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シリーズ001
006 勤務明けの日課
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「あ~疲れた……」
ディル君が帰った後、私は短槍を持ち、地味な装いに着替えてから娼館の庭に出た。あのビキニアーマーはもう二度と着ない。レオタード部分が完全に穴だらけだってのもあるけど。さすがにプレイでもあれはないわ。半分レイプごっこだったし。
短槍片手に出てきた私は、裏口近くに作られた掘っ立て小屋に近づいていく。小屋といっても、申し訳程度に立てた屋根の下に椅子を置いただけだが。
そこには一人の少女がいた。
染料で染めた金髪を持ち、暗めの生地に派手な模様という矛盾した着流しで身を包んだ彼女は、鞘に納めた太刀を抱えて眠っていた。椅子の上にもかかわらず、無駄に器用なことで。
「……ぁあああ」
そして私が近づくと彼女、リナ・コモンズは盛大に欠伸をかましてから立ち上がった。
「おはよう、リナ」
「おふぁよぉ~ミーシャ」
歳も近いから、と私達は友達になった。
出会い? 朝食の呼び出しで来た時に話が合っただけよ。他の娼婦とも話はしていたらしいが、あまり馬は合わないからって、いつの間にか私の朝の日課にされちゃったけど。
「じゃあ始めますかね……ぁぁ」
軽く欠伸をかましてから、リナは鞘に納めたままの太刀を構えてきた。私も短槍を構えて、刃を彼女に向ける。最初は向けるのもどうかと思っていたが、それは一撃で認識を改めさせられた。
「あたっ!?」
「はい、遅~い」
私は叩かれた手の甲を摩ってから、再び短槍を構え直した。
元々、戦う力を欲しているわけではない。だが武器がある以上、自衛の手段として持つべきだと考えていた。それを話した途端、リナとこうやって訓練をする運びになったのだ。
「はいここまで、っと」
「あたた……」
短槍を一度置き、私はリナが座っていた椅子に腰掛けて一息ついた。
リナは『訓練替わり』と称して稽古をつけてくれるけれど、それは本気じゃない。なにせ実力差がありすぎるのだ。私相手じゃ猫とじゃれつく程度の労力しか感じていないに違いない。
「しっかしその短槍、旦那の形見でしょう。捨てようとは思わなかったの?」
「なんとなく、捨てる気になれなくてね……」
笑いたくば笑え。
おまけに武器類は高額な癖に、中古の買い取り額が異様に安いのが現状だ。魔法武器ならまだしも、ただの短槍では大した価値がない。
だったら使いつぶすしかないではないか。
「その割には、槍の価値を理解していないみたいだけどね」
「……え?」
リナが持っていた太刀と私の短槍を持ち替えると、なにやら持ち手の部分をいじり出した。軽くひねったように見えた後、その短槍は姿を変えた。
「え、そんなのあったの?」
「少し前の流行りだけどね」
聞けば、形状を変える機構を持つ武器が一時期流行っていたらしい。大半は頑強さを対価に取り付けているので実用性に欠けるが、形見の短槍、縦に伸びて変形した長槍はシンプルゆえに、一定の頑強さも備えているのだとか。
「状況に応じての長短変更。長槍は熟練の使い手ならまず防御せずに受け流すか躱す。短槍は機構を全て仕舞うからかえって防御が増す。大事に使えば結構いいものじゃん」
「さすが護衛、詳しいわね」
「たまたま、ね……」
長槍を短槍に戻して私に返してから、リナは再び太刀を手に持った。
「じゃあ、朝食にしよっか」
勤務明けに二人で朝食を摂り、それぞれ眠りに就く。
それが私達の、最近の日課だった。
ディル君が帰った後、私は短槍を持ち、地味な装いに着替えてから娼館の庭に出た。あのビキニアーマーはもう二度と着ない。レオタード部分が完全に穴だらけだってのもあるけど。さすがにプレイでもあれはないわ。半分レイプごっこだったし。
短槍片手に出てきた私は、裏口近くに作られた掘っ立て小屋に近づいていく。小屋といっても、申し訳程度に立てた屋根の下に椅子を置いただけだが。
そこには一人の少女がいた。
染料で染めた金髪を持ち、暗めの生地に派手な模様という矛盾した着流しで身を包んだ彼女は、鞘に納めた太刀を抱えて眠っていた。椅子の上にもかかわらず、無駄に器用なことで。
「……ぁあああ」
そして私が近づくと彼女、リナ・コモンズは盛大に欠伸をかましてから立ち上がった。
「おはよう、リナ」
「おふぁよぉ~ミーシャ」
歳も近いから、と私達は友達になった。
出会い? 朝食の呼び出しで来た時に話が合っただけよ。他の娼婦とも話はしていたらしいが、あまり馬は合わないからって、いつの間にか私の朝の日課にされちゃったけど。
「じゃあ始めますかね……ぁぁ」
軽く欠伸をかましてから、リナは鞘に納めたままの太刀を構えてきた。私も短槍を構えて、刃を彼女に向ける。最初は向けるのもどうかと思っていたが、それは一撃で認識を改めさせられた。
「あたっ!?」
「はい、遅~い」
私は叩かれた手の甲を摩ってから、再び短槍を構え直した。
元々、戦う力を欲しているわけではない。だが武器がある以上、自衛の手段として持つべきだと考えていた。それを話した途端、リナとこうやって訓練をする運びになったのだ。
「はいここまで、っと」
「あたた……」
短槍を一度置き、私はリナが座っていた椅子に腰掛けて一息ついた。
リナは『訓練替わり』と称して稽古をつけてくれるけれど、それは本気じゃない。なにせ実力差がありすぎるのだ。私相手じゃ猫とじゃれつく程度の労力しか感じていないに違いない。
「しっかしその短槍、旦那の形見でしょう。捨てようとは思わなかったの?」
「なんとなく、捨てる気になれなくてね……」
笑いたくば笑え。
おまけに武器類は高額な癖に、中古の買い取り額が異様に安いのが現状だ。魔法武器ならまだしも、ただの短槍では大した価値がない。
だったら使いつぶすしかないではないか。
「その割には、槍の価値を理解していないみたいだけどね」
「……え?」
リナが持っていた太刀と私の短槍を持ち替えると、なにやら持ち手の部分をいじり出した。軽くひねったように見えた後、その短槍は姿を変えた。
「え、そんなのあったの?」
「少し前の流行りだけどね」
聞けば、形状を変える機構を持つ武器が一時期流行っていたらしい。大半は頑強さを対価に取り付けているので実用性に欠けるが、形見の短槍、縦に伸びて変形した長槍はシンプルゆえに、一定の頑強さも備えているのだとか。
「状況に応じての長短変更。長槍は熟練の使い手ならまず防御せずに受け流すか躱す。短槍は機構を全て仕舞うからかえって防御が増す。大事に使えば結構いいものじゃん」
「さすが護衛、詳しいわね」
「たまたま、ね……」
長槍を短槍に戻して私に返してから、リナは再び太刀を手に持った。
「じゃあ、朝食にしよっか」
勤務明けに二人で朝食を摂り、それぞれ眠りに就く。
それが私達の、最近の日課だった。
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