【R18】勇者の童貞レベルが高すぎる!

桐生彩音

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シリーズ004

006 全部聞こえてたのか……

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「お帰り~勇者君振ったんだって?」
「……なんで知ってるの?」
「秘密~」
 リナはベッドから起き上がり、見慣れない小太刀の手入れをしていた。耳掻みみかきとかでよくある綿の玉っぽい何かを刃に当てているけど、あれってなんだろう……
「というか、本当に警戒していたの?」
「してたって~、というかお盛んだよね~外でヤるなんて」
「……千里眼的な何か?」
 なんとなく、遠くの景色が見える異能なのかと思っていたが、リナは首を振って否定した。
「見えてたらミーシャ達の所に、ギリギリに駆けつけないって」
「ふぅん……じゃあ、どんな異能なの?」
「だから秘密だって~」
 しかし私の中で、リナの異能について大体の予想はついてきた。
「……ところでさ。あの椅子に細工しなかった?」
「二人掛かりで盛られたら、流石に壊れるって」
「へぇ……椅子が壊れた音・・・・も聞いていたんだ」
 一瞬、リナの動きが止まった。その後に『あ~』と変な声を出してから、近くに転がしていた鞘を拾い、小太刀を戻していた。
「……いつ気付いたの?」
「いや、ここに戻ってくるまで誰にも会わなかったし、今仕事中で誰も外見てないから……目じゃなければ耳かな、って」
「まあ、そゆこと……」
 リナは小太刀を片手に持ち、もてあそびながら答えてきた。
「異常聴覚、って言うのかな? ワタシの異能のベースとなっているのは……まあ、それはいいや。とにかく、それで得た異能ちからの一つが発達した聴覚ってわけ。だから敷地内なら、ちょっと集中すればギリギリ聞き取れるのよ」
「へぇ……ちょっと待って。ということは?」
「……ごめん、会話聞いてた」
 うわ恥っずー誰か穴掘って埋まりたいから!
「でも気にすることないんじゃないかな~勇者君の人生は本人のものなんだし」
「……だからこそ、でしょ」
 忘れているかもしれないが、私の方が年上なのだ。例え力があろうとも、立場があろうとも、人生の先輩である以上、後輩の人生を勝手にいじっちゃいけないのよ。
「未だに旦那のことを引きずってる中古女じゃなくて、未経験の優しいと所帯持った方が彼の為なのよ。大体、あの勇者様は童貞こじらせているだけなんだから、ちょっと視野を広げればすぐに別の女に転がるわよ。近くにジャンヌだっているんだし」
 そう、それが分かるから、私はさっさと手を引いた方がいい。
 それが、正しい……



「……じゃあ、ミーシャはいいわけ? 自分は幸せにならなくて」



 ……え?
ほうけた顔しちゃってまあ……気付いてなかったの?」
「なに、が……?」
 いや、本当に分からない。リナの指摘はいまいち理解できない。
 だって、私には死んだ旦那がいるし、今更……あれ?
「え、だって、私、『身体』は売っても、『心』までは売ってない、し……」
「売ってなくても、もう傾いちゃっているんでしょ~……そもそも」
 私の鼻先に、リナの指が伸びてきた。けることができずに、ただ指を突き付けられていた。
「なんとも思ってない相手のことを……なんでミーシャが、一介の娼婦・・・・・が考えてあげているのよ」
「いや、だから……」
「だから~」
 あきれたような口調でさえぎり、リナの指が私の鼻先を突いてくる。
「適当に相手して終わり、先輩風吹かせるなら綺麗事きれいごといて娼館出禁にすればいい。なのに態々わざわざ手間暇掛けて相手を振るとか、明らかに娼婦の範疇はんちゅう超えている、っての」
 その先は、できれば聞きたくなかった。



「本当は大なり小なり持ってかれてんでしょ……『心』も」



 ……胸の痛みを、生みたくなかったから。
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