【R18】勇者の童貞レベルが高すぎる!

桐生彩音

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シリーズ003-include

番外編 ひどすぎる宣伝『援交少女、ホームレスを飼う』(前編)

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ああ・・またか・・・……」
 そうつぶやいた少女は、とりあえず目の前にいた男を蹴っ飛ばした。
 浮浪児が着るようなボロイワンピース一枚で、ベッドの上に寝かされていた。近くに医療器具どころか拘束具の類もないが、思い出す・・・・限り、それは当たり前だった。
「今時『剣と魔法の世界』って、ありきたりすぎると思うけど……まあ思い出して・・・・・しまったものはしょうがない」
 先程蹴飛ばした男の仲間だろう、何人もの男達が思い思いに武器をたずさえている。格好としては白衣を羽織はおった科学者然とした連中だが、一人残らずおつむの出来が悪そうな面をしていた。
「ふむ……」
 広々とした空間だが空気の流れは悪く、照明も人工的なものしか見当たらない。おそらく地下だろう。使えそうな武器は地面に落ちている小さなナイフ。鋭さと刃の小ささから見て、用途は医療用のメスに近いのかもしれない。
(まあ、武器があるだけましか。さて……)
 軽く足を持ち上げ、一気に叩きつける。それだけで、自分の身体・・・・・について理解できてしまった。
「そんじゃ……久々に暴れてみますかぁ!」
 そして少女は……ナイフ一本で地下組織を壊滅させた後、姿を消した。



 そして月日は流れた。
「ちと古いが、要望通りの品だろう?」
「無銘か……」
 街にある武器屋の一つ、その中でも特に小さくて古く、訳有りの品を扱うことの多い店にリナ・コモンズはいた。娼館の護衛として働く彼女だが、それ自体は一時的なものに過ぎない。本来の目的を果たす為に、師匠とのいざこざで起きたほとぼりを冷ますついでに引き受けていたに過ぎなかった。
 そして目的の品、古びた小太刀をはじめとした武器を、リナは検分し始めた。引き抜かれた小太刀は研ぎ澄まされすぎていて、波紋が歪んでいた。しかし切れ味は本物で、鋼鉄の鈍い輝きを返してくる。
「長持ちしなさそうだけど……まあ、いっか」
「それ以上の物が欲しけりゃ、それこそ『東』に行くしかねえな」
「どっちにしても行くつもりだけどね~」
 小太刀を鞘に納め、太刀の代わりにいた。太刀の方は紐の結びを変え、肩に掛けられるようにしておく。着流しではあまり多くの武器をぶら下げることができないからだ。
 他の武器は手首に仕込める小刀やひょう、寸鉄のたぐいと身体に仕込める物ばかりだ。しかし今の着流しでは、あまり仕込むことができない。
 リナはたずさえていた布こしらえの鞄に、小太刀と寸鉄一本を除く全てを仕舞しまうと、代金をカウンターの上に置いた。
「……毎度」
 その後、リナは鞄と太刀を持って、店を後にした。
 このままミーシャ達のいる高級宿に向かうのもいいが、まだ用事はある。
「とはいえ、買い出しに行くには通り道なんだよね~」
 一先ず、とリナは別の用事を片付けてから、一度様子を見に行こうと予定を立てた。丁度、行き先はこの近くだ。
「さてさて……」
 入ったのは、小さな酒場だった。しかし外見はあまりにも荒れ果てており、他に客が来る様子はない。中にいたのは酒場の従業員と奥のテーブル席に一人。リナは迷わず、唯一いる客の向かいの席に着いた。
「……情報ネタは?」
「依頼されたどの要件も、めぼしい情報はないですね」
 リナの向かいにいるのは男だった。
 仕立てのいい黒の服をまとい、室内にも関わらず帽子を目深まぶかかぶっている情報屋は、ただ静かに首を振った。
「ただ、例の『薬品』に関してですが、この街でかつて起きた一件がまだ、片付いてないようです」
「どういうこと?」
 リナがいぶかしんでいると、男は一枚の絵を見せた。
「あなたが潜伏先にこの街を選んだ理由、地下組織の裏で手を引いていた首謀者がまた動き出しました。何人か裏の人間を雇った形跡があります」
「別口じゃないの?」
「それが……」
 言いよどむ男は、どうにか言葉を続けた。
「……どうもあの『薬品』が残っているかを、調べているらしくて」
「要するにあの女・・・は、この街とはもう繋がってないってことじゃ……ちょい待ち、そういえばその事件を片付けたのって」
「はい。この街の先代勇者、ジョセフ・ロッカです」
 それを聞き、リナはテーブルをドン、と叩いて立ち上がった。
 娼館でできた娼婦の友人ことミーシャ・ロッカの素性は、彼女の意とは裏腹に元々知っていた。おまけに当代の勇者も一緒にいる。そして、先代勇者があの『薬品』を処分したとなれば、万が一残っていたとしたら、国を除けば、あの二人が所持している可能性を疑うのは不思議じゃない。
 リナはそう結論付けると、鞄だけ置いて席を蹴った。
「続きは後! 娼館に勇者君の仲間がいるから即通報しといて!」
「ちょっ、お嬢・・!?」
 ぽろっと出た言葉に対して、リナは振り向きざまに寸鉄を放って答えた。
「……潜伏先劇団に変えようかな。演技力ザルだし」
 その男、リナの旧知・・は壁に刺さった寸鉄を引き抜くと、カウンターにいる従業員に修理代を投げてから裏口に向かった。
「頼むから素面しらふ出したの、組長・・にだけはばらさないでくれよ……」
 裏口から外に出るや、慌てて娼館の方へと駆けだしていく。
「……あの人・・・親馬鹿気味なんだよな。娘ができてからこっち」



 リナの予想通り、ミーシャ達は襲撃を受けていた。他にもいるかもしれないが、現状は宿から飛び出してきたディル・ステーシアと侵入者が刃を交えているだけだ。しかし、近くにミーシャの姿はない。おそらくはまだ、宿の中だろう。
「はい失礼っ!」
「わっ!?」
「なろっ!?」
 引き抜いた小太刀で相手の手甲剣を流してから、リナは改めてディルの様子を確認する。手に持っている武器は短剣のみ。寝間着のみ着用で防具の類は見られない。
「ミーシャは!?」
「まだ宿の中です!」
 それだけ聞けば十分、とばかりにリナはディルの身体を押した。
「短剣一本で勝てる相手じゃないっての! ワタシが相手するからミーシャ任せたっ!」
「ありがとうございますっ!」
 宿に駆け込むディルを背に、リナは小太刀を片手に、半身に構えた。この辺りでは見ないスーツ仕立ての侵入者は、右袖に仕込んでいた手甲剣を向けてくる。
「さっきの勇者よりかは、やばいか……?」
「少しは調子に乗ってもいいんじゃないかな~」
「……ふざけろ」
 小太刀と手甲剣が交わり、弾き合う。数合打ち付け合い、火花を散らしながら路地裏へと、二人並んで駆けていく。
「やっぱり使い手じゃねえか!? てめえ師匠おやじと同じ感じがするんだよっ!」
「このピチピチの美少女フェイスを見といて年寄り扱いすんなっ!」
「若いと思うなら死語ピチピチ言ってんな、こら!」
 古びているとはいえ、買ったばかりの小太刀がボロボロになる前に片付けなければならない。
(太刀の方は簡単には抜けない・・・・・・・・し、他の武器は急いでいたから置いてきちゃったし……ツッコミで寸鉄投げんじゃなかったっ!)
 刃が持たないと思い、リナはもう片手で小太刀のさやを抜いて構えた。
 鉄ごしらえなのが幸いした。手甲剣の斬撃を小太刀の代わりにさやで受け止めることで、どうにか刃を欠けさせないまま、攻撃をさばくことができている。
 だが依然いぜんとして、決め手に欠けている現状は変わらない。
「う~ん、ちょっとやばい?」
「その太刀は抜かねえのかよ?」
 手甲剣で肩掛けにしている太刀を指されるも、リナは泰然たいぜんとしていた。いや、そう見せかけていた。
「はっはっは……死に急ぎたけりゃ抜かせてみろ、ってね」
 はったりをかましているだけでは勝てない。最悪の場合は太刀を抜かなければならないだろう。だが、それはあくまで最後の手段だ。
(やっぱり重いって……太刀これ
 心の中でボヤキを落としてから、リナは一度、小太刀をさやに戻した。
居合いありか……刀使いのやることはみんな同じだな」
「それしかないからね~」
 着流しがまくれるのもいとわず、リナは構えた。鞘を左手に、刀の柄を右手に強く握り込み、
「ふぅ……」
 そして、力を抜いた。
「そう言えば、刀使いとやり合うことになったら、聞いてみたいことがあったんだけどさ……」
「へぇ……何?」
 すると、おもむろに手甲剣が外される。
 リナが落ちてゆく相手の武器を目だけで追っている最中、
「こいつは打ち落とせるかっ!?」
 侵入者は腰から小型の・・・自動拳銃・・・・を引き抜いて構えた。

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