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第二シリーズ
008 あれ
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アパートから出た二人は、その足で近くの公園に入り、そのまま公衆便所へと向かった。
「やっぱり、距離置かれてるな~」
「わかるの?」
「そこそこね。流石にうるさいところだと無理だけど、これくらい広くて静かなら結構遠くてもいけるかなぁ」
公衆便所に入り、多目的スペースに入り込んですぐに、二人は扉を閉めて折り畳みのベビー台を広げた。
「そいじゃ作戦会議~とその前に、クロ、頼んだものだして」
「これ?」
そう言われてクロが取り出したのは、小さなラジカセだった。粗大ゴミを修理されたもののため、ラジオ用のアンテナはなく、塗装もほとんどはげ落ちてはいるが、カセットテープを聞くくらいには役に立つ代物である。
「そうそう、じゃあこれ流しといて」
「いいけど。今時テープはないよね……」
直した張本人がテープをセットして再生ボタンを押すと、録音された中身から聞き慣れた艶のある声が、多目的スペース内に響き渡った。
「……これって、仕事で録ったの?」
「前に録音したいとか言う昭和なお客さんがいてね、面白そうだからダビングしてもらっちゃった」
きゃはきゃは笑いながら、いつもの私服化した制服を脱ぎ始めたリナは、アパートを出る前にスクバに詰めてきた地味目の服に着替え始めた。
「じゃあエロい声を聞いて逃げ出した、元々入っていた人ってことで出かけてくるから、クロは発信機と一緒に留守番しててね」
「いいけど……ばれないかな?」
「大丈夫大丈夫、女の子が男トイレに連れこんで、気持ちいいことしているようにしか聞こえないって」
「いや、だってこれ……」
クロが指摘したのは、テープの内容の方だった。
「……赤ちゃんプレイだよね。おじさんがバブバブ言っているように聞こえるし」
「ああ、あの時は仕事上がりにミサ達と笑ったな~」
着替え終わったリナは最後にクロが手入れしたカツラを被り、周囲の目を気にしながら外へ出た。
「まあ、セックスしてると思わせるのが目的だから、暫くそれで我慢しててね~」
「了解……はあ」
なにが悲しくて、という表情のクロが暇つぶしに持ってきていた新聞を広げるのを見てから、リナは扉を閉めた。
トイレから抜け出たリナは公園の入り口に立っている男達を見つけて、警戒するように足早に駆け去った。
「ん、おいあれ……」
「逃げたってより俺達に関わらないようにしているな。大方不審者対策だろ。発信機も動いてないし、いいから見張ってろ」
ご都合主義万歳、とリナは聞き取った男達の声に呟いてから、カオルの住んでいるマンションへと向かった。
夜明けまでまだ間があるが、マンションの前が見えると、一緒にカオルが立っているのを見つけてしまった。他に不審な車がないかと探していると、少し離れたコインパーキングの近くに男達がたむろしているのが見えた。
「あれかな~っと」
物陰に隠れつつ近づき、会話を盗み聞く。
内容は予想通り金融業者のそれだが、何故か男の一人に子供が生まれたことで盛り上がりを見せていた。
「うわぁ意外と家庭的……そんな中邪魔するのは気が引けるけど、まあ諦めてもらいますか」
スクバから拳銃を取り出す。ただし事前に取り付けたのか、減音器とLAMが装着されていた。
少し離れた場所に移動し、男達との間に車が入って、視界を妨げるのを確認してから、リナは引き金に指を掛けた。
「ごめんね~」
等と小声て呟きながら、リナは駐車されていた車やバイクのタイヤを全て撃ち抜いた。普段ならそこまでの精密射撃は不可能だが、LAMから伸びるレーザーで狙いを定め、暗闇でも、いや暗闇だからこそ光点が目立ち、簡単に当てることができていた。
減音器がうまく働き、また運よく相手にレーザー光を見られなかったため、最後までタイヤを撃ち抜くことができた。全ての車とバイクがパンクしたのを確認してから、リナはスクバに銃を仕舞った。
「さて、逃げますかね~」
