47 / 54
シリーズ004
010 裏切り者めっ!?
しおりを挟む
「まさかフィンさん!?」
「大丈夫、ワタシに嘘は通じないから。騙された可能性は否定できないけどね」
「……嘘をついても、騙されてもいない。そもそも俺は部屋の場所を聞いていないし、ここに来たのも戦闘音でどの部屋か当たりをつけたからだ」
私が短槍を握る頃には、リナもフィンさんも戦闘準備を終えていた。そして言葉もなく、三人並んで部屋の外へと飛び出した。
「部屋の場所を知っていたのは!?」
「館長を除けば中にいたワタシとミーシャだけ!」
「外部から魔法か何かで索敵した可能性は!?」
「少しでも音が出る類ならワタシが気付くっ!?」
ということは、残るはただ一人。
館長の裏切り者めっ!?
「……えっ?」
言葉もなかった。
私達が娼館の受付に着いた頃には、そこには悪意しかなかった。おそらく火炎系の魔法を使ったのだろう、いつも客と寝ているのを叱りつける声を聞くことは、もうない。胴体は焼け崩れ、四肢が辺りに転がっている。
「なんで、一体……どうして?」
「……拷問の後に始末したんだろう」
フィンさんが館長の腕を拾い上げると、焼け崩れていない皮膚に無数の傷跡が見える。
「傷跡がかなりある。最後に漏らしたかは知らねぇが、長い時間耐えていたんだろうな……」
「そんな……」
館長のことを、少しでも疑ったことを後悔している。あれだけ世話になっていたのに、ここまで耐えてくれたのに、それなのに……
「落ち込んでいるところ悪いけどさ……未だ終わってない」
リナの言葉に、私はゆっくりと彼女の方を向いた。
「…………あ、」
そう、異能を、異常聴覚を持つリナの方を。
「音を消す魔法や魔導具はある。でも、口を塞げば拷問程度で使う必要はない。ましてや止めにまで使う必要はないでしょう。それをここで使う理由は?」
「声を、音を聞かれて気付かれない為……リナへの対策?」
相手は、リナのことを知っている。その対処法も。
「おまけに今気付いたけど、勇者君達の方から何も聞こえない。ねえ、ワタシのこと知ってた?」
「そりゃ有名人だからな。国も警戒してたんだよ、『鳴閃』」
「だろうと思った……」
国や私達の関係者で、魔導に通じた人間はただ一人。だから、『鳴閃』とかリナが呼ばれていたけど気にする余裕はなかった。
なにせ今一番危ないのは……ディル君達だ。
「……ああ、来たのか」
「まさか身内が裏切っているとは思わなかったけどな……カリスさん」
悠々と杖にもたれながら、魔導士のカリス・ルヴェットは私達の方を向いている。
ディル君は倒れていた。いつもリナがいる小屋が崩れていて、その下にいたのか下敷きになっている。
ジャンヌもやられていたのか、足下に寝転がっていたので、隙だらけになるのも気にせず駆け寄った。
「ジャンヌっ! しっかりしてっ!?」
「ぅ……」
傷は酷いけど、死ぬ程じゃない。しかし代わりに防具が砕けている。おそらく魔法の一撃を受けたせいだろう。
「で、説明くらいはあるんだろうな。カリスさんよ」
「まあ、端的に言うと……元々向こう側だった、ってだけだね」
杖を軽く振り回すとカリスさん、いやカリスの野郎はフィンさんに、何でもないことの様に返してきた。
「ここでの最後の仕事が在庫の確認と回収で、問題がなければ荒事無しで退散する予定だったけど……国にあった報告書の処分数と、記録にある在庫の数が合わない。だからこんな騒ぎになった」
と、説明すれば分かるか。そう暗に返してきているのが分かる。
実際に分かる。そのなくなったものが、魔血錠剤であり、国の処分から逃れたものがまだ残っているのだと。
「もしかしたら在庫が遺品の中に隠れているのでは、とも思ったけどそんなことはなかった。短槍の機構に隠されている様子もなかったし、だから他の可能性を考えたんだよ……誰かが飲んでるんじゃないか、って」
その一言で、一瞬、ある可能性が浮かんだ。
魔法でしかできないことと、異能でしかできないことの区別は、私にはついていない。でも、もし同じことができるとしたら……目的は口止めだ。
「さて、魔血錠剤のことを知っている君達と……それを飲んで一命を取り留めたディル君には死んでもらおうか」
「大丈夫、ワタシに嘘は通じないから。騙された可能性は否定できないけどね」
「……嘘をついても、騙されてもいない。そもそも俺は部屋の場所を聞いていないし、ここに来たのも戦闘音でどの部屋か当たりをつけたからだ」
私が短槍を握る頃には、リナもフィンさんも戦闘準備を終えていた。そして言葉もなく、三人並んで部屋の外へと飛び出した。
「部屋の場所を知っていたのは!?」
「館長を除けば中にいたワタシとミーシャだけ!」
「外部から魔法か何かで索敵した可能性は!?」
「少しでも音が出る類ならワタシが気付くっ!?」
ということは、残るはただ一人。
館長の裏切り者めっ!?
