その思考を切り替えるまでが致命的な隙となる。
(……『Stand-by,DIVE!』)
ライは脳内で命じた。しかしそれは、自身に対してではない。
命じたのは、『時間』そのものに対してだ。
そして命令した瞬間、ライの身体は水の流れの中に潜るように、時の流れの中に潜り込んだ……
ライは大通りに飛び出したが、機関銃の銃身が彼の方を向くことはない。いやむしろ、動く気配すらない。
これがライ自身の異能、一時的に時の流れに干渉し、停止した空間を移動できる力。
彼はその間に機関銃に可能な限り接近していく。そして異能が切れ、時が動き出すと同時に発砲した。
放たれた土属性徹甲弾は狙い違わず機関銃の機関部に命中し、その機能を破壊する。
「キサッ――」
「遅えよっ!」
呻く黒衣達に向けて片手で剣を一線、怯んだところを囮になっていたメレディスが駆け戻ってから追撃する。
ライも片手に剣、もう片方に単発銃を構えて応戦したが、不利を悟ってか黒衣達は撤退し始めた。
「追いかける?」
「無駄だ」
剣を仕舞い、単発銃の金具を操作して中折れの状態にしてから、空薬莢を排出した。しかしライは次の弾丸を装填することなく、銃身を元に戻している。
「やってもやらなくても、どうせまた来る。……全く、殺そうとするくらいなら、その殺意を直接『親父』にぶつければいいのにな」
単発銃を腰に仕舞いながら、ライは後ろを向いた。しかし、視線を向けたのはメレディスではなかった。
「その辺りどう思うよ、『蒼薔薇の剣姫』殿」
「……隠す気はないのか?」
何を今更、という具合にライは肩を竦める。
「どうせバレるんだ。だったら最初から話した方がいい。違うか?」
「……違わないな」
暗闇から、フランソワーズが姿を現した。但し目付きは普段以上に剣呑であり、その両腕も腰の細剣を抜くために操っている。
「正直な話、最初はまさかと思っていた。しかし、異能持ちの在り方と今までの言動を重ね合わせると、嫌でも真実が目についてしまう」
「そんなもんだよ。世の中なんて」
メレディスは一歩下がった。正直十字槍を差し込んで止めようとも考えたが、ライの一瞥を受けて下がらざるを得なかったのだ。
「父親と同じ異能、魔族との血の繋がり、そして……私がかつて戦った魔王『クェーブ』との経験が教えてくれた」
実際のところ、フランソワーズ自身にも分からなかった。自分はどうすればいいのかを。
だが、しかし、それでも言わなければならないと彼女自身も理解している。
「貴方が持つ異能は、『時を止める』……魔王と同じ力だ!!」
「正解……」
そこでライは、ようやくフランソワーズに身体を向けた。武器を構えることもせず、ただ堂々と、
「…………俺は西の果てを支配する魔王、クェーブの息子だ」
その正体を明かした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
無属性魔法しか使えない少年冒険者!!
藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。
不定期投稿作品です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる