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シリーズ002
005
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「……で、あれはどういうこと?」
「ん、ミルズが合法ロリだから手を出したんだが、別に構わないだろう」
「そうじゃなくて」
深夜の人気のない大通りを、ライはメレディスと並んで歩いていた。話題はもちろん、先程の会話である。
「君、何か彼女に隠しているの?」
「……じゃなくて、いいかげんに気づかせようと思っただけだ」
立ち止まり、ライはメレディスに向き合う。
「今日まで付き合ってみて分かったんだが、あの女、何故異能持ちが生まれるのかを理解してないみたいなんだよ」
「知らないって、彼女一応、冒険者としても活動していたんだろう? だったら知らない筈は……」
だが、もし彼女が、フランソワーズが異能持ちとは無縁の生活を送り、かつ関わらないまま今日まで生き残っていたとしたら、それは……
「例え魔王討伐に加わったとしても、あの女がその事実を知らなければ、絶対に失敗する。『事情』を知っているお前がいる以上、今はっきりと分からせる必要がある」
「確かにそうだけど、しまったな……てっきり知っているものと思っていたのに」
メレディスは舌打ちしそうになるのを内心で押し留め、十字槍を担いでいない方の手で後ろ頭をガシガシと掻いた。
「まあ、仕方ないだろう。この辺りならまだともかく、国によっちゃあ異端と切り捨てて箝口令を敷くような事案だしな」
「それが裏目にでたのか……どうするかな?」
だからこそライは、これ幸いと一芝居打ったのだ。もし予想通りならば、今頃フランソワーズは、アイスを奢ってワザと店に残したミルズに聞いているだろう。
異能持ちとは、一体何者かを。
「ということは、やっぱり君の『事情』も?」
「ああ、まだ話してない。諦めるかくたばるかすると思ってたんだが、予想以上に喰らいついてやがる」
しかし、ライの異能を教えると言うことは、ライの過去を話すことになる。それを聞いた後の人間の行動は、ライ自身イヤと言うほど理解している。
「全く……未だに襲いかかってくるんだから厄介だよなっ!!」
ライとメレディスは、身体を九十度曲げるように振り返りながら、降り注いだ攻撃を回避した。
それぞれが武器を握り、闇夜に舞い降りた黒衣の集団に向き合う。
「……まだ狙われてたの?」
「いや、ここしばらくは無かったんだがな」
剣と十字槍の刃が、鈍く光を立てながら敵を……人間の暗殺者集団を睨みつけている錯覚に囚われる。
「どうやら力を溜めていたらしい。ついでだ、ちょっと付き合え」
「やれやれ……ホント、それも含めて」
自分も標的に加わっているだろう、と自らを諦めさせるように己の心を騙し、メレディスも思考を戦闘用に切り替えていく。
「……君の『父親』に文句を言わないと、割に合わないよ」
少し時を戻して、フランソワーズはミルズに問いかけていた。先程彼女が漏らした、とある発言について。
「あなたは先程、『長寿種族の血を被った』と言っていたが、どういうことだ?」
「ん? なんのこと?」
首を傾げる彼の奴隷に、フランソワーズは再度問いかけた。その間も、ミルズの胃の中にアイスが納められていく。
「いや、正直な話、私は異能持ちとはほとんど関わったことがないんだ。だから少し興味が出てな」
「……しらないの?」
異能持ちがどう生まれるのかを知らないと気づいたミルズは、空になった器を置いて、フランソワーズをじっと見つめた。
「いのうもちになる条件を、しりたいの?」
「……ああ、それ以上に」
ミルズに追加で何か頼むか、と問いかける。奴隷は遠慮なくアイスを注文する。
「漏れ聞こえてきた彼の『事情』というのに興味が出てきてな。本人の過去を暴くのは失礼だが、下手に勘ぐるままというのも収まりが悪い。……だから、知らない知識を得ることで自分を妥協させたいんだ」
「ふぅん……」
届いたアイスを頬張りながら、ミルズは指を二本立てて顔の前に置いた。
