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第三十七章 母なる大地

ホットスプリング・ステーションの撤去

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 十二月初め、ついにアメリカ議会はナーキッド協定からの離脱を決議し、これに大統領も同意しました。
 そして十日以内の撤退を求められたのです。
 しかも空気浄化システムは接収するとのことです……

 禿鷹ですね……しかし、幸い不足分の32基はまだ引き渡していません、どうするのでしょうね。

 ジョンさんは憤慨しましたが、ディヴィドソン財閥は、火星の首都であるグラブダブドリッブに本拠を移しています。
 すでに惑星ヴィーンゴールヴの、トランシルヴァニア・シティにも支店を置いています、手早いですね……

 ロッシチルド財閥も同様で、グラブダブドリッブに本拠を移す準備をしています。
 鈴木商会は、まだ本拠を動かしていませんが、支店はグラブダブドリッブとトランシルヴァニア・シティに置いています。

 最早経済は火星、つまり惑星マルスに移動を始めているのです。

 ニューヨークハウスはすでに閉鎖しており、アメリカの拠点はホットスプリング・コロニーだけです。
 あれだけ移住希望者で込んでいたステーションも、今はまばらです。
 ナーキッドは十日以内の撤退に同意し、ホットスプリング・ステーションも撤去する事になりました。

 私はホットスプリング・コロニーに集合していたメイドさんたち、つまり清女さんに向かって、
「このままここに残るのなら、退職金をお払いします」

「もしついてきて下さるなら、カナダのデヴォン・ステーションに作られるだろうハウスに、勤務していただきます」
「極寒の地ですが、私としてはついてきていただきたいのですが」

「ミコ様、私たちは前にも申し上げたように、帰る場所などありません、どこでもお供いたします」

 リーダー格の方の言葉に、感激したのは確かです。

「皆さん……ありがとう……」
 言葉に詰まってしまいましたが、
「皆さん、今のうちなら、ホットスプリング・ステーションも動いていますので、火星への移住を認めますよ」
「皆さんにも、火星でのアメリカ地区に、住居を割り当てます」
「親兄弟で親しい方など居られたら、同様に配慮しますよ」

 すると一人の方が、
「出来ましたらホットスプリングにある、女子修道院とその中の孤児院を救っていただきたいのですが」

「それは構いませんが、先方が望まれればですよ、でも時間がありませんね……」
「今から直接私が伺いましょう、アポイントメントを取ってください」

 その後、私と清女さんはハンヴィーM1152に乗り込み、久しぶりにホットスプリングの町に出かけました。
 ウリカ隊長が運転してくれます。

「ウリカ隊長、この辺りの治安はどうですか?」
「かなり悪いですね、この辺りの人々は、大部分が移住をしました、後に残った町に、どこからか来たチンピラギャングがのさばっています」

「アメリカも終わりかもしれませんね……」
「軍人もかなりの部分で退役して、移住しています、軍も弱体しているのです」
 治安の悪化をどうするつもりでしょうね……

 町に入ると、どこからか銃撃を受けます。
 勿論ナノマシンの防御態勢が取られているので、車にはあたりません。

 撃った者は酷い目に遭っているでしょう、自動的に反応しますからね。
 別にその方が死のうが、知った事ではありません、正当防衛ですから。

 ハンヴィーM1152は、町外れのとある教会の敷地に入ります。
 高い塀に囲まれていますので、チンピラギャングもやってこないのかもしりません。

 でも良く見れば女性のポリスが、四五人常駐しているようです。
 この方たちの努力で、ここは持っているのでしょう。

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