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シリーズ004
006 全部聞こえてたのか……
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「お帰り~勇者君振ったんだって?」
「……なんで知ってるの?」
「秘密~」
リナはベッドから起き上がり、見慣れない小太刀の手入れをしていた。耳掻きとかでよくある綿の玉っぽい何かを刃に当てているけど、あれってなんだろう……
「というか、本当に警戒していたの?」
「してたって~、というかお盛んだよね~外でヤるなんて」
「……千里眼的な何か?」
なんとなく、遠くの景色が見える異能なのかと思っていたが、リナは首を振って否定した。
「見えてたらミーシャ達の所に、ギリギリに駆けつけないって」
「ふぅん……じゃあ、どんな異能なの?」
「だから秘密だって~」
しかし私の中で、リナの異能について大体の予想はついてきた。
「……ところでさ。あの椅子に細工しなかった?」
「二人掛かりで盛られたら、流石に壊れるって」
「へぇ……椅子が壊れた音も聞いていたんだ」
一瞬、リナの動きが止まった。その後に『あ~』と変な声を出してから、近くに転がしていた鞘を拾い、小太刀を戻していた。
「……いつ気付いたの?」
「いや、ここに戻ってくるまで誰にも会わなかったし、今仕事中で誰も外見てないから……目じゃなければ耳かな、って」
「まあ、そゆこと……」
リナは小太刀を片手に持ち、弄びながら答えてきた。
「異常聴覚、って言うのかな? ワタシの異能のベースとなっているのは……まあ、それはいいや。とにかく、それで得た異能の一つが発達した聴覚ってわけ。だから敷地内なら、ちょっと集中すればギリギリ聞き取れるのよ」
「へぇ……ちょっと待って。ということは?」
「……ごめん、会話聞いてた」
うわ恥っずー誰か穴掘って埋まりたいから!
「でも気にすることないんじゃないかな~勇者君の人生は本人のものなんだし」
「……だからこそ、でしょ」
忘れているかもしれないが、私達の方が年上なのだ。例え力があろうとも、立場があろうとも、人生の先輩である以上、後輩の人生を勝手に弄っちゃいけないのよ。
「未だに旦那のことを引きずってる中古女じゃなくて、未経験の優しい娘と所帯持った方が彼の為なのよ。大体、あの勇者様は童貞拗らせているだけなんだから、ちょっと視野を広げればすぐに別の女に転がるわよ。近くにジャンヌだっているんだし」
そう、それが分かるから、私はさっさと手を引いた方がいい。
それが、正しい……
「……じゃあ、ミーシャはいいわけ? 自分は幸せにならなくて」
……え?
「呆けた顔しちゃってまあ……気付いてなかったの?」
「なに、が……?」
いや、本当に分からない。リナの指摘はいまいち理解できない。
だって、私には死んだ旦那がいるし、今更……あれ?
「え、だって、私、『身体』は売っても、『心』までは売ってない、し……」
「売ってなくても、もう傾いちゃっているんでしょ~……そもそも」
私の鼻先に、リナの指が伸びてきた。避けることができずに、ただ指を突き付けられていた。
「なんとも思ってない相手のことを……なんでミーシャが、一介の娼婦が考えてあげているのよ」
「いや、だから……」
「だから~」
呆れたような口調で遮り、リナの指が私の鼻先を突いてくる。
「適当に相手して終わり、先輩風吹かせるなら綺麗事吐いて娼館出禁にすればいい。なのに態々手間暇掛けて相手を振るとか、明らかに娼婦の範疇超えている、っての」
その先は、できれば聞きたくなかった。
「本当は大なり小なり持ってかれてんでしょ……『心』も」
……胸の痛みを、生みたくなかったから。
「……なんで知ってるの?」
「秘密~」
リナはベッドから起き上がり、見慣れない小太刀の手入れをしていた。耳掻きとかでよくある綿の玉っぽい何かを刃に当てているけど、あれってなんだろう……
「というか、本当に警戒していたの?」
「してたって~、というかお盛んだよね~外でヤるなんて」
「……千里眼的な何か?」
なんとなく、遠くの景色が見える異能なのかと思っていたが、リナは首を振って否定した。
「見えてたらミーシャ達の所に、ギリギリに駆けつけないって」
「ふぅん……じゃあ、どんな異能なの?」
「だから秘密だって~」
しかし私の中で、リナの異能について大体の予想はついてきた。
「……ところでさ。あの椅子に細工しなかった?」
「二人掛かりで盛られたら、流石に壊れるって」
「へぇ……椅子が壊れた音も聞いていたんだ」
一瞬、リナの動きが止まった。その後に『あ~』と変な声を出してから、近くに転がしていた鞘を拾い、小太刀を戻していた。
「……いつ気付いたの?」
「いや、ここに戻ってくるまで誰にも会わなかったし、今仕事中で誰も外見てないから……目じゃなければ耳かな、って」
「まあ、そゆこと……」
リナは小太刀を片手に持ち、弄びながら答えてきた。
「異常聴覚、って言うのかな? ワタシの異能のベースとなっているのは……まあ、それはいいや。とにかく、それで得た異能の一つが発達した聴覚ってわけ。だから敷地内なら、ちょっと集中すればギリギリ聞き取れるのよ」
「へぇ……ちょっと待って。ということは?」
「……ごめん、会話聞いてた」
うわ恥っずー誰か穴掘って埋まりたいから!
「でも気にすることないんじゃないかな~勇者君の人生は本人のものなんだし」
「……だからこそ、でしょ」
忘れているかもしれないが、私達の方が年上なのだ。例え力があろうとも、立場があろうとも、人生の先輩である以上、後輩の人生を勝手に弄っちゃいけないのよ。
「未だに旦那のことを引きずってる中古女じゃなくて、未経験の優しい娘と所帯持った方が彼の為なのよ。大体、あの勇者様は童貞拗らせているだけなんだから、ちょっと視野を広げればすぐに別の女に転がるわよ。近くにジャンヌだっているんだし」
そう、それが分かるから、私はさっさと手を引いた方がいい。
それが、正しい……
「……じゃあ、ミーシャはいいわけ? 自分は幸せにならなくて」
……え?
「呆けた顔しちゃってまあ……気付いてなかったの?」
「なに、が……?」
いや、本当に分からない。リナの指摘はいまいち理解できない。
だって、私には死んだ旦那がいるし、今更……あれ?
「え、だって、私、『身体』は売っても、『心』までは売ってない、し……」
「売ってなくても、もう傾いちゃっているんでしょ~……そもそも」
私の鼻先に、リナの指が伸びてきた。避けることができずに、ただ指を突き付けられていた。
「なんとも思ってない相手のことを……なんでミーシャが、一介の娼婦が考えてあげているのよ」
「いや、だから……」
「だから~」
呆れたような口調で遮り、リナの指が私の鼻先を突いてくる。
「適当に相手して終わり、先輩風吹かせるなら綺麗事吐いて娼館出禁にすればいい。なのに態々手間暇掛けて相手を振るとか、明らかに娼婦の範疇超えている、っての」
その先は、できれば聞きたくなかった。
「本当は大なり小なり持ってかれてんでしょ……『心』も」
……胸の痛みを、生みたくなかったから。
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