少なくとも逃げられる可能性はできた。後は向こうの問題だが、これ以上はどうしようもない。
以上が、リナの気まぐれが起こしたことの顛末である。
「やっぱり、距離置かれてるな~」
「わかるの?」
「そこそこね。流石にうるさいところだと無理だけど、これくらい広くて静かなら結構遠くてもいけるかなぁ」
公衆便所に入り、多目的スペースに入り込んですぐに、二人は扉を閉めて折り畳みのベビー台を広げた。
「そいじゃ作戦会議~とその前に、クロ、頼んだものだして」
「これ?」
そう言われてクロが取り出したのは、小さなラジカセだった。粗大ゴミを修理されたもののため、ラジオ用のアンテナはなく、塗装もほとんどはげ落ちてはいるが、カセットテープを聞くくらいには役に立つ代物である。
「そうそう、じゃあこれ流しといて」
「いいけど。今時テープはないよね……」
直した張本人がテープをセットして再生ボタンを押すと、録音された中身から聞き慣れた艶のある声が、多目的スペース内に響き渡った。
「……これって、仕事で録ったの?」
「前に録音したいとか言う昭和なお客さんがいてね、面白そうだからダビングしてもらっちゃった」
きゃはきゃは笑いながら、いつもの私服化した制服を脱ぎ始めたリナは、アパートを出る前にスクバに詰めてきた地味目の服に着替え始めた。
「じゃあエロい声を聞いて逃げ出した、元々入っていた人ってことで出かけてくるから、クロは発信機と一緒に留守番しててね」
「いいけど……ばれないかな?」
「大丈夫大丈夫、女の子が男トイレに連れこんで、気持ちいいことしているようにしか聞こえないって」
「いや、だってこれ……」
クロが指摘したのは、テープの内容の方だった。
「……赤ちゃんプレイだよね。おじさんがバブバブ言っているように聞こえるし」
「ああ、あの時は仕事上がりにミサ達と笑ったな~」
着替え終わったリナは最後にクロが手入れしたカツラを被り、周囲の目を気にしながら外へ出た。
「まあ、セックスしてると思わせるのが目的だから、暫くそれで我慢しててね~」
「了解……はあ」
なにが悲しくて、という表情のクロが暇つぶしに持ってきていた新聞を広げるのを見てから、リナは扉を閉めた。
トイレから抜け出たリナは公園の入り口に立っている男達を見つけて、警戒するように足早に駆け去った。
「ん、おいあれ……」
「逃げたってより俺達に関わらないようにしているな。大方不審者対策だろ。発信機も動いてないし、いいから見張ってろ」
ご都合主義万歳、とリナは聞き取った男達の声に呟いてから、カオルの住んでいるマンションへと向かった。
夜明けまでまだ間があるが、マンションの前が見えると、一緒にカオルが立っているのを見つけてしまった。他に不審な車がないかと探していると、少し離れたコインパーキングの近くに男達がたむろしているのが見えた。
「あれかな~っと」
物陰に隠れつつ近づき、会話を盗み聞く。
内容は予想通り金融業者のそれだが、何故か男の一人に子供が生まれたことで盛り上がりを見せていた。
「うわぁ意外と家庭的……そんな中邪魔するのは気が引けるけど、まあ諦めてもらいますか」
スクバから拳銃を取り出す。ただし事前に取り付けたのか、減音器とLAMが装着されていた。
少し離れた場所に移動し、男達との間に車が入って、視界を妨げるのを確認してから、リナは引き金に指を掛けた。
「ごめんね~」
等と小声て呟きながら、リナは駐車されていた車やバイクのタイヤを全て撃ち抜いた。普段ならそこまでの精密射撃は不可能だが、LAMから伸びるレーザーで狙いを定め、暗闇でも、いや暗闇だからこそ光点が目立ち、簡単に当てることができていた。
減音器がうまく働き、また運よく相手にレーザー光を見られなかったため、最後までタイヤを撃ち抜くことができた。全ての車とバイクがパンクしたのを確認してから、リナはスクバに銃を仕舞った。
「さて、逃げますかね~」
少なくとも逃げられる可能性はできた。後は向こうの問題だが、これ以上はどうしようもない。
以上が、リナの気まぐれが起こしたことの顛末である。
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