「いのうもちになるほうほうはふたつあるけど、じょうけんはひとつだけ。……じぶんのちにまものやまぞくのちをまぜること」
「まものやまぞくのち……魔物や魔族の血だとっ!?」
フランソワーズは思わず前のめりになるが、ミルズは我関せずとばかりにアイスを口に運んでいく。
「そう。みるずもむかし、きずだらけのときに、かぞくをころしたふれあでぇもんのちをかぶったから、いのうもちになったの」
「ふれあ、まさか、フレアデーモンか?」
フランソワーズの問いにミルズは頷いた。
その話は彼女自身も耳にしたことがある。
とある行商の一家がフレアデーモンという炎の化け物に襲われる話があった。家族は助からなかったが、護衛についていた冒険者達の活躍で辛うじて討伐されたらしい。
フレアデーモンとは魔族寄りの魔物で、高温の身体から炎を吐く高レベルの討伐対象だ。並の冒険者では例え水の魔法を用いても対抗することは困難だろう。
(まさか生き残って奴隷にされていたとはな……)
「そのちでかいりきにはなったけど、からだのねつがさがらなくて、そのままにするとにんげんのぶぶんがやけしんじゃうの」
「だからいつも、アイスを食べていたのか……」
確かに仕事に出る前後は必ずアイスを食べている。普段から聞く女性への優しさから、主人であるライが咎めないのは、おそらくこの事情のためだろう。
かつて初めて仕事についていった時にも話していた『許容範囲』とは、本当は『体調』ではなく、『アイスの消耗』のことだったと、フランソワーズは今ようやく気づくことになった。
「ということは、彼も何かの魔物の……ちょっと待ってくれ。確か方法は二つと言ったな?」
「うん、おややごせんぞさまがまぞくかまものなら、ちがまざるからいっしょ」
「魔族と人間の間に子供など……」
できなくはないだろうがあり得ない話だ。
確かにフランソワーズ自身、人間になりたがる魔物の話や、人間が好きで共に暮らしている魔族の話を聞くが、全てバットエンド、互いに不幸になる話しかない。
魔族の中に比較的人間と近い構造の身体を持つモノもいるだろうが、思想や文化が違い過ぎる。それだけ種族の壁が厚いのだ。
それを越えて子を成すなどできるわけがない。
「ん、ミルズが合法ロリだから手を出したんだが、別に構わないだろう」
「そうじゃなくて」
深夜の人気のない大通りを、ライはメレディスと並んで歩いていた。話題はもちろん、先程の会話である。
「君、何か彼女に隠しているの?」
「……じゃなくて、いいかげんに気づかせようと思っただけだ」
立ち止まり、ライはメレディスに向き合う。
「今日まで付き合ってみて分かったんだが、あの女、何故異能持ちが生まれるのかを理解してないみたいなんだよ」
「知らないって、彼女一応、冒険者としても活動していたんだろう? だったら知らない筈は……」
だが、もし彼女が、フランソワーズが異能持ちとは無縁の生活を送り、かつ関わらないまま今日まで生き残っていたとしたら、それは……
「例え魔王討伐に加わったとしても、あの女がその事実を知らなければ、絶対に失敗する。『事情』を知っているお前がいる以上、今はっきりと分からせる必要がある」
「確かにそうだけど、しまったな……てっきり知っているものと思っていたのに」
メレディスは舌打ちしそうになるのを内心で押し留め、十字槍を担いでいない方の手で後ろ頭をガシガシと掻いた。
「まあ、仕方ないだろう。この辺りならまだともかく、国によっちゃあ異端と切り捨てて箝口令を敷くような事案だしな」
「それが裏目にでたのか……どうするかな?」
だからこそライは、これ幸いと一芝居打ったのだ。もし予想通りならば、今頃フランソワーズは、アイスを奢ってワザと店に残したミルズに聞いているだろう。
異能持ちとは、一体何者かを。
「ということは、やっぱり君の『事情』も?」
「ああ、まだ話してない。諦めるかくたばるかすると思ってたんだが、予想以上に喰らいついてやがる」
しかし、ライの異能を教えると言うことは、ライの過去を話すことになる。それを聞いた後の人間の行動は、ライ自身イヤと言うほど理解している。
「全く……未だに襲いかかってくるんだから厄介だよなっ!!」
