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シリーズ004
003 よくある状況説明のまとめ
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……よし、まとまった。
「えっと、つまり……リナには前世の記憶があって」
「正確に言うと、ワタシが魔血錠剤の実験台にされて目が覚めたら、前世のことを思い出したってわけ」
「予想はしてたけど今はやめて状況が追いつかない!」
そんなことあるの?
実験してた人間とその実験台にされた孤児が、前世では母娘だったなんて可能性……
「まああの女の実験台なんて、前世含めたら二度目だしね。今更だって」
「どんな母娘!?」
やっば……正直勇者関連よりも興味深いんだけど。まるでどっかの物語の主人公並みじゃない。
「ワタシにとっちゃ、ただの『殺したい程憎い相手』ってだけだから、母娘に関してはどうでもいいんだけどね……かと言ってほっとくわけにもいかないし」
心の底から面倒臭そうに、リナは天井を向いたままぼやいている。
「前世の分含めて、やられた借りは返さないと気が済まないしね~。異能も得物もあるし……今度こそあの女にヤキ入れちゃる」
「……前世ではどうなったの?」
「父ちゃんが連れてった。多分水の中に沈めた」
エグッ!
「……え、お父さんとは、仲が良かったの?」
「まあ、話せば長いことながら……」
少なくとも、父親は比較的まともらしい。犯罪組織っぽいものの元締めとか、同じく転生して大陸の東で縄張りを拡大させている、とかは聞き流したけど。
これ以上、余計な怖い情報はいらない、ったらいらない!
「……と、まあ。ワタシのバックには父ちゃんがいるけど、けじめ位自分でつけないと、って未だに追いかけっこ中なのがワタシの今世」
「いろんな意味で波乱に満ちているのね。リナの人生って」
「まぁね~」
口調はいつも通り軽いが、恐らく、私の知らない感情が、今もリナの心を縛っているのだろう。じゃなきゃおっとり刀とはいえ、前世での母親を追っかけたりしないだろうし。
「……それで、どうするの?」
「どうする、って?」
そう返しはしたけど、どうすればいいのかは、自分自身がよく知っている。
結局は私がどうしたいか、だ。この件に関わって旦那の死の真相を知るか、命惜しさに逃げるか隠れるか。
選択肢はいくつもあるが、肝心なことは一つだけ。
「……勇者様に、何て言えばいいと思う?」
「知らない」
当てにならないな……知ってたけども。
「結局はミーシャがどうしたいかでしょ、ワタシはどっちでもいいし」
「……私囮にして、黒幕かその関係者を引っ張り出せればいいから?」
「当たり~」
本気で女を殴りたいと思ったのは、これが初めてだ!
……嘘です。孤児院時代に女同士の泥沼戦争からリアルファイトまで、あらゆる喧嘩をこなしていました。旦那も殴り倒したことがあります。子供の頃だけど、背後から棒きれで。
「まあ、別に勇者君でもいいんだけどね。確実性で選ぶなら、一度襲われたミーシャでしょう?」
「また来ると思う?」
「……少なくとも後二人、他に雇われたのはそれだけだって」
どこからの情報かは言わなかったけど、確信を持っての発言だから、本当にそれが最後かもしれない。
そもそも勇者とその仲間、そして娼館護衛のリナ以外に目立った実力を発揮している者の話はあまり聞かない。大抵がよその国の話だ。だから、辛うじてこの辺りにいた実力者で、犯罪者寄りの考えを持っていたのは、それだけなのかもしれない。
「逆に言えば後二人、片付けてしまえば……」
「手掛かりの有無に関わらず、この件はもうおしまい」
それが私の生存条件だ。
心当たりのない情報を握っていると思われている私が今後も生きていくには、低い確率の為に手間を掛けるのは得策じゃないと思わせるしかない。向こうの仕事に乗りそうな人間がこの国からいなくなれば、よそから探すなり新たな仕事人がこの国に来るのを待つなり、いちいち時間と手間を掛けなくてはならない存在だと思われるしか、私が助かる道はないのだ。
まあ、黒幕をぶっ殺せばいい話だけど、そんなのできるか。こちとら一介の娼婦だっての。
「まあこっちは元から正直に生きてるし、ミーシャも自分に素直になれば?」
「素直に、ね……」
そうなると……やることは一つだ。
「ごめん……ちょっと行ってくる」
「はいよ~……ああ、だた」
ベッドから起き上がり、部屋を出ようとする私の背中に、リナの声が当たる。
「娼館の敷地からは出ないでね。それ以上はワタシも警戒できないから」
「……本当に警戒できているの?」
思いっきりベッドの上で寝ている癖に、どうやって警戒しているのやら。
「えっと、つまり……リナには前世の記憶があって」
「正確に言うと、ワタシが魔血錠剤の実験台にされて目が覚めたら、前世のことを思い出したってわけ」
「予想はしてたけど今はやめて状況が追いつかない!」
そんなことあるの?
