50 / 54
シリーズ004
013 銘『アイリスローズ』(本編には出ないからここで紹介)
しおりを挟む
「驚いたな……ローズシリーズの一つかよ」
「知っているんですか?」
「まあ、めったに見れない代物だけどな」
砕けた武器をそのままに、私はリナの武器を見つめていた。
リナも刀身から血を拭い、鞘に納めてからこちらに向かってくる。
「どこでそんなもん、手に入れたんだよ」
「ああ、これ……師匠の形見~」
妙に納得したのか、フィンさんはそれ以上は語らなかった。だからというわけではないが、興味を持った私が質問を投げかけてもいいだろう。いや、聞くだけならタダだ!
「ローズシリーズって、何?」
「ああ、そっからか~」
「まあ、普通知らないもんね~」
そして説明。
ローズシリーズとは、薔薇鉱石という特殊な鉱石で生み出された武器で、魔法も魔族も、モノによっては分厚い鉄板すら斬り裂くこともできるとんでもない代物らしい。リナが持っているのは薔薇鉱石の加工技術を有する武器製造の名門クロックス家の人間が生み出した後期シリーズだが、初代当主にして始祖ローザ・クロックスが生み出した(ある意味)本物のローズシリーズ一本でも、小さな国そのものが買えてしまう程の価値があるらしい。
「ちなみにこの太刀、後数本有ればこの国買えるかも?」
「うそっ!?」
「いや、うまく売ればそれ一本でも買えるかもしれないぞ。後期シリーズでも作り手次第じゃ……」
なんて俗物的になっているが、恐ろしいことが二つある。
一つ、武器一本で傾く程、この国の情勢が危ういということ。
そしてもう一つは……この太刀を狙ってくる人間がいてもおかしくないということだ。
「というわけで、この太刀のこと秘密にしといてね。ワタシがこの国出るまででいいから」
「言わない言わない。これ以上の面倒事はごめんだし」
「以下同文」
しかし、面倒事は他にもある。
「ちょっと娼館にある魔法薬を取ってくるわね」
「よろしく~……おっちゃん、とりあえず勇者君助けよっか」
「おっちゃんはやめてくれって。そこでくたばったカリスさんよりかは若いんだぜ、俺」
一先ずはディル君を助けることに決めたようだ。二人掛かりで小屋の瓦礫を拾い除けていくのを背に、私はジャンヌをそのままにして娼館の中に入った。
意外なことに、娼館には魔法薬をはじめとした治療用の道具が一通り揃っている。働いてみて知ったことだが、身体を張った仕事である以上、娼婦も傷付きやすい立場であることに変わりなかった。
それに、性行為を行うということは、性病というリスクも背負わなければならなくなる。受付で事前に確認するとしても、限界はある。娼婦に施している避妊処理にも多少の効果はあるが、気休めに過ぎない。
だから傷薬的な物もあれば、性病にも効く解毒薬的な物もある。薬自体は高いが、経費でまとめ買いしているので、魔法薬の店で買い求めるよりも安く済む。
「……すみません、館長。きちんと代金は払いますので、使わせて下さい」
死んだ館長に一度頭を下げてから、受付の裏に用意してある魔法薬を幾つか抱えた。治療用と回復用を持って行って、足りなければまた取りに来ればいい。
もう敵はいないと考えて大丈夫、後は治療をして、皆の無事を喜べばいい。
それだけでいい筈なのに、娼館を出た私の目には、また戦闘の光景が飛び込んできた。
「おい、落ち着けって!」
未だに気を失っているジャンヌを横抱きに抱えながら、フィンさんが叫んでいる。
しかし、剣を持っている彼には聞こえていなかった。
「がぁああ…………ぼっ!?」
恐らく、私のいない間に始まっていたのだろう。
鞘に納めたままの太刀を構えるリナに……ディル君が挑みかかったのは。
「知っているんですか?」
「まあ、めったに見れない代物だけどな」
砕けた武器をそのままに、私はリナの武器を見つめていた。
リナも刀身から血を拭い、鞘に納めてからこちらに向かってくる。
「どこでそんなもん、手に入れたんだよ」
「ああ、これ……師匠の形見~」
妙に納得したのか、フィンさんはそれ以上は語らなかった。だからというわけではないが、興味を持った私が質問を投げかけてもいいだろう。いや、聞くだけならタダだ!
「ローズシリーズって、何?」
「ああ、そっからか~」
「まあ、普通知らないもんね~」
そして説明。
ローズシリーズとは、薔薇鉱石という特殊な鉱石で生み出された武器で、魔法も魔族も、モノによっては分厚い鉄板すら斬り裂くこともできるとんでもない代物らしい。リナが持っているのは薔薇鉱石の加工技術を有する武器製造の名門クロックス家の人間が生み出した後期シリーズだが、初代当主にして始祖ローザ・クロックスが生み出した(ある意味)本物のローズシリーズ一本でも、小さな国そのものが買えてしまう程の価値があるらしい。
「ちなみにこの太刀、後数本有ればこの国買えるかも?」
「うそっ!?」
「いや、うまく売ればそれ一本でも買えるかもしれないぞ。後期シリーズでも作り手次第じゃ……」
なんて俗物的になっているが、恐ろしいことが二つある。
一つ、武器一本で傾く程、この国の情勢が危ういということ。
そしてもう一つは……この太刀を狙ってくる人間がいてもおかしくないということだ。
「というわけで、この太刀のこと秘密にしといてね。ワタシがこの国出るまででいいから」
「言わない言わない。これ以上の面倒事はごめんだし」
「以下同文」
しかし、面倒事は他にもある。
「ちょっと娼館にある魔法薬を取ってくるわね」
「よろしく~……おっちゃん、とりあえず勇者君助けよっか」
「おっちゃんはやめてくれって。そこでくたばったカリスさんよりかは若いんだぜ、俺」
一先ずはディル君を助けることに決めたようだ。二人掛かりで小屋の瓦礫を拾い除けていくのを背に、私はジャンヌをそのままにして娼館の中に入った。
意外なことに、娼館には魔法薬をはじめとした治療用の道具が一通り揃っている。働いてみて知ったことだが、身体を張った仕事である以上、娼婦も傷付きやすい立場であることに変わりなかった。
それに、性行為を行うということは、性病というリスクも背負わなければならなくなる。受付で事前に確認するとしても、限界はある。娼婦に施している避妊処理にも多少の効果はあるが、気休めに過ぎない。
だから傷薬的な物もあれば、性病にも効く解毒薬的な物もある。薬自体は高いが、経費でまとめ買いしているので、魔法薬の店で買い求めるよりも安く済む。
「……すみません、館長。きちんと代金は払いますので、使わせて下さい」
死んだ館長に一度頭を下げてから、受付の裏に用意してある魔法薬を幾つか抱えた。治療用と回復用を持って行って、足りなければまた取りに来ればいい。
もう敵はいないと考えて大丈夫、後は治療をして、皆の無事を喜べばいい。
それだけでいい筈なのに、娼館を出た私の目には、また戦闘の光景が飛び込んできた。
「おい、落ち着けって!」
未だに気を失っているジャンヌを横抱きに抱えながら、フィンさんが叫んでいる。
しかし、剣を持っている彼には聞こえていなかった。
「がぁああ…………ぼっ!?」
恐らく、私のいない間に始まっていたのだろう。
鞘に納めたままの太刀を構えるリナに……ディル君が挑みかかったのは。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
20
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる