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シリーズ002
005 勇者である以上、厄介ごとは常に付き纏う
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しかし私は忘れていた。
ここにいるのが勇者様ご一行である以上、厄介ごとに巻き込まれる可能性があったことを。
バンッ!
「ここに『ペリ』の勇者はいるか!?」
「むぐっ!?」
突然の出来事に、私は思わず掻っ込んでいた鶏肉を喉に詰まらせてしまった。ジャンヌが背中を叩きつつ水を飲ませてくれなければ、正直危なかったかもしれない。
男性陣が意識を店の入り口に向ける中、私は先程の『ペリの勇者』という言葉の意味を無意識に考えてしまう。
大陸世界『アクシリンシ』。円形に象られた大陸の上に、私達の暮らす世界がある。
その中心より東南の方角、大陸を巨大な円形とするならば、丁度半径の半分に当たる地点から東に位置するのが、私達の住む小国『ペリ』である。つまり『ペリの勇者』とは、小国『ペリ』が認め、保有している勇者のことであり、当代の勇者様であるディル君がそれに該当している。
その為、私が取りうる選択肢はこれだけだ。
「……勇者様、ゴー」
「いやミーシャさん、明らかに面倒事なんだけど!?」
もちろん分かっている。これでも死んだ旦那は元勇者だ。
だからこそ分かるのだ。面倒事は巻き込まれる前に離れて、第三者として楽しまなければ!
「どちらにしても危険なので、ミーシャさんは私から離れないで下さい」
「え、何が?」
「すっとぼけても無駄です。孤児院の教えがさっきの他にもあれば、絶対に『他人の振りして逃げる』的なことも混じっている筈ですから」
いい勘してる、この人。
「とりあえず、女性陣は下がってな」
「さてさて……どうなることやら」
それでも一応、私を守ろうとしてくれているのか、男性陣はジャンヌを残して、三人並んで声のした方へと向かっていく。
言葉のインパクトに気を持っていかれていたが、よくよく見てみると、店に入ってきたのは一人だけではなかった。
中心にいるやたら金ぴかなのが大将なのだろう、部下に下がるよう命じると、自分一人が前に出てきて、ディル君達の前に向かい立った。金髪のストレートを首辺りでまとめている美女だが、身体の方は金ぴかな武装(槍と盾と鎧、全部金ぴか)の上に旅装用だろう、白の外套を羽織っている。だが(金ぴか以外で)目を引くのは、外套の上、胸辺りに留められている勲章だった。出版社の過去の出版物で見たことがある。
確かあれは……
「私は公国騎士団第3大隊2番中隊副隊長にして『ペリ』の隣国『デステクレイェン』の勇者、アンジェ・デュク・ディケンズだ」
長い長い。
要するに騎士団を最低三つに分けた中にある三番目の大隊を更に分けた中隊の二番目で副隊長をやっている人ってことでしょう? 別国の話なんだから、『デステクレイェン』の勇者だけで名乗るには十分でしょうに。
まあ、向こうにとっては単なる称号というか、勲章程度の価値しかないって聞いたことがあるけれど、『郷に入っては郷に従え』という諺を知らないのだろうか、この金ぴか美女は。
「私の目の前に出てきたということは、『ペリ』の勇者か?」
「えっと……」
あ、フィンさんに肘でぶたれている。ディル君、もっと堂々とした方がいいよ。
「……『ペリ』の勇者、ディル・ステーシアです。横にいるのは、どちらも僕の仲間です」
よしよし、いくら見かけで分かるといっても、簡単に情報をしゃべらないのは高評価ね。目的が分からない以上、下手に相手に教えるとこちらが不利になってしまうから。
……いや、単に口下手なだけかもしれない。これだから童貞レベルの高い男は。
「……え、『ステーシア』?」
あれ、何か驚いているみたいだけど、人違い?
それともディル君の家名って有名だっけ?
勇者に選ばれたディル君以外に、ステーシアって家名を持つ人間の話なんて聞いたことないけど……
「『ロッカ』じゃ、『ジョセフ・ロッカ』じゃないのか!?」
それ私の旦那!