ライとメレディスは、身体を九十度曲げるように振り返りながら、降り注いだ攻撃を回避した。
それぞれが武器を握り、闇夜に舞い降りた黒衣の集団に向き合う。
「……まだ狙われてたの?」
「いや、ここしばらくは無かったんだがな」
剣と十字槍の刃が、鈍く光を立てながら敵を……人間の暗殺者集団を睨みつけている錯覚に囚われる。
「どうやら力を溜めていたらしい。ついでだ、ちょっと付き合え」
「やれやれ……ホント、それも含めて」
自分も標的に加わっているだろう、と自らを諦めさせるように己の心を騙し、メレディスも思考を戦闘用に切り替えていく。
「……君の『父親』に文句を言わないと、割に合わないよ」
少し時を戻して、フランソワーズはミルズに問いかけていた。先程彼女が漏らした、とある発言について。
「あなたは先程、『長寿種族の血を被った』と言っていたが、どういうことだ?」
「ん? なんのこと?」
首を傾げる彼の奴隷に、フランソワーズは再度問いかけた。その間も、ミルズの胃の中にアイスが納められていく。
「いや、正直な話、私は異能持ちとはほとんど関わったことがないんだ。だから少し興味が出てな」
「……しらないの?」
異能持ちがどう生まれるのかを知らないと気づいたミルズは、空になった器を置いて、フランソワーズをじっと見つめた。
「いのうもちになる条件を、しりたいの?」
「……ああ、それ以上に」
ミルズに追加で何か頼むか、と問いかける。奴隷は遠慮なくアイスを注文する。
「漏れ聞こえてきた彼の『事情』というのに興味が出てきてな。本人の過去を暴くのは失礼だが、下手に勘ぐるままというのも収まりが悪い。……だから、知らない知識を得ることで自分を妥協させたいんだ」
「ふぅん……」
届いたアイスを頬張りながら、ミルズは指を二本立てて顔の前に置いた。
「いのうもちになるほうほうはふたつあるけど、じょうけんはひとつだけ。……じぶんのちにまものやまぞくのちをまぜること」
「まものやまぞくのち……魔物や魔族の血だとっ!?」
フランソワーズは思わず前のめりになるが、ミルズは我関せずとばかりにアイスを口に運んでいく。
「そう。みるずもむかし、きずだらけのときに、かぞくをころしたふれあでぇもんのちをかぶったから、いのうもちになったの」
「ふれあ、まさか、フレアデーモンか?」
フランソワーズの問いにミルズは頷いた。
その話は彼女自身も耳にしたことがある。
とある行商の一家がフレアデーモンという炎の化け物に襲われる話があった。家族は助からなかったが、護衛についていた冒険者達の活躍で辛うじて討伐されたらしい。
フレアデーモンとは魔族寄りの魔物で、高温の身体から炎を吐く高レベルの討伐対象だ。並の冒険者では例え水の魔法を用いても対抗することは困難だろう。
(まさか生き残って奴隷にされていたとはな……)
「そのちでかいりきにはなったけど、からだのねつがさがらなくて、そのままにするとにんげんのぶぶんがやけしんじゃうの」
「だからいつも、アイスを食べていたのか……」
確かに仕事に出る前後は必ずアイスを食べている。普段から聞く女性への優しさから、主人であるライが咎めないのは、おそらくこの事情のためだろう。
かつて初めて仕事についていった時にも話していた『許容範囲』とは、本当は『体調』ではなく、『アイスの消耗』のことだったと、フランソワーズは今ようやく気づくことになった。
「ということは、彼も何かの魔物の……ちょっと待ってくれ。確か方法は二つと言ったな?」
「うん、おややごせんぞさまがまぞくかまものなら、ちがまざるからいっしょ」
「魔族と人間の間に子供など……」
できなくはないだろうがあり得ない話だ。
確かにフランソワーズ自身、人間になりたがる魔物の話や、人間が好きで共に暮らしている魔族の話を聞くが、全てバットエンド、互いに不幸になる話しかない。
魔族の中に比較的人間と近い構造の身体を持つモノもいるだろうが、思想や文化が違い過ぎる。それだけ種族の壁が厚いのだ。
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