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第四十章 撤退

小笠原シティ群

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 最後の東京の夜をおいしくいただいた私……
 千代子さんと藤子さんの満足そうな顔と、残りの人の寝不足が歴然とした顔……

 聡子さんが、
「凄かったですね、寝られませんでした、思わず手が下の方に行きました、マルスで落ち着いたら、この身体のほてりを何とかしてくださいね!」

 ……体力続くかしら……だって皆さんの顔には同じ事がかかれていますから……

 そして東京はその日、最後を迎えました。
 残るは私たちと死者の眠る墓地、そして幾世紀もの思い出だけ……

 第一師団で残った方々は以外に多く、一個師団を編成出来るほどでした。
 そして私たちは東京湾に集結している、全帝国海軍艦艇とともに小笠原に向かったのです。

 二日後、艦隊は小笠原父島につきました、ここからは母島へは、地下に海底トンネルが造られており、父島と母島には大規模な近代的な地下都市が完成しています。

 日本が全面移住を決めた時、当初計画を拡張することにしましたが、それも突貫工事でほぼ完成しています。

 南鳥島、聟島にも中規模の地下都市が出来、そのほかの島々にも、小さい地下都市が何とか完成しています。
 母島の地下都市は大拡張、海底都市とも呼べる状態で、頭の上に地上がある程度になりました。

 はっきりいって拡張し放題ですが……父島が100万、母島が150万、聟島が30万、南鳥島が30万、後の小さい町であわせて、合計で350万居住可能です…現在この小笠原シティ群は、日本人が300万人ほど住んでいます。

 見てくれは小さな町ですが、地下はグラブダブドリッブなみの超近代都市です。
 聟島の地上部分ではヤギなどを飼って、ミルクをつっています、もちろんヤギのチーズもね。

 エネルギーは地下深くのマグマからの発電ですし、食糧は食糧生産工場が幾つも地下に造られています、光は地上の集光装置から取り入れていますが、足りない分は人工太陽光で補っています。

 この小笠原ステーションからは、硫黄島にも地下連絡シャトルが走っています、ここは温泉と飛行場があり一応テラの世界と繋がっています、特に温泉は住民のリゾートとなります。

 北硫黄島には開発計画がありますが、将来計画です。
 伊豆諸島は日本本土と交通が途絶えるために、住民はマルスが小笠原に移り住みました。
 将来的には、小笠原から連絡シャトルを走らせ再開発の予定です。

 小笠原ステーションは、当面日本の小笠原村の範囲ですから、沖ノ鳥島までその範囲にあり、ここにも地下に連絡シャトルが走っています、ここには養漁場があります。

 小笠原ステーションは、自給自足が可能なのです。
 しかもここからはマルスのフォボスステーション、月のルナ・ナイト・シティ、カナダのデヴォン・ステーション、マン島のステーション、そしてレイキャネース・ステーション、さらには日本に残した端島と第二海保に繋がっています。

 この小笠原ステーションは、ナーキッドが最後の最後でも維持する場所です。
 テラの誰かが何かをいっても、いった者を潰滅させても維持する場所です。
 しのごのいったら鉄槌をくらわせてあげます。

 近衛師団はここで解隊しました、そして除隊したいものは、ここに民間人としているなり、マルスへ行くなり好きに選択してもらいました。

 そして残りの兵士で部隊を再編成、約六個連隊が編成出来ましたので三個歩兵旅団を編成、小笠原警備の三交代のローテーションが出来そうです。
 一応兵士たちは小笠原の各地下都市に分駐していただきました。

 海軍は母島につくられた軍港を根拠地とします。各艦はナーキッドのロボット技師が大改装を始めています。
 除隊希望者は近衛師団と同じ扱いとさせていただきますが、日本帝国より譲り受けた船がありますので、その船の船員さんとしても採用します。

 笑えるのは鈴木商会が、ここに支店を構えている事です。
 しかも京都支店の支店長がいました。
 さらに上杉さんがいました、なんでもやはりテラにいたいそうです、配下の方々もそのままね……

「忍さんはどうしました?」
 上杉さんに聞きますと、後ろから忍さんが、
「ここにいます」と声をかけてきます。

「もう……小笠原にいるなら知らせてください!」
「すいません、父の面倒を見ていましたので……」

 そして尼住職様もここおられました。
「年を取ると生まれた所に住みたいものです、小笠原といえ故郷ですからね」
 上杉組の親分も似たような事を云っていました、たしかに理解できます。
 故郷テラに住みたいと願う、良き人々もいるという事です。

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