ここにいるのが勇者様ご一行である以上、厄介ごとに巻き込まれる可能性があったことを。
バンッ!
「ここに『ペリ』の勇者はいるか!?」
「むぐっ!?」
突然の出来事に、私は思わず掻っ込んでいた鶏肉を喉に詰まらせてしまった。ジャンヌが背中を叩きつつ水を飲ませてくれなければ、正直危なかったかもしれない。
男性陣が意識を店の入り口に向ける中、私は先程の『ペリの勇者』という言葉の意味を無意識に考えてしまう。
大陸世界『アクシリンシ』。円形に象られた大陸の上に、私達の暮らす世界がある。
その中心より東南の方角、大陸を巨大な円形とするならば、丁度半径の半分に当たる地点から東に位置するのが、私達の住む小国『ペリ』である。つまり『ペリの勇者』とは、小国『ペリ』が認め、保有している勇者のことであり、当代の勇者様であるディル君がそれに該当している。
その為、私が取りうる選択肢はこれだけだ。
「……勇者様、ゴー」
「いやミーシャさん、明らかに面倒事なんだけど!?」
もちろん分かっている。これでも死んだ旦那は元勇者だ。
だからこそ分かるのだ。面倒事は巻き込まれる前に離れて、第三者として楽しまなければ!
「どちらにしても危険なので、ミーシャさんは私から離れないで下さい」
「え、何が?」
「すっとぼけても無駄です。孤児院の教えがさっきの他にもあれば、絶対に『他人の振りして逃げる』的なことも混じっている筈ですから」
いい勘してる、この人。
「とりあえず、女性陣は下がってな」
「さてさて……どうなることやら」
それでも一応、私を守ろうとしてくれているのか、男性陣はジャンヌを残して、三人並んで声のした方へと向かっていく。
言葉のインパクトに気を持っていかれていたが、よくよく見てみると、店に入ってきたのは一人だけではなかった。
中心にいるやたら金ぴかなのが大将なのだろう、部下に下がるよう命じると、自分一人が前に出てきて、ディル君達の前に向かい立った。金髪のストレートを首辺りでまとめている美女だが、身体の方は金ぴかな武装(槍と盾と鎧、全部金ぴか)の上に旅装用だろう、白の外套を羽織っている。だが(金ぴか以外で)目を引くのは、外套の上、胸辺りに留められている勲章だった。出版社の過去の出版物で見たことがある。
確かあれは……
「私は公国騎士団第3大隊2番中隊副隊長にして『ペリ』の隣国『デステクレイェン』の勇者、アンジェ・デュク・ディケンズだ」
長い長い。
要するに騎士団を最低三つに分けた中にある三番目の大隊を更に分けた中隊の二番目で副隊長をやっている人ってことでしょう? 別国の話なんだから、『デステクレイェン』の勇者だけで名乗るには十分でしょうに。
まあ、向こうにとっては単なる称号というか、勲章程度の価値しかないって聞いたことがあるけれど、『郷に入っては郷に従え』という諺を知らないのだろうか、この金ぴか美女は。
「私の目の前に出てきたということは、『ペリ』の勇者か?」
「えっと……」
あ、フィンさんに肘でぶたれている。ディル君、もっと堂々とした方がいいよ。
「……『ペリ』の勇者、ディル・ステーシアです。横にいるのは、どちらも僕の仲間です」
よしよし、いくら見かけで分かるといっても、簡単に情報をしゃべらないのは高評価ね。目的が分からない以上、下手に相手に教えるとこちらが不利になってしまうから。
……いや、単に口下手なだけかもしれない。これだから童貞レベルの高い男は。
「……え、『ステーシア』?」
あれ、何か驚いているみたいだけど、人違い?
それともディル君の家名って有名だっけ?
勇者に選ばれたディル君以外に、ステーシアって家名を持つ人間の話なんて聞いたことないけど……
「『ロッカ』じゃ、『ジョセフ・ロッカ』じゃないのか!?」
それ私の旦那!
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