実験してた人間とその実験台にされた孤児が、前世では母娘だったなんて可能性……
「まああの女の実験台なんて、前世含めたら二度目だしね。今更だって」
「どんな母娘!?」
やっば……正直勇者関連よりも興味深いんだけど。まるでどっかの物語の主人公並みじゃない。
「ワタシにとっちゃ、ただの『殺したい程憎い相手』ってだけだから、母娘に関してはどうでもいいんだけどね……かと言ってほっとくわけにもいかないし」
心の底から面倒臭そうに、リナは天井を向いたままぼやいている。
「前世の分含めて、やられた借りは返さないと気が済まないしね~。異能も得物もあるし……今度こそあの女にヤキ入れちゃる」
「……前世ではどうなったの?」
「父ちゃんが連れてった。多分水の中に沈めた」
エグッ!
「……え、お父さんとは、仲が良かったの?」
「まあ、話せば長いことながら……」
少なくとも、父親は比較的まともらしい。犯罪組織っぽいものの元締めとか、同じく転生して大陸の東で縄張りを拡大させている、とかは聞き流したけど。
これ以上、余計な怖い情報はいらない、ったらいらない!
「……と、まあ。ワタシのバックには父ちゃんがいるけど、けじめ位自分でつけないと、って未だに追いかけっこ中なのがワタシの今世」
「いろんな意味で波乱に満ちているのね。リナの人生って」
「まぁね~」
口調はいつも通り軽いが、恐らく、私の知らない感情が、今もリナの心を縛っているのだろう。じゃなきゃおっとり刀とはいえ、前世での母親を追っかけたりしないだろうし。
「……それで、どうするの?」
「どうする、って?」
そう返しはしたけど、どうすればいいのかは、自分自身がよく知っている。
結局は私がどうしたいか、だ。この件に関わって旦那の死の真相を知るか、命惜しさに逃げるか隠れるか。
選択肢はいくつもあるが、肝心なことは一つだけ。
「……勇者様に、何て言えばいいと思う?」
「知らない」
当てにならないな……知ってたけども。
「結局はミーシャがどうしたいかでしょ、ワタシはどっちでもいいし」
「……私囮にして、黒幕かその関係者を引っ張り出せればいいから?」
「当たり~」
本気で女を殴りたいと思ったのは、これが初めてだ!
……嘘です。孤児院時代に女同士の泥沼戦争からリアルファイトまで、あらゆる喧嘩をこなしていました。旦那も殴り倒したことがあります。子供の頃だけど、背後から棒きれで。
「まあ、別に勇者君でもいいんだけどね。確実性で選ぶなら、一度襲われたミーシャでしょう?」
「また来ると思う?」
「……少なくとも後二人、他に雇われたのはそれだけだって」
どこからの情報かは言わなかったけど、確信を持っての発言だから、本当にそれが最後かもしれない。
そもそも勇者とその仲間、そして娼館護衛のリナ以外に目立った実力を発揮している者の話はあまり聞かない。大抵がよその国の話だ。だから、辛うじてこの辺りにいた実力者で、犯罪者寄りの考えを持っていたのは、それだけなのかもしれない。
「逆に言えば後二人、片付けてしまえば……」
「手掛かりの有無に関わらず、この件はもうおしまい」
それが私の生存条件だ。
心当たりのない情報を握っていると思われている私が今後も生きていくには、低い確率の為に手間を掛けるのは得策じゃないと思わせるしかない。向こうの仕事に乗りそうな人間がこの国からいなくなれば、よそから探すなり新たな仕事人がこの国に来るのを待つなり、いちいち時間と手間を掛けなくてはならない存在だと思われるしか、私が助かる道はないのだ。
まあ、黒幕をぶっ殺せばいい話だけど、そんなのできるか。こちとら一介の娼婦だっての。
「まあこっちは元から正直に生きてるし、ミーシャも自分に素直になれば?」
「素直に、ね……」
そうなると……やることは一つだ。
「ごめん……ちょっと行ってくる」
「はいよ~……ああ、だた」
ベッドから起き上がり、部屋を出ようとする私の背中に、リナの声が当たる。
「娼館の敷地からは出ないでね。それ以上はワタシも警戒できないから」
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