「……えっ?」
言葉もなかった。
私達が娼館の受付に着いた頃には、そこには悪意しかなかった。おそらく火炎系の魔法を使ったのだろう、いつも客と寝ているのを叱りつける声を聞くことは、もうない。胴体は焼け崩れ、四肢が辺りに転がっている。
「なんで、一体……どうして?」
「……拷問の後に始末したんだろう」
フィンさんが館長の腕を拾い上げると、焼け崩れていない皮膚に無数の傷跡が見える。
「傷跡がかなりある。最後に漏らしたかは知らねぇが、長い時間耐えていたんだろうな……」
「そんな……」
館長のことを、少しでも疑ったことを後悔している。あれだけ世話になっていたのに、ここまで耐えてくれたのに、それなのに……
「落ち込んでいるところ悪いけどさ……未だ終わってない」
リナの言葉に、私はゆっくりと彼女の方を向いた。
「…………あ、」
そう、異能を、異常聴覚を持つリナの方を。
「音を消す魔法や魔導具はある。でも、口を塞げば拷問程度で使う必要はない。ましてや止めにまで使う必要はないでしょう。それをここで使う理由は?」
「声を、音を聞かれて気付かれない為……リナへの対策?」
相手は、リナのことを知っている。その対処法も。
「おまけに今気付いたけど、勇者君達の方から何も聞こえない。ねえ、ワタシのこと知ってた?」
「そりゃ有名人だからな。国も警戒してたんだよ、『鳴閃』」
「だろうと思った……」
国や私達の関係者で、魔導に通じた人間はただ一人。だから、『鳴閃』とかリナが呼ばれていたけど気にする余裕はなかった。
なにせ今一番危ないのは……ディル君達だ。
「……ああ、来たのか」
「まさか身内が裏切っているとは思わなかったけどな……カリスさん」
悠々と杖にもたれながら、魔導士のカリス・ルヴェットは私達の方を向いている。
ディル君は倒れていた。いつもリナがいる小屋が崩れていて、その下にいたのか下敷きになっている。
ジャンヌもやられていたのか、足下に寝転がっていたので、隙だらけになるのも気にせず駆け寄った。
「ジャンヌっ! しっかりしてっ!?」
「ぅ……」
傷は酷いけど、死ぬ程じゃない。しかし代わりに防具が砕けている。おそらく魔法の一撃を受けたせいだろう。
「で、説明くらいはあるんだろうな。カリスさんよ」
「まあ、端的に言うと……元々向こう側だった、ってだけだね」
杖を軽く振り回すとカリスさん、いやカリスの野郎はフィンさんに、何でもないことの様に返してきた。
「ここでの最後の仕事が在庫の確認と回収で、問題がなければ荒事無しで退散する予定だったけど……国にあった報告書の処分数と、記録にある在庫の数が合わない。だからこんな騒ぎになった」
と、説明すれば分かるか。そう暗に返してきているのが分かる。
実際に分かる。そのなくなったものが、魔血錠剤であり、国の処分から逃れたものがまだ残っているのだと。
「もしかしたら在庫が遺品の中に隠れているのでは、とも思ったけどそんなことはなかった。短槍の機構に隠されている様子もなかったし、だから他の可能性を考えたんだよ……誰かが飲んでるんじゃないか、って」
その一言で、一瞬、ある可能性が浮かんだ。
魔法でしかできないことと、異能でしかできないことの区別は、私にはついていない。でも、もし同じことができるとしたら……目的は口止めだ。
「さて、魔血錠剤のことを知っている君達と……それを飲んで一命を取り留めたディル君には死んでもらおうか」
0
あなたにおすすめの小説
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる